Floatin' Down to Cotton Town
「フローティン・ダウン・トゥ・コットン・タウン Floatin' Down to Cotton Town」は1919年にヘンリー・クリックマン F. Henri Klickmannが作曲し、ジャック・フロスト Jack Frostが作詞したポピュラーソング。必ずしもジャズ・スタンダードというほどでもないが、ボーカル・グループをはじめ、さまざまなスタイルで録音されている。
都会から故郷へ帰る
「田舎から都会に移った人が故郷に帰る」というテーマはしばしばジャズやカントリーで歌われる。「インディアナ Indiana」もそうだし、「アラバミー・バウンド Alabamy Bound」ではアラバマ出身の若者がやっと帰郷できる喜びが歌われている。この「ダウン・トゥ・コットン・タウン」もそう。
歌詞のなかでは主人公が「みんなに会うために立ち寄った」ことが述べられる。その理由は、「今日、僕は旅立ち、陽光降り注ぐディキシーランドに戻る」から。主人公は都会の暮らしが名残惜しいのだが、「ディキシー・ラインを越えれば、もう思い残すことはない」。主人公が、「コットン・タウンの川を漂いながら戻っていく」。すると「やっとアラバマに到着する」。そのときの光景はまさに「サトウキビ畑」が広がっており、そうした景色が主人公を「迎えてくれる」のである。
さて、歌詞にて描かれる「ディキシー・ライン」はアメリカの北部と南部を分ける「メイソン=ディクソン線」を意味している。つまり、メイソン=ディクソン線を超えたらもう南部になるというわけである。であるならば、「コットン・タウンの川」とはミシシッピ川を指していると言えるだろう。
他方で、タイトルにもなっているコットンタウンがどこを意味しているのかは微妙にわからない。もし、特定の場所を意味しているのならば、テネシー州のコットンタウンを指しているかもしれない。が、歌詞の中に明確に「アラバマ」と言われていることから、テネシー州の街ではないだろう。むしろコットン・タウンは、綿花の畑が日常的によく見える場所を指していると考えるのが妥当であるだろう。
録音
Bill Boyd and His Cowboy Ramblers (San Antonio, Texas, Feburary, 24, 1936)
Bill Boyd (Guitar, Vocal); Jesse Ashlock (Violin); Jack Hinson (Piano); Walker Kirkes (Tenor Banjo); Lefty Perkins (Electric Steel Guitar); Jim Boyd (Baa, Vocal);
ビル・ボイドのフォーキーな録音。ウェスタン・スウィングとして展開されている。
Fats Waller and His Rhythm (NYC, September 9, 1936)
Fats Waller (Piano, Vocal); Herman Autrey (Trumpet); Eugene Sedrlc (Clarinet, Alto Saxophone); Al Casey (Guitar); Charles Turner (Bass); Wilmore "Slick" Jones (Drums)
とても明るく楽しいファッツ・ウォーラーの録音。アル・ケイシーの地を這うようなギターもかっこいい!
Wingy Manone and His Orchestra (NYC, October 1, 1936)
Wingy Manone (Trumpet, Vocals); Mike Viggiano (Clarinet); Joe Marsala (Clarinet, Alto Saxophone); James Lamare (Clarinet, Tenor Saxophone); Conrad Lanoue (Piano); Jack LeMaire (Guitar); Artie Shapiro (Bass); George Wettling (Drums)
ウィンギー・マノウンの録音。元祖シカゴ・スタイル。
Bob Wilber (West Palm Beach, FL March 27–28, 1995)
Bob Wilber (Soprano Saxophone); Ralph Sutton (Piano); Bucky Pizzarelli (Guitar); Bob Haggart (Bass); Butch Miles (Drums);
ボブ・ウィルバーの録音。これぞシカゴ・スタイルというべき録音。達人たちの演奏に痺れますな。
Chet Atkins (Nashville, Tennessee, Released in 1970)
Chet Atkins (Guitar); Others Unknown
チェット・アトキンスの録音。ドラムとベースがだれかわからない。ナッシュビル・ジャズというべき素晴らしい録音。