I Know that You Know
「アイ・ノウ・ザット・ユー・ノウ I Know that You Know」は1926年にアン・コールドウェル Anne Caldwellが作詞し、ヴィンセント・ユーマンズ Vincent Youmansが作曲したポピュラーソング。ジャズの大スタンダード。
ブロードウェイ・ミュージカル『オー、プリーズ! Oh Please』のために書かれたこの曲は、なんといっても「二人でお茶を Tea for Two」の次の年に書かれ、大ヒットとなった。
単純な韻だけど区切りの始まりがおもしろい曲
この曲は「僕が君を選び決して離さないってことを君がわかっていることを僕は知っている」というやや複雑なthat構文の歌詞からはじまる。1番は割と同じ構文と同じ単語が続き、また韻律も単純。それがかえって歌われるメッセージを強固にしているように聞こえる。
2番は小節の区切りと文の区切りに工夫がされている。つまり、普通は小節の区切りと文の区切りが一致しているのだけれど、ここでは必ずしもそれが一致していない。そうした不一致が歌詞の中に現れる「相手と離れ離れになるからこその名残惜しさ」が強調されて聞こえる。
恋人に向けて歌った歌に聞こえるんだけど、ちょっと相手に甘える感じがする。そんなわけで誰が歌っても不自然ではない曲に聞こえる。
録音
Ukulele Ike & His Hot Combination (NYC, December 1926)
Cliff Edwards (Vocal, Ukulele); Red Nichols (Cornet); Jimmy Dorsey (Clarinet, Alto Saxophone); Jimmy Lytell (Clarinet, Alto Saxophone); Bill Haid (Piano); John Cali (Banjo); Joe Tarto (Brass Bass); Ray Bauduc OR Vic Berton (Drums);
ウクレレ・アイクことクリフ・エドワーズの録音。ヴァースから入る珍しい録音。こういったジャズこそが素敵だなあって思う。楽しい素敵な録音。
Jimmie Noone's Apex Club Orchestra (Chicago, May 16, 1928)
Jimmie Noone (Clarinet, Vocal); Joe Poston (Clarinet, Alto Saxophone); Earl Hines (Piano); Bud Scott (Banjo, Guitar); Johnny Wells (Drums)
Red Norvo and His Orchestra (Chicago, August 26, 1936)
Red Norvo (Xylophone); Stew Pletcher (Trumpet); Bill Hyland (Trumpet); Eddie Meyers (Trumpet); Frank Simeone (Alto Saxophone); Slats Long (Clarinet, Alto Saxophone); Leo Moran (Trombone); Dave Barbour (Guitar); Joe Liss (Piano); Pete Peterson (Bass); Maurice Purtill (Drums);
レッド・ノーヴォの楽団の録音。
Jimmie Noone And His Orchestra (NYC, December 1, 1937)
Charlie Shavers (Trumpet); Jimmie Noone (Clarinet); Pete Brown (Alto Saxophone); Frank Smith (Piano); Teddy Bunn (Guitar); Wellman Braud (Bass); O'Neil Spencer(Drums)
1番好きな録音の1つ。ヌーンのカウンターメロディが特に好き。それぞれのソロがいきいきしていて最高のシカゴ・スタイルを聴くことができる。
Kansas City Five (NYC, March 18, 1938)
Buck Clayton (Trumpet); Eddie Durham (Trombone, Electric Guitar); Freddie Green (Guitar); Walter Page (Bass); Jo Jones (Drums)
カンザス・シティ・ファイヴの録音。バック・クレイトンのトランペットが冴え渡っている。それとドラムがとんでもなくかっこいい!さすがジョー・ジョーンズといった演奏。
Django Reinhardt & Rex Stewart (Paris, April 5, 1939)
Rex Stewart (Clarinet); Barney Bigard (Clarinet, Drums); Django Reinhardt (Guitar); Billy Taylor (Bass)
ジャンゴ・ラインハルトはソロもいいんだけど、私としてはやはりスウィングしているバッキングが好み。この録音ではそれを多く聴くことができてとても気に入っている。
Benny Goodman Quartet (NYC, December 29, 1938)
Benny Goodman (Clarinet); Teddy Wilson (Piano); John Kirby (Bass); Lionel Hampton (Drums)
ベニー・グッドマンはカルテットで素晴らしい演奏を残している。ライオネル・ハンプトンのドラムが冴え渡っていて、このタイム感はずーっと聞ける。
Joe Marsala And His Orchestra (NYC, March 21, 1941)
Marty Marsala (Trumpet); John Smith (Tenor Saxophone);
Ben Glassman (Alto Saxophone); Joe Marsala (Clarinet); Adele Girard (Harp); Dave Bowman (Piano); Carmen Mastren (Guitar); Jack Kelleher (Double Bass); Shelly Manne (Drums);
ジョー・マルサラの録音。典型的なシカゴ・ジャズを踏襲した40年代スウィング。特筆すべきはハープの演奏。
Teddy Wilson (NYC, April 11, 1941)
Teddy Wilson (Piano); Al Hall (Bass); JC Heard (Drums)
1941年のテディ・ウィルソン。この曲はピアノにとても合う。何故かとか理由はわからないんだけど、私が好きになる録音にはたいていピアノが入っている。この演奏もだいぶ都会的で美しいピアノを楽しめる。
Sidney Bechet and His New Orleans Feetwarmers (NYC, April 28, 1941)
Sidney Bechet (Soprano Saxophone); Gus Aiken (Trumpet); Lem Johnson (Tenor Saxophone); Sandy Williams (Trombone); Cliff Jackson (Piano); Wilson E. Myers (Bass); Arthur Herbert (Drums)
シドニー・ベシェの録音でもかなり好きな録音の1つ。ドラムがとんでもなく素晴らしい。イコライザーでドラムが聴きやすいように調節するとなおよい。
Nat King Cole Trio (LA, October 4, 1943)
1943年のラジオのトランスクリプション。アメリカ軍のラジオサービスAFRSの番組Jubileeのための演奏。ややシンプルで飽きがこない。また1943年に2回録音をされているんだけど、どちらも素晴らしい。
Art Tatum Trio (LA, 1944)
Art Tatum (Piano); Tiny Grimes (Guitar); Slam Stewart (Bass)
アート・テイタムもいくつか録音を残しているんだけど、わたしとしてはこれが1番好きかもしれない。ナット・コールもおそらくこのアレンジを参考にしただろうし、ジョン・ピザレリなんて露骨に引用している。流れるようなピアノが本当に素敵。
Teddy Wilson (NYC, March 1944)
1944年のテディ・ウィルソン。盤によっては低音が削れているように聴こえる。こちらの方がドライブ感がある。ビバップは世代闘争だったわけだけども、そういったものを凌駕するような凄みがある。
Rod Cless Quartet (NYC, September 1, 1944)
Rod Cless (Clarinet); Sterling Bose (Trumpet); James P Johnson (Piano); Pops Foster (Bass)
ロッッド・クレスのリーダー録音なんだけど大正義ジェイムズPの録音としても非常に素晴らしい。ピアノではやはりアート・テイタムの録音が有名なんだけど、私としてはこの録音も同じくらい好き。これでもかと言うくらいのダンサンブルはストライド。素敵!
Nat King Cole Trio (NYC, October 18, 1945)
Nat King Cole (Piano, Vocal); Oscar Moore (Guitar); Johnny Miller, (Bass)
ナットコール・トリオの録音。この時期のナット・コールとオスカー・ムーア、ジョニー・ミラーが作る和音も美しい。テンポが変わるところがとても素敵なインスト。終わりにガーシュウィンのラプソディ・イン・ブルーが挿入されるところも洒落ている。
Art Hodes (Winnetka, Illinois, November 22, 1953)
Darnell Howard (Clarinet); Art Hodes (Piano); Phil Atwood (Bass); Baby Dodds (Drums)
シカゴ・スタイルのスモールコンボと言えばアート・ホーディス。そんなに派手ではないんだけど、さすが名手といったスウィング。ソロでもバッキングでもどれもが素敵。
Nat King Cole and His Trio (Los Angeles, CA, September 24, 1956)
Nat King Cole (Piano, Vocal); John Collins (Guitar); Charlie Harris (Bass); Lee Young (Drums); Stuff Smith (Violin);
スタッフ・スミスを入れた編成のスモールコンボの録音。ナット・コールの歌声も聴ける録音で、スタッフ・スミスは相変わらずのブルージーな演奏を披露している。
Dick Meldonian Trio (NY March 13 1983)
Dick Meldonian (Soprano Sax); Marty Grosz (Guitar and Vocal); Pete Compo (Bass)
トリオでの録音。マーティ・グロスがバンドを支えており彼のリズムを楽しめる録音でもある。
John Pizzarelli (NYC, 1992)
John Pizzarelli (Vocal, Guitar); Ken Levinsky (Piano); Martin Pizzarelli (Bass);
ジョン・ピザレリ・トリオの録音。ナット・コール・トリオの録音でもしナット・コールが歌っていたらこんな感じだったかも、という妄想を具現化したような録音。たくさん好きな録音があるけど、この録音もかなり好きな録音の1つ。キメがかっこいい!
Allan Vaché & Antti Sarpila (Hamburg, Germany, October 15, 1995)
Allan Vaché (Clarinet); Antti Sarpila (Clarinet, Saxes); Mark Shane (Piano); Len Skeat (Bass); Joe Ascione (Drums)
シカゴ派ジャズの巨匠、アラン・ヴァシェの録音。シンプルな構成なんだけど、力強い演奏を楽しめる。聴きどころはやはりピアノですな。
Ruby Braff (NYC April 22–23 1998) Ruby Braff (Cornet); Chuck Wilson (Alto Saxophone); Marshall Wood (Bass); Jim Gwin (Drums); Howard Alden (Guitar); Jon Wheatley (Guitar) スイングのスモール・グループに志向した録音。ルビー・ブラフの録音。とんでもなくかっこいいコルネット。音質もリズムも最高に気持ちがいい。モダン・スウィングというべきか、ギターはわりと現代的。
Evan Christopher a la Creole (Abergavenny, Wales, 2008)
Evan Christopher (Clarinet); Dave Blenkhorn (Guitar); Dave Kelbie (Guitar); Sebastien Girardot (Double Bass)
エヴァン・クリストファーの録音。かなりスローなスウィングになっていて、エヴァン・クリストファーのニューオーリンズ・スタイルのクラリネットとマヌーシュ・ジャズの交差を楽しめる。またデイヴ・ケルビーのギターも鉄壁のリズムに痺れる。