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Best Wishes

「ベスト・ウィッシーズ Best Wishes」は1932年にデューク・エリントンDuke Ellingtonとテッド・ケーラーTed Koehlerが作詞・作曲したジャズ・ナンバー。

またこの曲についてエリントン本人は「イギリスにいたから、「ベスト・ウィッシーズ 」っていうタイトルの新曲を書いたんだ。1933年6月14日にはじめて演奏されて、それが放送されたよ」と述べている。またエリントンは「歌詞ではなくタイトル 」をイギリスに捧げ、この曲がイギリスのリスナーに「黒人の心をよりよく洞察するきっかけになるだろう」と語っている(Tucker 1989 p. 89)。

またテッド・ケーラーはサミュエル・ポクラス(Samuel Pokrass)と「マイ・ベスト・ウィッシーズ My Best Wishes」という曲を書いているが、似ているようで違う曲。

録音

エリントンの録音はインストだが、ロイ・ミルトンがこの曲をもとに歌詞をつけたバージョンを2回録音している。が、これロイ・ミルトンの録音はほとんど別の曲のブルースと言ってよいだろう。おもしろい録音だとソ連のピアニスト・作曲家のアレクサンダー・ツファスマンがエリントンのものに忠実な録音を残している。

Duke Ellington Orchestra (NYC May 17 1932)
Barney Bigard (tenor saxophone); Wellman Braud (string bass); Harry Carney (alto saxophone); Harry Carney (clarinet); Duke Ellington (piano); Sonny Greer (drums); Fred Guy (banjo); Johnny Hodges (alto saxophone); Johnny Hodges (clarinet); Freddy Jenkins (trumpet); Tricky Sam Nanton (trombone); Juan Tizol (valve trombone); Arthur Whetsel (trumpet); Cootie Williams (trumpet);
なんど聴いても美しい。たぶん私より上の世代のジャズ愛好家からは構築されすぎていると批判されるだろうが、こうしたアンサンブルとソロの美しさには毎回感動する。

Alexander Tsfasman And His Jazz-Orchestra (Soviet 1939)
Alexander Tsfasman (Piano)
1939年にソ連でジャズの演奏が録音されたという事実は驚いた。アレクサンダー・ツファスマンという人を知らなかったのだが、1920年代からソ連でジャズを演奏しはじめ、ソ連を代表するジャズ演奏家となったようだ。1940年代にはソ連における反西側キャンペーンによって、ソ連におけるジャズは「ブルジョアの音楽」とされ解散させられるなどジャズの発展が公には妨げられることとなった。「ジャズがブルジョアである」というラベル付には驚いたが、エリントンも出ていたコットンクラブは白人相手の高級クラブだし、レントパーティーを開催したのもやはり余裕のある白人が多かった。であるならば、わたしはソ連のジャズがだれに向けて演奏されていたのかを知らないが、ジャズがブルジョアの音楽と捉えられても不思議ではない。

Tucker, Mark. (1993). The Duke Ellington Reader. Oxford: Oxford University Press.
https://jazzlives.wordpress.com/2018/03/16/best-wishes-from-the-duke/


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