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Ice Cream (I Scream, You Scream, We All Scream for Ice Cream)

「アイ・スクリーム Ice Cream (I Scream, You Scream, We All Scream for Ice Cream)」は 1927年にハワード・ジョンソン Howard Johnson、ビリー・モル Billy Moll、ロバート・キング Robert A. King によって作曲されたノヴェルティ・ソング。トラッドジャズの中でも、とくにニューオーリンズに志向するジャズで演奏されるスタンダード。

イヌイットとエスキモーの大学

ツンドラ地帯に住む先住民族である「イヌイットとエスキモー」について歌った曲。最初に書いておくが、ツンドラ地帯に住む先住民族で似た言語を話す人々の全体を指す表現が存在しないため、一義的に「イヌイット」や「エスキモー」が差別名詞となるわけではない。が、ツンドラ地帯に住む先住民族のなかでは「イヌイット」と呼ばれることを好む者や、「エスキモー」と呼ばれることを好む者、それぞれの逆の立場など多様である。そのため、ここでは便宜上「イヌイットとエスキモー」という表現を用いることにする。

が、いずれにせよこの曲は「イヌイットとエスキモー」のステレオタイプを最大限に使った曲であることには違いがない。そうしたステレオタイプは、とくにヴァースに見てとられる。舞台は「イヌイットとエスキモーの大学」である「オギワワ Ogiwawa」という場所。そこでチアリーダー達が踊るのだが顔が凍るほど寒く、その光景はまるで「エスキモー・パイ」のようであると謳われる。もちろん極寒の地であるため、チアリーダーが踊れるような気候ではない。こうしたジョークはある年代までは受けたが、やはり差別的であると言える。そんなわけでヴァースから歌う録音は近年では少ない。

さて、彼らが叫ぶのが「俺たちは叫ぶ、あなたも叫ぶ、みんな叫ぶんだ、アイスクリームのために」というフレーズ。こうしたフレーズがジョークとして機能するのは、ヴァースにあった「顔が凍るほど寒い」を前提にしているからだ。つまり極寒なのにもかかわらずアイスを叫ぶほど欲している。こうした矛盾がこの曲をユーモアにしている。

録音

George Lewis (San Francisco, June 18, 1953)
George Lewis (Clarinet, Vocal); Kid Howard (Trumpet); Jim Robinson (Trombone); Alton Purnell (Piano); Lawrence Marrero (Banjo); Alcide “Slow Drag” Pavageau (Bass); Joe Watkins (Drums);
アルトン・パーネルのピアノからはじまる。テーマではキッド・ハワードがリードを取り、ジョージ・ルイスがカウンターメロディを入れている。なによりもジョー・ワトキンスのバスドラの踏みっぷりが気持ちよい。

De De & Billie Pierce (NYC, March 31, 1962)
De De Pierce (Trumpet, Vocal); Billie Pierce (Vocal, Piano)
ディ・ディ・ピアスとビリー・ピアスのデュオ。歌も二人で歌っており、そこも非常にかっこよい。

Kid Howard's New Orleans Band (New Orleans, August 29, 1962)
Kid Howard (Cornet); George “Kid Sheik” Cola (Trumpet); Paul Barnes (Clarinet); John Handy (Alto Saxophone); Andrew Morgan (Tenor Saxophone); Jim Robinson (Trombone); George Guesnon (Banjo); Papa John Joseph (Bass); Alfred Williams (Drums)
キッド・ハワードの録音。アンドリュー・モーガンがとんでもない演奏を繰り広げており、さらにそれぞれがすごく自由に吹いている感じなのに曲として統合されている。本当に素晴らしい。

Alvin Alcorn & Paul Polo Barnes (San Francisco, CA, July 19, 1969)
Alvin Alcorn (Trumpet); Paul Barnes (Clarinet, Alto Saxophone); Big Bill Bissonnette (Trombone); Sing Miller (Piano); Jim Tutunjian (Bass); Alex Bigard (Drums)
アルヴィン・アルコーンとポール・バーンズの録音。ディキシーランド・スタイルの録音で、ジム・トゥトゥンジアンのベースがとくに好き。

California Swing Cats (San Diego, California, November 4–5, 1996)
Tim Laughlin (Clarinet); Rebecca Kilgore (Guitar); Tom Roberts (Piano); Marty Eggers (Bass); Hal Smith (Drums, Vocals)
ニューオリンズ・ジャズに志向するミュージシャンが集まった録音。レベッカ・キルゴアはここではギターを弾いている。この人はギターも天才的だった。オリジナルのイントロからはじまる。トム・ロバーツのピアノがとんでもなく素晴らしい。

Finn Burichs International New Orleans Jazzband with Don Vappie & Sammy Rimington (Bakkehuset, Ikast, October 12, 1999)
Sammy Rimington (Clarinet, Alto Saxophone ); Don Vappie (Vocals, Banjo, Guitar); Finn Burch (Trombone); Svenne Topgaard (Piano); Keith Minter (Drums);
ものすごいパワフルな録音。デンマークのフィン・バーチのバンドにドン・ヴァッピーとサミー・リミングトンが加わった編成。

Preservation Hall Jazz Band (New Orleans on January 20-22, 2009)
Mark Braud (Trumpet, Vocals); Charlie Gabriel (Clarinet); Clint Maedgen (Tenor Saxophone, Backing Vocals); Freddie Lonzo (Trombone); Rickie Monie (Piano); Walter Payton (Bass); Joe Lastie (Drums);
プリサヴェーション・ホール・バンドによる2009年の録音。ニューオーリンズのジャズの楽しさが詰まったような素敵な録音。

The Blue Viper of Brooklyn (Brooklyn 2011)
Billy Nemec (Guitar, Vocal); Chris Pistorino (Bass, Vocal); David Langlois (Washboard, Vocal); Sam Hoyt (Trumpet); Tom Abbott (Clarinet)
現在でもブルックリンで活動しているトラッドジャズ・バンドのブルーヴァイパーの録音。わりと速いテンポの録音。

Dr. Jazz & Dirty Bucks Swing Band (Napoli, Released in 2018)
“Dr. Jazz” Alfredo Verga (Guitar, Banjo, Vocal); “Mr. Groove” Alessandro Panella (Bass); “Mr. Chugga” Luciano De Ioanni (Drums, Washboard); “Mr. Dirty” Ettore Patrevita (Soprano Saxophone)
ナポリで活動しているトラッドジャズ・バンド。


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