Boodle Am Shake
「ブードル・アム・シェイク Boodle Am Shake」は1926 年にジャック・パーマーJack Palmerとスペンサー・ウィリアムズSpencer Williamsが作詞作曲したブルース/ジャズ・ナンバー。
ジャズからジャグへ
スペンサー・ウィリアムズはジェイムズ・P・ジョンソンが書いた「チャールストン Charleston」と「カロライナ・シャウト Carolina Shout」の2つの曲を下敷きにこの曲を作り上げる。具体的には、チャールストンのリズムに、カロライナ・シャウトのメロディを乗せた感じ。サンプリング的発想に思える。また最初期は「ブードル・アム Boodle Am」という名前だったが、ダンスナンバーであることを強調するために、タイトルに「シェイク shake」という表現がつけられた。実際に歌詞においても「とくに意味があるわけじゃないんだ!チャールストン・スイングをしようじゃないか!」とダンスナンバーであることが際立たされている。
なんと言ってもこの曲はジャグ・ナンバーとして名高い。ことさらにジャグ史で重要なのはディキシーランド・ジャグ・ブロワー Dixieland Jug Blowersの録音だろう。ディキシーランド・ジャグ・ブロワーは、それぞれアール・マクドナルドEarl McDonaldとクリフォード・ヘイズ Clifford Hayesが率いる異なる2つのバンドからできたジャグ・バンドだった。アール・マクドナルドは、いわゆる瓶に息を吹きかけ低音を担当した「ジャグ・ブロワー」であった。どんなスタイルでも自在に拭きこなしており、珍しいところだとジミー・ロジャースとも録音をしている。
録音
Dixie Washboard Band (New York, May 1926)
Clarence Todd aka Shufflin’ Sam (Vocal); Bennie Moten (Clarinet); Ed Allen (Cornet); Jasper Taylor (Washboard); Clarence Williams (Piano)
クラレンス・ウィリアムズが率いたディキー・ウォッシュボード・バンドの録音。おそらくこれがこの曲の初録音。ピアノが入っているので元ネタの影響がわかりやすい。ちなみにテイク4とテイク7の両方があり、テイク7の方が雑音が少なくまた演奏のキレがある。
The Dixieland Jug Blowers (Chicago December 10 1926)
Lockwood Lewis (Vocal, Alto saxophone); Clifford Hayes (Fiddle); Cal Smith (Tenor Banjo); Curtis Hayes (6-string Banjo); Earl McDonald (Vocal, Jug)
伝説のジャグ・バンドディキシーランド・ジャグ・ブロワーズ。やはりかっこいい。世界中のジャグ・バンドの手本となっている録音。ジャグ・バンドはヒップホップやロックのような初期衝動がかっこよいと思っている。つまり「とりあえずやってみようぜ!」という精神。
Old Southern Jug Blowers (Kanazawa[?] or Kyoto 2004)
Shugo Maki (Tenor Banjo); Tsuyoshi Omura (Tenor Banjo); Satoshi Nishijima (Banjo Guitar); Tsuyoshi Nagata (Guitar); Ryusen Yachi (Violin); Ryohei Fuke (Alto Saxophone); Koji Kawakami (Vocal, Jug); Takahiro Amano (Jug); Mookie aka Ryoji Sato (Jug); Naoki Iwata (Clarinet); Shinichiro Kumagai (Washtub Bass); Tomohiko Hara (Washboard)
日本がほこるジャグ・バンド。むちゃくちゃかっこいい。もちろんディキシーランド・ジャグ・ブロワーズに志向しているけど、楽器が多い分よりパワフルに聴こえる。はじめて聴いたときは衝撃的だった。
Alex Belhaj's Crescent City Quintet (Toledo, Ohio May 20, 2015)
Ray Heitger (clarinet); Dave Kosmyna (cornet); Jordan Schug (string bass); Pete Siers (drums); Alex Belhaj (guitar)
ニューオーリンズでも活動したアレックス・ベルハージの録音。現在はミシガンで活動中。ディキシーランド・ジャグ・ブロワーズに敬意を払いつつシカゴ・スタイルのジャズとして再構築している。
Muddy Basin Ramblers (Taipei March-June 2023)
David Chen (Banjo, Vocals); Tim Hogan (Washboard); TC Lin (Washtub Bass); Cristina Paradise (Violin); Zach Paradise (Tenor Saxophone); Conor Prunty (Acoustic Guitar); Will Thelin (Jug, Kazoo, Vocals)
アジアが誇る強力なジャグ・バンドのマディー・ベイジン・ランブラーズの録音。とんでもなくかっこいい!2015年には横浜ジャグフェスにも来日。CDがとにかく凝っていてグラミー賞にもノミネートされるほど。どれもが美しいのでフィジカルでもつのがおすすめ。