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Back in Your Own Backyard

「バック・イン・ユア・オウン・バックヤード Back in Your Own Backyard」は、デイヴ・ドレイヤー作曲、ビル・ローズ作詞、アル・ジョルソン補佐の1928年に出版されたポピュラー・ソング。トラッドジャズ・スタンダード。もともとは3人がそれぞれ平等にクレジットされていたが、実際にはジョルソンはまったく作詞作曲に寄与していないか、したとしたも少しだけなので、この表記が正しいだろう。

いるべきところに戻ってほしい

歌詞の冒頭の「青い鳥があなたを待っているよ The bird with the feauthers of blue is waiting for you」とある。この「青い鳥」とは「幸運の象徴」のこと。歌詞はいろいろな解釈がありそう。なかなか家の外に出ない片思いの人に「外は楽しい世界だよ、でも最後は自分のいるべき場所に戻ってね」という解釈もありうる。さしあたりそのまま読めば、外を遊び回る恋人に対して、「どこでなにをしてもいいけど、最後は自分のところに戻ってきて欲しい」という具合に読める。穿った見方をすれば「青い鳥」は警察という意味もあるので、「どこに逃げてもいいけど、警察はお前のことを見ているぞ!牢屋に戻るんだ!」ともなるかもしれない(ならない)。いずれにせよ”in your own backyard”で「身近な場所」とか「いるべきところ」とかそういった意味になる。ちなみにヴァースはあまり歌われない。

録音

Billy Holiday and Her Orchestra (NY January 12 1938)
Buck Clayton (Trumpet); Lester Young (Tenor Sax); Teddy Wilson (Piano); Freddie Green (Guitar); Walter Page (Bass); Jo Jones (Drums); Billie Holiday (Vocals)
最高に美しいスイングですな。なにを書いたらいいかわらないくらいの素晴らしい録音だと思います。

Ruth Etting (NY January 3 1928)
Ruth Etting; Abel Baer (Piano)
ルース・エッティングはピアノをバックに歌っている。特筆すべきはヴァースから歌っているところ。わたしはこれくらいしかヴァースから歌っている録音を知らない。ジャズ評論家リチャード・ハドロックに「あっさり消えていった歌手」と評されているが(p. 266)、必ずしもこの録音が悪いわけではない(むしろハドロックは扱っている項目のミュージシャンをよく描くために、ほかのミュージシャンを貶すという無意味な勧善懲悪を作り出す記述を繰り返す傾向にある)。いずれにせよとてもよい録音であることには間違いない。

William Galison and Madeleine Peyroux (Brooklyn January and February 2004)
Madeleine Peyroux (Vocal, Guitar); William Gailson (Electric Guitars); James Wormworth (Drum); Conrad Korsch (Bass)
実際に発売されるまで訴訟問題があったりとちょっといわくつきの録音。『マクベス』のマクベスの独白を引用したこの記事は読み応えがあった。録音はアメリカーナっぽいスイングで仕上がりでとてもよい。

Terry Waldo & Tatiana Eva-Marie (NYC 2023)
Terry Waldo (Piano) and Tatiana Eva Marie (Vocals); Ricky Alexander (Clarinet); Mike Davis (Cornet); Jim Fryer (Trombone); Nick Russo (Banjo); Brian Nalepka (Bass); Jay Lepley (Drum)
ストライド/ラグタイムの名手テリー・ウォルドゥとタチアナ・エヴァ=マリーの共作。落ち着いた録音でとても好き。2023年に出たトラッド・ジャズのアルバムの中では一番の名盤ひとつと言ってもいいではないかと思う。

Lillian Boutté with Humphrey Lyttelton And His Band (London May 24 1988)
ジョン・ブッテの姉のリリアンとイギリスのマジ貴族のハンフリー・リトルトンのバンドと。ブリティッシュ・スイングを牽引したリトルトンのバンドのさすがといった演奏が聴ける。なによりリリアン・ブッテの歌がよきよき。

Hot Club of Cowtown (Dipping Springs, Texas July 6 2012)
Elana James (Fiddle); Whit Smith (Guitar, Vocal); Jake Erwin (Bass)
HCCTのこの録音もまた素敵!

The Trevor Richards New Orleans Trio (New Orleans Feb 23 1999)
David Boeddinghaus (Piano); Trevor Richards (Drums); Evan Christopher (Alto Saxophone)
歌ものが続いたんだけど、ニューオーリンズを代表するドラマーのトレヴァー・リチャーズの録音も素晴らしい。イギリス出身、すでにこのときは人生の半分以上をニューオーリンズで過ごしている。ベースレスのトリオ。エヴァン・クリストファーのアルト・サックスも珍しい。

参考文献

ハドロック, リチャード (1985). 『ジャズ1920年代』(訳: 諸岡敏行). 東京:草思社. 


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