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Betcha I Getcha
「ベッチャ・アイ・ゲッッチャ Betcha I Getcha」は、モート・グリーン(Mort Greene)、サリー・デューウィー(Sally Dewey)、ドン・ダーシー(Don Darcy)の3人、あるいはジョー・ヴェヌーティ(Joe Venuti)とビックス・バイダーベック(Bix Beiderbecke)の2人によるジャズ・ナンバー。美しいメロディで元気の出るような曲調で、どの録音も素敵。必ずしもスタンダードではないが、埋もれてしまったよい曲であると言えるかもしれない。
なぜ作詞作曲者が異なるのか?
「ベッチャ・アイ・ゲッチャ」の録音において、この曲の作詞作曲者をヴェヌーティ=バイダーベックとしているものと、グリーン=デューイー=ダーシーとしているものの2つある。
「ベッチャ・アイ・ゲッチャ」の録音については私はつぎの6つしか知らないんだけれど、それぞれ以下のようになっている。
まずグリーン=デューイー=ダーシーの作詞作曲としている録音として以下の4つを挙げることができる。
Kay Star (1945) CR-643
Jonathan Stout (2021) Not-on-label
Daniel Giorgetti (2013) SILCD1431
Sylvia Herald (2012) Not-on-label
つぎの2つの録音はヴェヌーティ=バイダーベックを作詞作曲としている。
Randy Sanke (2000) CD058
Vanessa Racci (2022) ZM202209
どの録音は同じメロディの同じ歌詞の曲である。唯一、サンケの録音だけインスト。なぜ作詞作曲者が異なるのかは、じつはこの曲の真の作曲者はヴェヌーティとバイダーベックと言われているかららしい。ただ後述するようにこの説も少し眉唾。「ベッチャ・アイ・ゲッチャ」についてランディ・サンケは、2000年に発売した自身のCDのライナーノーツのなかで、つぎのように述べている。
ベッチャ・アイ・ゲッチャは間違いなくジョー・ヴェヌーティの曲で、ヴェヌーティによれば、ビックスとの共同作業によって生まれた。ディック・ハイマンはリハーサルでヴェヌーティがこの曲をピアノで(Eのキーで)弾いているのを聴き、どうにかテープに収めた。のちにハイマンはこの曲を楽譜に落とし、かれの本である『ディック・ハイマン:ピアノ・プロ』(Ekay Music)に載せた。わたしの知る限りでは、このCDがこの曲のはじめての録音である。バンドが演奏に入るまえの、[この曲の前半の]ハイマンのピアノは、ヴェヌーティが弾いたものの完全なコピーである。
たしかに実際にヴェヌーティ=バイダーベックが作った曲をビックス・バイダーベック風に演奏した録音はサンケのCDがはじめてである。しかし、1945年にケイ・スターによってこの曲が録音されている。そして、その録音にはジョー・ヴェヌーティが参加している。では、なぜそのときにヴェヌーティは自身が作曲者であると主張しなかったのか?調べても理由はわからなかった。
他方で、ヴェヌーティの証言がどれほど信憑性があるのかはまた別の問題である。ビックス・バイダーベックの研究家でありコルネット奏者であるトム・プレッチャーはつぎのように言っている。
「ベッチャ・アイ・ゲッチャ」は、レオン・ビックス・バイダーベックの作品としてクレジットされるべきではなかった。ケイ・スターのヴォーカルをフィーチャーしたこのナンバーの1945年ヴァージョンを聴くと、[ケイ・スターの録音は]ラルフ・フラナガンのヒット曲「ホット・トディー Hot Toddy」を彷彿とさせる。この曲をビックスの失われた音楽的宝物だとまだ考えるのは[中略]自由だが、まったく信憑性に欠ける。もしこれらの曲についてさらなる事実関係を知っている人がいたら、ぜひ教えてほしい。
結局のところだれの曲かはわからない。ちなみに「ホット・トディー」と「ベッチャ・アイ・ゲッチャ」は似ていた。
録音
Kay Starr (Hollywood 1945)
Kay Star (Vocal); Joe Venuti (Violin); Les Paul (Guitar); Unkown (Bass); Unknown (Drums); Unknown (Orchestra)
最初のボーカル・ヴァージョンの録音。ケイ・スターのブルージーな声とカントリーから影響を受けた歌い方が特徴的の録音。これも素晴らしい。
Randy Sandke And The New York All-Stars (NYC June 24 1999)
Randy Sandke (trumpet); Dan Barrett (Trombone); Ken Peplowski (clarinet); Scott Robinson (bass sax); Howard Alden (acoustic guitar); Dick Hyman (piano); Greg Cohen (Double Bass); Joe Ascione (Drums)
ディック・ハイマンの録音からはじまり、一通り弾き終わるとバンドの演奏になる。バンドの演奏はビックス・バイダーベック風の録音でとても美しい。アレンジはランディ・サンケ自身によるもの。
Jonathan Stout and His Campus Five (Hollywood November 2020)
Jonathan Stout (guitar); Hilary Alexander (vocals); Albert Alva (tenor sax); Jim Ziegler (trumpet); Christopher Dawson (piano); Wally Hersom (bass); Josh Collazo (drums)
ジョナサン・スタウトのバンドの録音。ヒラリー・アレキサンダーの気だるい歌い方がとてもかっこいい。アレンジはこの録音のためにスタウトが考えたもので、かれのアラン・リュース・マナーのギターも鋭い。
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