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Careless Love/Loveless Love

「ケアレス・ラブ Careless Love」あるいは「ラブレス・ラブ Loveless Love」はトラディショナル・ソングで、1921年にWC ハンディ WC HandyがLoveless Loveとして版権を取得した。ブルース、ジャズ、ブルーグラス/ヒルビリーにおいてもっとも重要な楽曲の一つ。そのため本当に多くの録音がある。

いつ頃からこの曲が歌われ/演奏されるようになったかはわかっていないが、一般的には「19世紀後半のある時期に英米南部の山のメロディから発展したと考えられている」 (Muir, 2006,p. 181)。後半を省けば「この曲のメロディを後のブルースと結びつけるものはほとんどなく、そのフレージングや形は黒人フォークよりも白人フォークの影響に近いと思われる。」(ibid.)。他方で9小節目から16小節目は8小節の進行はブルースの基礎となっている(I-I7-IV-IVmin-I-I-V-I-I)。

ジャズが誕生してからはジャズやブルースとして演奏されることが多い。が、前述の通り白人フォークの影響もあり、ブルースグラスでも録音されている。そういった意味で人種・民族的な多様性が認められる楽曲であることは間違いない。

録音

Noble Sissel and his Orchestra (New York, February 24 1931)
Arthur Briggs (Trumpet); Tommy Ladnier (Trumpet); Billy Burns (Trombone); Sidney Bechet (Soprano Saxophone, Clarinet); Rudy Jackson (Alto Saxophone); Ralph Duquesne (Alto Saxophone); Ramon Usera (Clarinet, Tenor Saxophone); Lloyd Pinckney (Piano); Frank Ethridge (Banjo); Edward Coles (Bass); Jack Carter (Drums); Noble Sissle (Vocal)
ヴォードヴィリアンのノブル・シシルの楽団の録音。なんといってもシドニー・ベシェのソプラノサックスとクラリネットに聞き惚れる。

Lizzie Miles and her New Orleans Rhythm Boys (New Orleans January 1, 1952)
Lizzie Miles(vocal); Fred Neumann (Piano); Frank Federico (Electric Guitar); Joe Loyacano (Bass)
ニューオーリンズで活動したクレオール・シンガーのリジー・マイルズの録音。時代もあってか少しシカゴ・ブルースの香りもする。非常にかっこいい。

Bill Monroe and his Blue Grass Boys (Nashville, Tennessee, November 23 1962)
Bill Monroe (Vocal, Mandolin); Kenny Baker (Fiddle); Lonnie Hopper (Banjo); Bessie Lee Mauldin (Bass); Joe Stuart (Guitar)
ブルーグラスのゴッドファーザー、ビル・モンローの録音。これも非常によい。わたしとしてはモンローのマンドリンのソロに熱くなる。

Alex Belhaj's Crescent City Quartet (Teledo, Ohio October 29, 2011)
Alex Belhaj (Guitar); Jordan Schug (String bass); Ray Heitger (Clarinet); Dave Kosmyna (Cornet)
ニューオーリンズでも活躍したアレックス・ベルハジの録音。しばしばマーティ・グロスの影響を語られるけど、この録音はそれがわかりやすいかもしれない。

Combo Royale (North Carolina October 2013)
Tyler Norton (trumpet); Ralph Pastore (piano); Lindsay "Kid" Kotowich (trombone); Frank Evans (violin); Gabe DeSantis (banjo); Paul Swoger-Ruston (guitar); Steve Wellman (washboard); Sam Petite (bass); Caitlin Wellman (vocals)
ニューオーリンズ派のコンボ・ロイヤルの録音。とてもよい。

NOLA String Kings (New Orleans 2021)
Don Vappie (Banjo, Vocals); Matt Rhody (Violin); John Rankin (Guitar)
ニューオーリンズの凄腕たちによるトリオの録音。ドン・ヴァッピーのバンジョーとボーカルはもちろんなんだけど、マット・ローディのヴァイオリンが非常にかっこよい。

参考文献

Muir, Peter. (2006) Careless Love (Edward Komara Ed.) Encyclopedia of the blues.(pp. 181–182). London: Taylor and Francis. 


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