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Embraceable You

「エンブレイサブル・ユー Embraceable You」は1928年にジョージ・ガーシュウィン George Gershwin  が作曲し、アイラ・ガーシュウィン Ira Gershwin が作詞したポピュラー・ソング。1930年のブロードウェイ・ミュージカル『ガール・クレイジー Girl Crazy』にて使用されたラブ・ソング。

抱き合いたい

世の中には「抱きしめたい」と歌う曲はたくさんあるが、これはそうした中でももっともスウィートな部類なバラードかもしれない。それはまさに「抱き合う」という互酬的な振る舞いを歌っているからだ。つまり自分が相手を腕に抱くだけではなく、同時に相手の腕も自分をきつく抱きしめる。そうやって互いが互いに身を委ねる愛情表現が歌われている。そうした振る舞いによって歌の主人公の心は「クラクラになる」。

この曲は一般的には『ガール・クレイジー』の曲と思われているが、じつは1928年に遡る。もともとフローレンツ・ジーグフェルドの舞台である『イースト・イズ・ウェスト East Is West』のために書かれたのだが結局この舞台はお蔵入りになってしまう。ちなみに当時の楽譜は2004年に116,250ドルでオークションで落札された。日本円にして12555000円である…。とんでもないけどコピーを飾りたい気持ちにになる…。

録音

King Cole Trio (Los Angeles, CA, December 15, 1943)
Nat King Cole (Piano, vocal); Oscar Moore (Guitar); Johnny Miller (Bass)
ナット・キング・コール・トリオでの演奏。2つ録音があってオルタナ・テイクの方はオスカー・ムーアのギターがより目立っている。本テイクの方もスローなバラードなんだけどよりトリオのよさを感じられる。

Teddy Wilson Sextet (NYC, June 15, 1944)
Emmett Berry (Trumpet); Benny Morton (Trombone); Edmond Hall (Clarinet); Teddy Wilson (Piano); Slam Stewart (Bass); Sid Catlett (Drums)
テディベア・ウィルソンの録音。この時期のテディ・ウィルソンも素晴らしく美しい。

Quintette du Hot Club de France (London, January 31 1946);
Stéphane Grappelli (Violin); Django Reinhardt (Guitar); Jack Llewellyn (Guitar); Allan Hodgkiss (Guitar); Coleridge Goode (Bass)
QHCFの録音。アルコのベースが美しいミドルテンポのスウィング。ギターソロでさらにテンポが上がる。

Nat King Cole Trio (NYC, March 22, 1961)
Nat King Cole (piano, vocal); John Collins (guitar); Charlie Harris (bass)
ナット・キング・コール・トリオの録音。かなりスローな録音。ムードたっぷりのバージョンで私としては40年代の録音の方が好みではあるんだけど、こちらはピアノソロが美しい。

Yehudi Menuhin & Stéphane Grappelli (London, 21 May 1975)
Stéphane Grappelli (violin); Yehudi Menuhin (violin); Max Harris or Alan Clare (piano); Denny Wright or Ike Isaacs (guitar); Lennie Bush (bass); Ronnie Verrell (drums)
メニューインとグラッペリの共演。二つのバイオリンが非常に美しい…。メニューインとグラッペリの音色やフレーズの違いがはっきりしていてわかりやすい。多幸感のある美しい録音。

Stephane Grappelli (Tokyo, October 4, 1990)
Stéphane Grappelli (Violin); Marc Fosset (Guitar); Jean-Philippe Viret (Bass)
グラッペリの日本でのライブ。ライザとのメドレーになっている。ヴァース的に本曲が使われている。

The Rosenberg Trio (Paris, January 18, 1994)
Stochelo Rosenberg (Guitar); Nous'che Rosenberg (Guitar); Nonnie Rosenberg (Bass); Stéphane Grappelli (Violin);
ローゼンバーグ一家の録音。グラッペリとの共演。グラッペリはスローなテンポのテーマをヴァースのように弾いている。晩年のグラッペリの美しい演奏を楽しめる。

John Pizzarelli (NYC, January 1996)
John Pizzarelli (Vocal, Guitar); Ray Kennedy (Piano); Martin Pizzarelli (Bass)
ナット・コール・トリオと同じ編成で挑むジョン・ピザレリの録音。バラードとして演奏をしている。

Tim Kliphuis (Glasgow, 8 April 2007)
Tim Kliphuis (Violin); Nigel Clark (Guitar); Roy Percy (Bass)
ティム・クリップハウスのとんでもなく美しい演奏。何度聴いても感動する。

Dorado Schmitt And The Django Festival NY Festival Allstars (Washington DC, November 16, 2007)
Dorado Schmitt (Guitar); Ludovic Beier (Accordion); Florin Niculescu (Violin); Samson Schmitt (Guitar); Brian Torff (Bass);
ドラド・シュミットのオールスター録音。フローリン・ニクレスクが美しい。泣ける。

Dick Hyman and Tom Pletcher (Bradenton, FL, January 2, 2003 - March 27, 2003)
Dick Hyman (Piano); Tom Pletcher (Cornet); Dan Levinson (Clarinet, Saxophone [C-Melody]); David Sager (Trombone); Vince Giordano (Bass Saxophone); Bob Leary (Guitar, Banjo); Ed Metz Jr. (Drums);
もしビックスがガーシュウインを録音したらというコンセプトの録音。

Benjamin Schmid Obsession (Salzburg Austria, November 1, 2003 or June 22, 2004)
Beni Schmid (Violin); Edi Köhldorfer (Guitar); Georg Breinschmid (Bass);
ベンヤミン・シュミッドの録音。テーマはアルコのベースが印象的なクラシカルなアレンジでソロになってからスウィングになる。美しい。

Rod Stewart (NYC, London, Hollywood 2004)
Rod Stewart (Vocal); Bob Cranshaw (Bass); Allan Schwartzberg (Drums); Bob Mann (Guitar); Eric Clapton (Guitar); Joe Sample (Piano)
はじめてスタンダードというものを意識したのはこの曲のこの録音からだった。アルバムの一曲目。当時なにも知らない高校生。オーストラリアという異国で一人。寂しい日だった。そんな中で聴いたこの曲はヴァースからすべてが美しく一瞬で好きになった。いまはそんなに聴かないけれどたまに聴くと懐かしくなる。

San Lyon (Los Angeles, 2022)
Paige Herschell (Vocals); Katie Cavera (Bass); Jenna Colombet (Violin); Dani Vargas (Guitar)
西海岸のマヌーシュジャズ・バンドのサン・リヨン。ギターソロがとてもかっこいい。


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