
Gee, Baby, Ain't I Good to You
「Gee, Baby, Ain't I Good to You ジー・ベイビー・エイント・アイ・グッド・トゥー・ユー」は、1929年にアンディ・ラザフが作詞し、ドン・レッドマンが作曲したポピュラーソング。ジャズにおいてはやはりナット・コール・トリオの録音が有名で金字塔となっている。
ちょっと病んだ恋愛観
「ジー Gee」は「ジーザス Jesus」の婉曲表現で「おや!」「ちくしょう!」とかそういった意味。イエス・キリストの名前は安易に出してはならない。そういったエミル・デュルケームでいうところの「消極的儀礼(ネガティブな儀礼)」からこの「ジー Gee」が生まれた。
「君のことが好きな気持ちが僕をこうさせるんだ。ちくしょう!俺は君によくしてるよね?」と歌われる。主人公は盲信的に相手のことを愛しているが、愛し方が病んでいる。そうした病みを「真実の愛」と特徴づけているが、その内容は「クリスマスに毛皮のコートを買い、ダイヤの指輪やキャデラックも買い与えた」というものだ。
いや…そんなプレゼントをあげたところで…。と思うが、若かったらそれに気づくことがない。プレゼントはやっぱ気持ちの問題でこういった見返りを求めちゃったらだめなんだよなあ、と書きながら思った。
録音
The Nat King Cole Trio (Los Angeles, CA, November 30, 1943)
Nat King Cole (Piano, Vocal); Oscar Moore (Guitar); Johnny Miller (Bass)
ナット・コールのピアノもヴォーカルも堪能することができる録音。わざと重めに弾いており、ナット・コールの歌も相まって感傷的な一曲になっている。
Barbara Lea With The Johnny Windhurst Quintet (Hackensack, NJ, October 19, 1956)
Barbara Lea (Vocal); Dick Cary (Piano); Al Casamenti (Guitar); Al Hall (Bass); Osie Johnson (Drums)
バーバラ・リーの録音。バーバラ・リーが歌うとまた悲痛な愛情を訴えるようでかなりよい。Bメロはちょっと明るく歌っており、そういった使い分けもすごいなあと思う。
Alton Purnell (Sydney, Australia in 1965)
Alton Purnell (Piano, Vocals)
ニューオーリンズのピアノの雄、アルトン・パーネルの録音。素晴らしい…。またナット・コールとも違うピアノとヴォーカルで力強い。
Geoff Muldaur (NOT GIVEN, Released in 1975)
Geoff Muldaur (Guitar); Bob Wilbur (Clarinet); Amos Garrett (Guitar); Bill Keith (Pedal Steel Guitar); Ed Daniels (Flute); Graham Lyons (Bassoon); Joe Farrell (Oboe); Ron Carter (Bass); Christopher Parker (Drums)
ジェフ・マルダーの録音。スウィングのバラードとして展開している。アレンジはマルダー本人。エイモス・ギャレットのギターが冴えている。
Marty Grosz and His Swing Fools (Hamburg, Germany, February 25, 1995)
Marty Grosz (Guitar); Scott Robinson (Clarinet, Saxophone); Jon-Erik Kellso (Trumpet); Martin Litton (Piano); Greg Cohen (Bass); Chuck Riggs (Drums)
マーティ・グロスの録音。インスト。最初の不協和音が病んだ恋愛観を示しているようでかっこいい。ジョン=エリック・ケルソーのトランペットとスコット・ロビンソンのサックスも枯れており、悲壮感を助長させている。
Claude Williams (NYC, April 26 & 27, 1999)
Claude Williams (Vocal, Violin); Henry Butler (Piano); Jee Cohn (Guitar); Keter Betts (Bass); Jimmy Lovelace (Drums)
クロード・ウィリアムズの録音。枯れた音の音色が美しいスロースウィング。
Hot ’n Spicy (Stockholm, Released in 2002)
Bjarke Falgren (Violin); Svein Erik Martinsen (Guitar, Vocal); Lars Tormod Jenset (Bass)
スウェーデンで活動しているスウィング・トリオ。ジャンゴ色が薄めな独自のスウィングを展開している。
The Hot Toddies Jazz Band (NYC, Aug 26-29, 2019)
Queen Esther (Vocal); Gabe Terracciano (Violin); Dan Levinson (Reeds); Justin Poindexter (Guitar, Tenor Banjo & Organ, Tremolo Guitar); Ian Hutchison (Bass); Patrick Soluri (Drums)
ゲイブ・テラッチャーノも参加しているホット・トディース・ジャズ・バンドの録音。クイーン・エスターの物思いに耽るようなヴォーカルも素敵。
いいなと思ったら応援しよう!
