Dardanella
「ダーダネラ Dardanella」は、1919年にフェリックス・バーナードFelix Bernard とジョニー・ブラック Johnny S. Blackが作曲し、フレッド・フィッシャーFred Fisherが作詞したポピュラー・ソング。ベン・セルヴィンBen Selvin の吹き込みが1919年に大ヒットした。現在でもジャズ・スタンダードとして演奏されている。
元々はブラックが書いたラグタイムの曲に新たにメロディを付け足したもので、それにフィッシャーが歌詞をつけた。だが、バーナードが権利を主張したため、かれの名前をクレジットに入れることになった。現在ではブラックの作曲として見なされることが多い。
特徴的なベースライン
またこの曲はベース・ラインが非常に特徴的である。ジョローム・カーンが「カルーア Ka-lu-a」という曲を1921年に発表した。「カルーア」もまたベース・ラインが特徴的だった。フレッド・フィッシャーは、カーンが「ダーダネラ」からベース・ラインを引用したとして、カーンを訴えた。裁判はフィッシャーの勝利となった。盗用された曲をめぐって訴訟を起こすことは珍しいことではなかったが、ベース・ラインがメロディと同じくらい重要視された例として面白い事例と言えるだろう。
録音
Art Tatum (Los Angeles, July 13, 1949)
Art Tatum (Piano)
アート・テイタムのソロ・ピアノ。しばしば変拍子やタイム感無視の無双状態になるんだけど、これは超絶技巧とダンサンブルな演奏が両立していてうっとりする。そしてピアノの音がとてもいい。
Willie "The Lion" Smith (NYC December 24 1949)
Willie "The Lion" Smith (Piano)
ウィリー・ザ・ライオン・スミスの名演。ベース・ラインを強調した演奏なんだけどリズムが変わったあとがとてもかっこいい!
Art Hodes Trio (Chicago December 10 1953)
Art Hodes (Piano); Truck Parham (Bass); Jasper Taylor (Drums)
アート・ホーディスの50年代の録音。ラグタイム/ストライドの名手アート・ホーディスの録音。バンドでの録音でわりとウィリー・ザ・ライオン・スミスの雰囲気に似ている。
Willie "The Lion" Smith (Villingen November 8 1966)
ウィリー・ザ・ライオン・スミスの名演。60年代の録音。つぶやきながら演奏しているのだけれど、それがたまらなくかっこいい。40年代よりも自由に弾いている印象を受けるんだけどずーっと深いスウィングしている。素晴らしい!
Bob Haggart Featuring Tom Pletcher (Atlanta[?] 1986)
Tom Pletcher (Cornet); Ron Hockett (Clarinet, C Melody Saxophone); Jack Howe (Tenor Saxophone); Spencer Clark (Bass Saxophone); Mike Katz (Piano); Bob Haggart (Bass); Doug James (Drums);
ボブ・ハガートのビックス・トリビュート録音。このボブ・ハガートのベースが素晴らしくヒップで、ダグ・ジェームスが気持ちいところにスネアを入れてくれる。すごいスウィング!
Bob Wilber (West Palm Beach, FL March 27, 1995 - March 28, 1995)
Bob Wilber (Soprano Saxophone); Ralph Sutton (Piano); Bucky Pizzarelli (Guitar); Bob Haggart (Bass); Butch Miles (Drums);
御大ボブ・ウィルバーの録音。シカゴ・スタイルの決定録音かもしれない。楽しくダンサンブルでとくにラルフ・サットンがノリまくっている。素晴らしい。
Chris Madsen Trio (Chicago 2011)
Chris Madsen (Tenor saxophone); Joe Policastro (Bass); Dan Effland (Guitar)
テナー・サックス奏者のクリス・マドセンの録音。どうやって3人でこうしたラグタイム/ストライドの曲を再現するのか、というコンセプトが面白く、アンサンブルがめちゃくちゃかっこいい。
Emmet Cohen (January 21-22, 2020)
Emmet Cohen (piano); Russell Hall (acoustic bass); Kyle Poole (drums)
エメット・コーエンの録音。ノヴェルティ・ジャズやスウィングなどのダンス・ミュージックというよりも、モダンかつ現代的な録音。後半のドラムがかっこいい。