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Songe d'Automne/Dream of Autumn

「秋の夢 Songe d'Automne/Dream of Autumn/Song of Autumn」は1908年に英国の作曲家アーチボルト・ジョイス Archibald Joyceによって作曲されたワルツ。ジャンゴ・ラインハルトが1947年に録音をしたことから、ジャズの中でもとくにマヌーシュ・ジャズのスタンダードとなっている。

タイタニック号が沈没する際に演奏されていた曲

作曲者のジョイスは「英国のワルツ王」と呼ばれるほど、ワルツを多く書いた作曲家で、かれの書いた曲はイギリスでも人気があった。イギリスのホワイト・スター・ライン社が所有していたタイタニック号でもホワイト・スター・ライン・オーケストラがレパートリーにしていた。

タイタニック号沈没事故の生存者の一人の下級無線通信士ハロルド・ブライドの回想によれば、タイタニック号が沈没する時に演奏されていたのは「秋/オータム」であったとされる。ホワイト・スター・ライン・オーケストラは「秋の夢」をレパートリーにしていたことから、おそらく「秋の夢」を指していると考えられている。ちなみにレパートリーはこちら

映画『タイタニック』で沈没する時に演奏されていたのは、「主よ御許に近づかん」だったと思うんだけど、この曲も演奏されていたのかもしれない。久しぶりに観てみようと思う。

録音

Quintette du Hot Club de France (Brussels, May 21, 1947)
Hubert Rostaing (Clarinet); Django Reinhardt (Guitar); Eugène Vées (Guitar); Emmanuel Soudieux (Bass); Pierre Fouad (Drums);
QHCFの録音。このころグラッペリはイギリスにいたのでユベール・ロスタンがクラリネットで参加している。テンポを挙げて録音をしている。よりブルージーに哀愁のあるジャズとして曲を再構築している。

Jo Privat (Boulogne, December 16, 1966)
Jo Privat (Accordion); Jean Matelo Ferré (Guitar); Jo Privat Jr. (Guitar); René Dubois (Bass); René Motta (Drums)
アコーディオン・レジェンド、ジョー・プリヴァの録音。マテロとリードを分かち合っており、ジャンゴたちとは違った解釈で曲を再構築している。

Matelo Ferré (Villetaneuse, 1978)
Jean Matelo Ferré (Guitar); Michel Villach (Cimbalom); Boulou Ferré (Guitar); Ernst Pseffer (Bass)
マテロ・フェレの録音。ツィンバロムが参加した録音でロマ・ツィガーヌな響きがする。これまでの録音とは違った哀愁を覚える。

Fapy Lafertin & LeJazz (Chew Magna, Avon, 11-14 November, 1994)
Fapy Lafertin (Guitar); Dave Kelbie (Guitar); Pete Finch (Guitar); Tony Bevir (Double Bass); Bob Wilbur (Clarinet)
ファピー・ラファーティンとル・ジャズ・レコードの所属ミュージシャンたちの演奏。ボブ・ウィルバーが参加しており、グッドマン・スタイルのクラリネットを披露している。かっこいい!

The Rosenberg Trio with Bernard Berkhout (Hoogeldon, the Netherlands, Released in 2007)
Stochelo Rosenberg (Lead Guitar); Nous'che Rosenberg (Rhythm Guitar); Nonnie Rosenberg (Bass); Bernard Berkhout (Clarinet);
ローゼンバーグ・トリオの録音。インタビューを聞いているとストヘロ・ローゼンバーグと言っているように聞こえるが、英語読みのストーケロと表記されることが多い。イントロはほとんどQHCFの完コピで、ストヘロの演奏もジャンゴのオマージュに満ちており、まさに自身らのルーツに志向した録音と言える。

Evan Christopher (Abergavenny, 2008)
Evan Christopher (Clarinet); Dave Blenkhorn (Guitar); Dave Kelbie (Guitar); Sebastien Girardot (Double Bass)
エヴァン・クリスファーの録音。リズムのパターンを変えることで、ダンサンブルな演奏になっている。

Latché Swing (Rouen, France, Released in 2011)
Facundo Fernandez (Clarinet); Bertrand Tailleux (Guitar); Remi Pacault (Guitar); Nicolas Beucher (Bass);
ラッチェ・スウィングの録音。テンポが上がり爽快さが増された録音。短調なんだけど明るい雰囲気もする録音。

The Hot Club of San Francisco (San Francisco, October 25, 2011)
Paul Mehling (Guitar); Evan Price (Violin); Jeff Magidson (Guitar); Clint Baker (Bass)
ホット・クラブ・オブ・サンフランシスコの日本料理のヨシでのライブ実況録音。エヴァン・プライスのヴァイオリンが非常に哀愁がある。素敵。

I Salonisti (Zürich, Released in 2012)
Lorenz Hasler (Violin); Thomas Füri (Violin); Ferenc Szedlák (Cello); Béla Szedlák (Bass);
映画『タイタニック』に出演をしたイ・サロニスティの録音。悲劇的な響きがなんとも言えない感情にさせる。

Les mouches de Paname (NOT GIVEN, Released in 2014)
Loic Devillers (Guitar); Benjamin Moquet (Guitar); Aurélien Prévost (Guitar); Daniel Diaz (Bass); Diane Conrad (Violin); Unkown (Clarinet)
レ・ムーシュ・ド・パナームの録音。現在では活動しておらずCDも購入できずメンバーの詳細がわからない。このメンバーもわかった範囲のメンバーなので実際の参加メンバーは異なる可能性がある。QHCFの録音を基調にしつつ、独自の展開を見せている。ここではヴァイオリンを中心にアレンジしており、スローなマヌーシュ・スウィングとして楽曲を組み立てている。

Gadjo Manouche (NOT GIVEN, Released in 2014)
Kresimir Tomić Bonzo (Guitar); Ivan Grgić Špiro (Guitar); Mario Žuvela (Double Bass); Radovan Bjelajac (Violin); Franjo Stojaković (Clarinet)
クロアチアのマヌーシュ・ジャズ・バンドのガジョ・マヌーシュの録音。おそらくクロアチア語で歌っている女性が誰かわからなかった。ここではヴァイオリンが不参加。YouTubeにてこの録音とは違う録音が挙がっていた。そちらも素敵。

Avalon Jazz Band (Brooklyn, Released in 2016)
Evan Arntzen (Clarinet); Adrien Chevalier (Violin); Olli Soikkel (Guitar); Vinny Raniolo (Guitar); Brandi Disterheft (Bass)
アヴァロン・ジャズ・バンドの録音。美しいアレンジでクラリネットとヴァイオリンのデュエットが素敵。途中でテンポが上がり、終わり方もかっこいい。

Monsieur Pompadour (Berlin, Released in 2018)
Ernesto (Guitar); Ferenc Kristian Hegedütok (Violin); Florian von Frieling (Lead Guitar, Mandoline); Antti Virtaranta (Bass)
ベルリンで活動しているムッシュ・ポンパドールの録音。ドイツ語の歌詞で歌われている。

Basilic Swing (Marseille, 2022)
Frédéric Ladame (Violin); Sylvain Congès (Clarinet); Beniamin Marciano (Guitar); Pierre Zeinstra (Guitar); David Bergeron (Bass)
マルセイユで活動しているマヌーシュ・ジャズ・バンドのバシリック・スウィングの録音。クラリネット、ヴァイオリン、ギターが程よいバランスで配置されている。イントロはクラリネットが主体でヴァイオリンがカウンターメロディを奏でている。

Steven Reinhardt & Angelo Debarre (Fontainebleau, France, November 2022)
Steven Reinhardt (Guitar); Angelo Debarre (Guitar); Thierry Chanteloup (Bass);
スティーヴン・ラインハルトとアンジェロ・ドゥバールの録音。スティーヴン・ラインハルトはジャンゴと親戚関係にあるようだけど、どういった親戚関係かは微妙にわからなかった。

Édouard Pennes (Paris, Released in 2023)
Édouard Pennes (Bass); Romain Vuillemin (Guitar); Julien Cattiaux (Guitar); Fanou Torracinta (Guitar); Jules Dussap (1st violin); Issey Nadaud (violin); Charlotte Chahuneau (viola); Apolline Lafait (cello);
エドゥアール・ペンヌによるプロジェクトの「ジェネレーション・ジャンゴ」の録音。原曲に近いテンポの録音。ストリングスのアレンジも美しい。

参考文献

https://www.encyclopedia-titanica.org/automne.html


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