Hit That Jive, Jack
「ヒット・ザット・ジャイヴ、ジャック Hit That Jive, Jack」はジョニー・アルストンJohnnie Alston とSkeets Tolbert スキーツ・トルバートが書いたジャズ・ナンバー。ジャイヴの名曲。
ジャイヴを隠せ!
ここで使われているジャイヴ Jiveとは大麻のこと。大麻はシカゴやニューヨークで大流行していた。メズ・メズロウが大流行させた。ルイ・アームストロングやスタッフ・スミスは大麻ユーザーとしても有名だった。1930年代1940年代においては、そんな大流行していた大麻についてしばしば歌われた。この曲もまさにそういったジャイヴ・ナンバー。
タイトルと印象的なフレーズで使われる「ヒット・ザット・ジャイヴ、ジャック Hit That Jive, Jack」の「ヒット hit」は「隠す hide」のスラング。「ジャック Jack」は匿名化された呼びかけ表現で「お前」くらいの意味でよい。だからタイトルは「大麻を隠してくれ、ジャック」という意味になる。A’の”Time and time no man waits for”は倒置で本来は”No man waits for time and time”になり「時間は待ってくれない」みたいな意味になる。
わたしの解釈としては「ジャック Jack」と「男 a man」は同一人物。たくさんのジャイヴを持っているプッシャーとかハスラーのこと。「隠して」おいてほしいのは、早くしないと売り切れちゃうから。だから「握手」とか「じゃあね」とか言う時間がない。で、Bメロで街角にて「男」に会うという感じ。
録音
Skeets Tolbert And His Gentlemen Of Swing (NYC, December 17, 1940)
Skeets Tolbert (Clarinet, Alto Saxophone, Vocal); Otis Hicks (Tenor Saxophone); Carl Smith (Trumpet); Charles Richards (Piano); John Drummond (Bass); Hubert Pettaway (Drums);
スキーツ・トルバート本人の録音。オリジナルはかなりジャイヴィーでスモーキー。ソロがかっこいいとかそういうんじゃなくて、サグなところを楽しめる録音。
Nat King Cole Trio (NYC, October 22, 1941)
Nat King Cole (Piano, Vocal); Oscar Moore (Guitar, Vocal); Wesley Prince (Bass, Vocal)
ナット・コールの黄金期は間違いなくこの時期でしょう。これはニューヨーク時代。オスカー・ムーアのギターもウェズリー・プリンスのベースも最高にかっこいい。ヴォーカリストとしてだけではなく、ピアニストとしてのナット・コールの凄みも味わえる。この録音のフォロワーが本当に多い。
The Four Vagabonds (Unkown Location, 1943)
John Jordan (Lead Vocal); Robert O’Neal (Tenor Vocal); Norval Taborn (Baritone Vocal); Ray Grant (Guitar, Bass Vocal)
ジャイヴ・コーラス・グループのフォー・ヴァガボンズの録音。声とギターのシンプルなアンサンブルなんだけどベースになったりトランペットになったりものすごい厚みのあるスウィングが展開されている。レイ・グラントのギターも非常にかっこいい!
John Pizzarelli Jr (NYC, June 26, 1985)
John Pizzarelli (Guitar, Vocal, Arrangement); Dave McKenna (Piano); Bucky Pizzarelli (Guitar); Jerry Bruno (Bass); Butch Miles (Drums);
ジョン・ピザレリの2枚目のアルバムから。この頃からスタイルがほとんど変わらない。ブッチ・マイルスはバッキーが連れてきたのかも。デイブ・マッケンナのソロが非常にかっこよい。
Four Charms (Chicago, March 17, 1999)
Jimmy Sutton (Acoustic Bass, Vocal); Joel Paterson (Lead Guitar, Vocal); Jonathan Doyle (Tenor Saxophone); Jim Barclay (Drums)
Hot Club Sandwich (Olympia, WA, 2007)
Kevin Connor (Guitar and vocal); Greg Ruby (Guitar); Ray Wood (Guitar); Matt Sircely (Mandolin); Tim Wetmiller (Violin); James Schneider (Bass);
ホット・クラブ・サンドウィッチの録音。ナット・コール・トリオのアレンジを元に録音している。ジャイヴ感があってかっこよく、またジャンゴ・スタイルなところもかっこいい。またマンドリンがドーグの雰囲気も出している。
Hep Chaps (London, 2012)
John Wallace (Lead Vocals, Saxophone); David Howarth (Lead Vocals, Guitar); Dragan Zac Zdravkovic (Lead Guitar); Roger Beaujolais (Vibraphone); John Day (Bass); Damon Clarridge (Drums);
ロンドンのスウィング・バンドのヘップ・チャップス。アンサンブルもかっこよく、後半はナット・コールの録音を元にしたブリッジを展開している。
Girls From Mars (NYC, April 3-4, 2013)
Jill McMahon (Guitar, Vocals); Tina Rinaldi (Trumpet); Lisa Schwebel (Saxophone); Cathy Peterson (Piano); Amy Kohn (Bass, Vocal); Laura McLellan (Drums, Vocal)
ガールズ・フロム・マーズの録音。ナット・コール・トリオの録音が元ネタ。非常にかっこよい。
Jivers Swing (Buenos Aires, Released in 2013)
Daniel Schneck (Tuba); Checha Naab (Snare drum and Vocals); Juan Martín Yansen (Guitar, Banjo, Vocal); Juan Cristóbal Barcesat (Washboard, Vocal, Arrangements)
アルゼンチンのジャイヴ・バンド。チューバにウォッシュボードという組み合わせもかっこいいし、さらにコーラスがとてもいい。タップも飛び出し、めちゃくちゃかっこいい!
Hot Shooters (Buenos Aires, November 19, 2018)
Pedro Alvide (Clarinet, Vocal); Julian Cerdeira (Tenor Guitar, Vocal); Lucho Pellegrini (Washboard, Vocal); Ivan Viaggio (Bass, Vocal); Rodrigo Nuñez (Piano)
ブエノス・アイレスのスウィング・バンド。ジャイヴァーズ・スウィングと似ているんだけどこちらはオールメール。スペイン語なまりの歌がかっこよく癖になる。
G & The New Orleans Swinging Gypsies (New Orleans, Released in 2018)
John Saavedra (Guitar, Vocal); Giselle Anguizola (Taps, Vocal); Connor Stewart (Alto Saxophone); Matt Booth (bass)
ジョン・サーヴィドラ率いるジー・アンド・ザ・ニューオーリンズ・スウィンギング・ジプシーズの録音。その名の通りニューオーリンズで活動しているマヌーシュジャズ・バンド。
The Perky Pollyvocs (Dresden July-August 2019)
Thommy aka Mr. Doo (lead vocal, snare, kazoo); Flip Rascal (2nd vocal, guitars); Gonzo Long (3rd vocal, bass)
ドイツのジャイヴ・バンドのパーキー・ポリヴォックス。3人のジャイヴ感がとっても素敵。私が好きな曲ばかり録音する。
John Pizzarelli Trio (NYC, August 27-28, 2018)
John Pizzarelli (Guitar); Konrad Paszkudzki (Piano); Mike Karn (Bass)
ジョン・ピザレリ・トリオの録音。この曲の録音は30年ぶり。完成されたジョンのギターとヴォーカル。かなり速いテンポ。コンラッド・パシュクデュスキはどちらかと言うと現代的なピアノの印象なんだけど、このトリオにとてもマッチしている。進化したピザレリ・トリオって感じ。