Doctor Jazz/Dr. Jazz
「ドクター・ジャズ Doctor Jazz/Dr. Jazz」は1926年にキング・オリヴァー Joe "King" Oliver が作詞作曲したジャズ・ナンバー。
ジャズ先生
「もしもし交換手さん、ジャズ先生をお願いします」という歌詞からはじまるこの曲は、電話の交換手とのやりとりを真似している。つまり、当時の電話は交換手に電話をし、そこから繋げたい相手に電話をかけていた。そのときのフレーズが「もしもし交換手さん、○○をお願いします Hello, Central. Give me ~」だった。
実は1901年にチャールズ・ハリス Charles K Harrisによる「もしもし天国をお願いします Hello Central, Give Me Heaven」という曲があり、この曲を参照している可能性もある。「もしもし天国をお願いします」では「亡くなってしまった母に電話をかける」というテーマだった。
他方で「ドクター・ジャズ」は、ジャズがトラブルやブルースを取り去ってくれる医者として登場している。「手に入れれば手にいれるほど欲しくなるような存在」で「ダンスシューズを履かせてくれる」。ジャズは狂乱の20年代における癒しであったのだ。
こうしたジャズに対する当時の気持ちが表現されている。ルイ・アームストロングは実際に「ドクター・ジャズ」と呼ばれており、そうしたミュージシャンは人々に癒しと興奮を与えていた。音楽は辛い現実を忘れさせられる特効薬であったのだ。
録音
Jelly Roll Morton's Red Hot Peppers (Chicago, December 16, 1926)
Jelly Roll Morton (Piano, Vocal); George Mitchell (Cornet); Kid Ory (Trombone); Omer Simeon (Clarinet); Johnny St. Cyr (Banjo, Guitar); John Lindsay (Bass); Andrew Hilaire (Drums)
ジェリー・ロール・モートンの録音。まさにシカゴ・スタイルの幕開けとなるような演奏。この曲での一番好きな録音の一つ。
Peter Dean (NYC, Released in 1976)
Peter Dean (Vocal, Ukulele); Edward Daniels (Tenor Saxophone, Clarinet); Urban Green (Trombone); Dardanelle (Piano, Vibraphone); Allen Hanlon (Guitar, Banjo); Milton Hinton (Bass); Connie Kay (Drums);
ピーター・ディーンの録音。アコースティック・スウィングなアンサンブルかつポップで非常に聴きやすい。
Rod Mason & Ray Foxley (Ludwigsburg, Germany, December 13, 1979)
Rod Mason (Trumpet); Ray Foxley (Piano)
イギリスのトランペット奏者のロッド・メイソンとイギリスのピアノ奏者レイ・フォックスリーのデュオ。シンプルな構成だけに一つ一つの音がよく聴こえ引き込まれる。
John Jorgenson (Hollywood, CA, Released in 1988)
John Jorgenson (Clarinet, Acoustic Guitar, Electric Guitar); Brad Roth (Rhythm Guitar); Raul Reynoso (Rhythm Guitar); Charlie Warren (Bass); Ray Templin (Drums, Piano);
ジョン・ジョーゲンソンの録音。クラリネットはジョーゲンソン本人でおそらく自身が弾くエレキ・ギターとの掛け合いを披露している。マヌーシュ・ジャズにも目を向けているスウィングを展開している。
Jacques Gauthe (Paris, February 17–18, 1990)
Jacques Gauthé (Clarinet); Alain Marquet (Clarinet); Daniel Barda (Trombone); Louis Mazetier (Piano); Enzo Mucci (Banjo, Guitar); Michel Marcheteau (Sousaphone);
フランスで活躍しているジジャック・ゴーテの録音。ディキシーランド・ジャズ。
Ellis Marsalis (Burband, CA, February 1991; NYC June 1991)
Ellis Marsalis (Piano); Reginald Veal (Bass); Herlin Riley (Drums)
エリス・マルサリスのトリオ録音。ハーリン・ライリーのドラムに耳がいく。素晴らしいスウィングの洪水。
John Jorgenson Quintet (NYC, Released in 2010)
John Jorgenson (Acoustic Guitar, Vocal, Clarinet); Jason Anick (Violin); Kevin Nolan (Rhythm Guitar); Simon Planting (Bass); Rick Reed (Percussion);
ジョン・ジョーゲンの録音。ジェイソン・アニックのヴァイオリンが素敵。またジョーゲンはクラリネットも披露している。
NOLA String Kings (New Orleans, Released in 2021)
Don Vappie (Banjo, Guitar, Vocals); Matt Rhody (Violin, Mandolin, Vocals); John Rankin (Guitar, Vocals)
ドン・ヴァッピー、マット・ランディ、ジョン・ランキンというニューオリンズのベテランたちのストリングス・トリオ。ヴァースからはじまる。楽しい素敵な録音。
Golden Compass Trio (New Orleans, July 2022)
Bryce Eastwood (Soprano Saxophone, Tenor Saxophone, Vocal); Mike Clement (Guitar); Ben Fox (Bass, Vocal)
ニューオリンズの若手〜中堅による録音。ベン・フォックスのベースがとても素敵。アルバムの中でも特に好きな録音。