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Doctor Jazz/Dr. Jazz

「ドクター・ジャズ Doctor Jazz/Dr. Jazz」は1926年にキング・オリヴァー Joe "King" Oliver が作詞作曲したジャズ・ナンバー。

ジャズ先生

「もしもし交換手さん、ジャズ先生をお願いします」という歌詞からはじまるこの曲は、電話の交換手とのやりとりを真似している。つまり、当時の電話は交換手に電話をし、そこから繋げたい相手に電話をかけていた。そのときのフレーズが「もしもし交換手さん、○○をお願いします Hello, Central. Give me ~」だった。

実は1901年にチャールズ・ハリス Charles K Harrisによる「もしもし天国をお願いします Hello Central, Give Me Heaven」という曲があり、この曲を参照している可能性もある。「もしもし天国をお願いします」では「亡くなってしまった母に電話をかける」というテーマだった。

「もしもし天国をお願いします Hello Central, Give Me Heaven」のシート・ミュージックの表紙。初期のティン・パン・アリーの曲。

他方で「ドクター・ジャズ」は、ジャズがトラブルやブルースを取り去ってくれる医者として登場している。「手に入れれば手にいれるほど欲しくなるような存在」で「ダンスシューズを履かせてくれる」。ジャズは狂乱の20年代における癒しであったのだ。

Oh, Hello Central, give me Doctor Jazz,
もしもし交換手さん、ジャズ先生をお願いします
He's got just what I need, I'll say he has.
先生は私が欲しいものをなんでも持っている
When the world goes wrong, and I've got the blues,
世界が悪い方向に向かって、僕も憂鬱になってしまう
He's the man who makes me get out both my dancing shoes.
先生は、僕がダンスシューズを履いて踊りたくなるような、そんな素晴らしい男性
The more I get, the more I want, it seems.
手に入れれば入れるほど、もっと欲しくなるよ
I page old Doctor Jazz in all my dreams,
夢でもジャズ先生を呼び出すよ
When I'm trouble bound and mixed, He's the guy that gets me fixed,
トラブルに巻き込まれて混乱している時、
Hello, Central, give me Doctor Jazz.
もしもし交換手さん、ジャズ先生をお願いします

こうしたジャズに対する当時の気持ちが表現されている。ルイ・アームストロングは実際に「ドクター・ジャズ」と呼ばれており、そうしたミュージシャンは人々に癒しと興奮を与えていた。音楽は辛い現実を忘れさせられる特効薬であったのだ。

録音

Jelly Roll Morton's Red Hot Peppers (Chicago, December 16, 1926)
Jelly Roll Morton (Piano, Vocal); George Mitchell (Cornet); Kid Ory (Trombone); Omer Simeon (Clarinet); Johnny St. Cyr (Banjo, Guitar); John Lindsay (Bass); Andrew Hilaire (Drums)
ジェリー・ロール・モートンの録音。まさにシカゴ・スタイルの幕開けとなるような演奏。この曲での一番好きな録音の一つ。

Peter Dean (NYC, Released in 1976)
Peter Dean (Vocal, Ukulele); Edward Daniels (Tenor Saxophone, Clarinet); Urban Green (Trombone); Dardanelle (Piano, Vibraphone); Allen Hanlon (Guitar, Banjo); Milton Hinton (Bass); Connie Kay (Drums);
ピーター・ディーンの録音。アコースティック・スウィングなアンサンブルかつポップで非常に聴きやすい。

Rod Mason & Ray Foxley (Ludwigsburg, Germany, December 13, 1979)
Rod Mason (Trumpet); Ray Foxley (Piano)
イギリスのトランペット奏者のロッド・メイソンとイギリスのピアノ奏者レイ・フォックスリーのデュオ。シンプルな構成だけに一つ一つの音がよく聴こえ引き込まれる。

John Jorgenson (Hollywood, CA, Released in 1988)
John Jorgenson (Clarinet, Acoustic Guitar, Electric Guitar); Brad Roth (Rhythm Guitar); Raul Reynoso (Rhythm Guitar); Charlie Warren (Bass); Ray Templin (Drums, Piano);
ジョン・ジョーゲンソンの録音。クラリネットはジョーゲンソン本人でおそらく自身が弾くエレキ・ギターとの掛け合いを披露している。マヌーシュ・ジャズにも目を向けているスウィングを展開している。

Jacques Gauthe (Paris, February 17–18, 1990)
Jacques Gauthé (Clarinet); Alain Marquet (Clarinet); Daniel Barda (Trombone); Louis Mazetier (Piano); Enzo Mucci (Banjo, Guitar); Michel Marcheteau (Sousaphone);
フランスで活躍しているジジャック・ゴーテの録音。ディキシーランド・ジャズ。

Ellis Marsalis (Burband, CA, February 1991; NYC June 1991)
Ellis Marsalis (Piano); Reginald Veal (Bass); Herlin Riley (Drums)
エリス・マルサリスのトリオ録音。ハーリン・ライリーのドラムに耳がいく。素晴らしいスウィングの洪水。

John Jorgenson Quintet (NYC, Released in 2010)
John Jorgenson (Acoustic Guitar, Vocal, Clarinet); Jason Anick (Violin); Kevin Nolan (Rhythm Guitar); Simon Planting (Bass); Rick Reed (Percussion);
ジョン・ジョーゲンの録音。ジェイソン・アニックのヴァイオリンが素敵。またジョーゲンはクラリネットも披露している。

NOLA String Kings (New Orleans, Released in 2021)
Don Vappie (Banjo, Guitar, Vocals); Matt Rhody (Violin, Mandolin, Vocals); John Rankin (Guitar, Vocals)
ドン・ヴァッピー、マット・ランディ、ジョン・ランキンというニューオリンズのベテランたちのストリングス・トリオ。ヴァースからはじまる。楽しい素敵な録音。

Golden Compass Trio (New Orleans, July 2022)
Bryce Eastwood (Soprano Saxophone, Tenor Saxophone, Vocal); Mike Clement (Guitar); Ben Fox (Bass, Vocal)
ニューオリンズの若手〜中堅による録音。ベン・フォックスのベースがとても素敵。アルバムの中でも特に好きな録音。


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