Basin Street Blues
「ベイズン・ストリート・ブルース Basin Street Blues」は1926年にピアニストであり作曲家でもあるスペンサー・ウィリアムズが書いたブルース。ジャズとブルースのスタンダードとなっている。また有名なヴァースはグレン・ミラーがのちに付け足したものと言われている。
歓楽街
このベイズン・ストリートは、ニューオーリンズのフレンチ・クオーターに存在したストーリーヴィルという赤線地帯の目抜き通りを指す。要するに「酒と売春」で賑わっていた歓楽街。そういった街は当然音楽も栄えており、若い日のルイ・アームストロングやジェリー・ロール・モートンはストーリーヴィルの娼館で演奏をし日銭を稼いでいた。幼少時代のウィリアムズは、その通りに叔母と住んでおり、これにちなんで名前をつけた。
実はこの曲が書かれた当時は、地図上から「ベイズン・ストリート」という文字が消えてしまっていた。というのも1917年に当時の海軍長官がストーリーヴィルを閉鎖し、1921年にベイズン・ストリートはノース・サラトガに改名されたからだ。ただ、1945年にニューオーリンズ・ジャズのリバイバルの影響からベイズン・ストリートに名前が戻り、いまでは公式にベイズン・ストリートとして目抜き通りが存在している (Gioia 2021 p. 49)。
ちなみにスペンサー・ウィリアムズの叔母は、ストーリーヴィルの高級娼館マホガニー・ホールやサロンを経営する遣手婆（マダム）のルル・ホワイト Lulu Whiteだったと言われている。絵に書いたようなニューオーリンズの遣手婆でとにかく宝石が好きで、ビジネスは失敗し、もれなく子供の時から犯罪歴もあった。
録音
Louis Armstrong And His Hot Five (Chicago, December 4, 1928)
Louis Armstrong (Trumpet, Vocal); Mancy Cara (Banjo, Vocal); Fred Robinson (Trombone); Zutty Singleton (Drums); Jimmy Strong (Clarinet); Earl Hines (celeste, piano, Vocal)
ルイ・アームストロングのシカゴ時代の録音。スキャットで歌っているので歌詞はない。この時代のホット・ファイヴあるいはホット・セブンの録音はどれもよい。
De De & Billie Pierce (NY March 31 1962)
De De Pierce (Trumpet); Billie Pierce (Piano)
ニューオリンズのおしどり夫婦による熱演。泣けるトランペットと懐の広いピアノ。
Red Skunk Jipzee Swing Band (San Diego, California, 2014)
Molly Reeves (Guitar and Vocal); Samuel Boorman (Guitar); Jamie Mather (Bass), Ken Davis (Drum), Justin Au (Trumpet); Pamela Sheffler (Violin)
歌あり。いまはもう活動していないけれど大好きな録音。ちょうど2000年代後半から増え始めた西海岸のトラッド・ジャズバンドの一つ。モーリー・リーヴスは現在ではニューオーリンズで活躍していて、私がもっとも好きなギタリストの一人。この録音では、マヌーシュ・ジャズをもとにさらにパンキッシュに演奏している。
Annie and the Fur Trappers (St Louis 2016)
Annie Linders (trumpet); Nathan Rivera (banjo); Matthew Berlin (bass); Taylor Maslin (clarinet); Ed Goroza (trombone); Rob Rudin (drum)
セントルイスのジャズ/ブルース・バンド。この録音ではニューオーリンズ・ジャズに志向している。とても聴きやすく楽しい。
Jivers Swing (Buenos Aries 2020)
Daniel Schneck (Tuba); Checha Naab (Vocal, Snare Drum); Juan Martín Yansen (Vocal, Banjo); Juan Cristóbal Barcesat (Vocal, Washboard); Florencia Urbani (Vocal [Guest); Austin Ferro (Trombone [Guest); Leonel Hitters (Trumpet [Trumpet]; Juan Klappenback (Clarinet [Guest])
ブエノス・アイレスのジャイヴ・バンド。ハーモニーがめちゃくちゃ楽しい。最初のコーラスが終わってからテンポが速くなる。そこがとてもかっこいい。
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