どうして僕は生きてるんだろう、という意味での『生きちゃった』
サウナでよく整ってぐっすり眠った翌日、とてもいい天気だったので起き抜けに映画のチケットを購入。石井裕也監督の『生きちゃった』を観に、渋谷ユーロスペースまで。
『生きちゃった』は、幼馴染である山田厚久(仲野太賀)と武田泰(若葉竜也)、そして奈津美(大島優子)の3人がメインの物語。厚久と泰は学校帰りのコンビニかどこかでパピコを買って、外で待っている奈津美に1本ずつ分けてあげる。この描写から、昔から男2人ともが奈津美のことを好きだったんだと思う。なのに現在、奈津美は厚久と結婚してすでに5歳の娘・鈴がひとり。厚久と泰の関係は破綻したのかと思いきやそんなことは一切なく、近い将来にともに起業しようと夢見ているバディだった。ある出来事をキッカケにいろんな歯車が噛み合わなくなり、たった1年半で想像もできないような出来事が立て続けに起こってしまう。という感じのおはなし。※以下、多少のネタバレを含みます。
仲野太賀さんは『ぼくの好きな女の子』でのヒロインの彼氏役・城戸が記憶に新しい。今話題のTBSドラマ『この恋あたためますか』での新谷誠役でも世間を賑やかせている。圧倒的演技派だし、イケメンすぎず(失礼)柔らかい雰囲気の塩顔だからなのか髪型や服装によって雰囲気がものすごく変わる方なので、どんな役をやらせても違和感がない。
若葉竜也さんといえば『愛がなんだ』のナカハラ。よかったな〜これ。そろそろもっかい観たいなぁ、愛がなんだ。
この頃から「若くてあどけないのにどこか色気がある方だなぁ」と思っていて、今回もそれは変わらなかったけど、なんとなく桐谷健太さんと小栗旬さんを足して2で割ったようなお顔だなと思った(だいたい似てるっていう人に全然似てないって言われるのであんまり信じなくていいです)。
そして、さっき「若くて」って言っておいてアレなんですけど、今調べてみたら若葉さんって31歳なんですね…そりゃ大人の色気あるわ…
大島優子さんはね。もうね。なんの説明の必要もありませんよね。
『生きちゃった』ではそれなりにとんでもない役を演じられていて、あの天下の日本のアイドルが…と腰抜け。という反面、アイドル時代からどこか寂れた雰囲気が見え隠れする方だなぁと思っていたので、こういう役柄はハマる。
寂しさというものは、いついかなる場合にも狂気、いや凶器になりうる。
ちょうどつい最近、江國香織さん原作の『スイートリトルライズ』を観てまったく同じことを感じていたところだったので、映画を観るタイミングというものは偶然ではなく必然、ということを確信。美しい奥様に不安要素のない夫、なんの不自由もない普通な生活。傍から見たら幸せそう、何事もなくうまくいっている、そういうところに思わぬ落とし穴が潜んでいる。本当は、優しく触れるだけでも割れちゃいそうなくらいにパンパンに膨れた風船みたいな空気なのにね。
『スイートリトルライズ』については、また別途書こうと思います。多分。
『生きちゃった』の中で何度か出てきた、「日本人だからかなぁ」という台詞。
言いたくても言えない、本当の気持ちをさらけ出せない。そんなものが積もりに積もっていくうちに、自分では気付かないところで高い高い壁を作ってしまっている。そしてこの壁は、身近な人ほど高く感じてしまうんだよねきっと。
壁をよじ登っている間は、かろうじて耐えられている。登り切るときにはもう手遅れで、その寂しさを間違った方法で解消してしまう。だいたい、この方法は長続きしないし後々とんでもないことになる。寂しさから、いろんな判断が鈍ってしまっているからね。気をつけましょう。
『生きちゃった』の中で序盤に息を呑むであろう、厚久が奈津美の浮気現場を目撃してしまうシーン。浮気相手は泰だろう、と信じて疑わなかった私は根が腐っているのかもしれない。泰であった可能性は無きにしもあらずではあるけど、結果、泰ではないし、もし泰だったらこの物語は完結しようにもできない。
この浮気相手と奈津美は生活を共にすることになるわけだけど、本当に散々な奴だし、奈津美はなぜ奴のことを好きになってしまったのだろうか?と観終わったあとずっと考えていた。でも、奈津美にとっては厚久との生活よりも何倍も良いものだったのかもしれないね。
ラストのシーンで、はじめて厚久の感情が爆発するシーンがあって。もう今更なにもかもどうしようもない。でも変わらなきゃ。僕は生きなきゃ。いろんな覚悟が見えた終わり方だった。鈴ちゃんにちゃんと想いを伝えられてたらいいなぁと願う。
自分の感情に蓋をして良いことなんてない。あ、もちろん、時と場合にもよるけど。好きな人だからこそ、本音だったり、嘘偽りない自分をさらけ出して生きるべきだと思う。変に気を遣ったり、嘘をついたりするくらいなら一緒にいない方がいい。自分自身も常に正直に生きていたいし、もしそうできない人が身近にいたら、せめて私の前では開放的な自分でいられるような世界をつくってあげたいと思う。
んー、なんか話がズレちゃった気がするな。まぁいっか。