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2020’sの若者キャリア論(その3) 佐々木満秀(人と未来グループ代表取締役)×古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)

※ 本稿は、一般社団法人スクール・トゥ・ワークの2019年10月7日付ブログ記事「2020’sの若者キャリア論(その3) 佐々木満秀(人と未来グループ代表取締役)×古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)」の転載です。

2020年代の若者キャリアはどうなっていくのか。今回は、高校新卒求人サイト「ジョブドラフト」を運営する株式会社ジンジブをグループ会社に持つ株式会社人と未来グループの佐々木満秀さんと対談します。

前回 2020’sの若者キャリア論(その2) 佐々木満秀(人と未来グループ代表取締役)×古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)

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古屋:
高校生の方で、一度正社員の職に就いて辞めた後に非正規社員になっているんです。全てが悪いとは言いませんが、先ほど、修羅場を積むべきだ、若いうちはブラック企業で頑張るべきとお話がありましたが、中には安易な気持ちで、楽な方に楽な方にと、仕事を選んでしまっています。

私は専門が20代の若い人のキャリアの研究で、大卒・非大卒を問わずいろんな方にインタビューしたうえで研究していますが、メディアの取材を受けた時に、高卒の話になるとキャリアが不安定だというところに行きがちです。

例えば、ご存知だと思うんですが、愛知県は数年前に歴史上まれにみる若者不足となったことがありまして、大型商業施設を作った時に300人くらいアルバイトが必要だったんですが、全然採れなくて、時給が急激に高騰していたそうです。理由は当時製造業の景気が良すぎるので、傘下の部品企業含めみんな高校生を採用してるんです。その中で期間工が多いんです。期間工は稼げるんです。単発の半年契約で200万円以上稼げます。

佐々木:
僕もやってましたから。僕は別のメーカーでしたが(笑)。

古屋:
釈迦に説法になりますが、そういう仕事があるのでみんな期間工になってしまうんですが、それはずっと続けられるわけではないんです。

若者の力をどこに活かすか、という点では大学全入の時代で、大学に若者をどんどん吸い上げないといけないという大学側の意見があるじゃないですか。大学側も経営なので。

就職とゼロサムの状態になっているんですよね。120万人いる高校生を大学か企業のどちらに送り込むかという。

佐々木:
そういうことです。

奨学金を借りて、大学にわざわざ行って、遊ぶだけで終わる4年間に気づかせようと思ってるんです、僕は。

僕の子どもも大学へは行っていないんです。大学はお金があれば行けますし、国公立なら行ってもいいかと思っていました。本気で勉強してその道に行きたいんだったら行け、中途半端には行くなと言っていたんです。別に奨学金を借りなくても、金は出してやるから。でも、本気でいく意味を持たないんだったら行くな、働けと。

少子化問題も含めて日本全体の大きな課題には、人口減少が全ての根底にありますので、どちらかというと大学全入制時代の施策も反対派なんです。学校を作ろうと思ってるんです。これから本当の意味で必要とされるスキル、AIとか、そういう軸をドーンと展開して、昼間は働きながら、職業観を育てながら、大学行くのは夜でもいい。30代40代になった時に家庭も持って、職業としての未来もあって、という社会を作らないと日本は人口減少が改善されません。今のまま行ってしまうと、少子高齢化は改善されないですよ。この社会の中では。

だから、高卒を推したいんです。

人の生き方は多様化しているので、結婚するかどうかは何が良い悪いではないんですが、晩婚化と少子高齢化が進む根底の要因は、未来に対する希望や期待だと思います。賢くなればなるほどそこを考え、考えれば考えるほど結婚しにくくなります。

古屋:
私は、本業で若い人の研究をしてますが、就活前後の女性の話をすると、育休を採りやすい会社に就職したいというのが多いです。これが大きな間違いじゃないかと思っています。

女性はリアルに考えているのはそうだと思います。慶応や上智のような優秀な大学の女子学生さんが、一般職で就職していくのは、そういうリアル思考なんです。育休取った後働きやすいですし。

僕は逆だと思っていて、女性ほどスキルを一定の時期までに身に着けることが、その後の活躍、生き生きと働けるかどうかに結びついているんじゃないかと。

大企業だと、育休を取った後に仕事の質が変わってしまいます。「マミートラック」という問題です。今の大企業はこうなってしまう仕事しか提供できないので。だったら、スキル、ネットワーク、ノウハウ、を自分の中に身に着けていけば、育休を取らなくても、辞めても、いつでもリターンできるわけです。

今、女性のマーケットが広がってますね。大企業に入ってジョブローテーションで回されると、何の専門性も身につかないですね。女性こそ大企業でもいいんですが、ベンチャーとか、そういう経験をさせられるような、仕事にコミットできるような仕事が必要だと思っています。

それは、もはや現代では男性にも言えると思います。ライフイベントのたびに人生が変わってらっしゃるとのお話でしたが。男性もそういうライフイベントが増えていくと思います。そういう時にその後生きていくために、自分に何が身につくかを考えて就職する必要があると思います。今の学生さんが重視しているのがワークライフバランスとか、労働時間とかです。みんな労働時間をみてます。今はリクナビにも大きな会社は残業時間が書いてあるので。僕の感覚では月30時間を超えると、学生さんは多いと感じてます。月30時間を下回るとまあ良い、と。ちゃんちゃらおかしいわけですよ。

こういうと古臭いと言われるかもしれませんが、僕も前職が国家的なブラック企業だったので、当時残業時間は150時間とかあったんです。最後の一番緩かった時で平均120時間くらいでした。確かにきつかったのですが、今となってはそれは自分のためになったと思っています。あまりこういうことを言うと炎上しそうですけど(笑)。社会人として一皮むけるための最低努力時間という議論がありますが、一定の時期に一定程度必要だと思います。

ですが今はそれを嫌がる方が多いのは、人生100年時代を生きるうえで、大きなリスクだと思います。生き延びて行けないのではないかと。

若い方は二極化していて、安定志向の方もいれば、学生起業して失敗してという挑戦をしていきたいという人もたくさんいます。特に今は、世間的に最優秀とされる大学の学生さんも含め、ベンチャー企業に就職することも当たり前になってきていて、非常に面白い社会になってきていると思います。

このまま10年20年経つと、この差は幾何級数的に増えていく。

ネットワークはネットワーク生むので、ノウハウはノウハウを生みますし、今の20代が40歳、45歳になった時に、違う就業社会になってしまっているのではないかと私は懸念しています。

一つのポイントは18歳の職業選択だと思っています。今の教育システムで努力して、最も勝ち残った人間は、例としてはつまんないですが、全国テストで1位になりましたという人がいたとします。こういう人が18歳で選ぶ選択肢は一つしかないんです。東京大学進学なんです。東京大学以外の例えば獣医学部が強いような大学に行きたいと言っても、親と教師、友人、社会から羽交い絞めにして止められます。ましてやダンプの運転手になりたいなどと言おうものなら親に殴られます。

今の社会は、優秀な人ほど選択肢が狭まるんです。中堅どころの大学というか、誰でも入れるような大学に行くような人の方が、選択肢は広いんです。

努力した人ほど選択肢が広がっていくのが普通の在り方なのではないかと思います。

例えば、18歳で面白い人間がでてきて、御社のようなサービスを見ながら就職し、4年後にその会社で責任を持つ立場になったうえで、例えば夜、大学や専門学校に通う。なんとなく通うのではなくて、自分の責任ある立場なったからこそマネジメントを学びたいから行くんだ、と。AI学びたいから行くとか。そういったモチベーションがあったときに初めて、学びというものが起こると思います。



一般社団法人スクール・トゥ・ワーク
 一般社団法人スクール・トゥ・ワークでは、学生及び早活人材(非大卒人材)に対するキャリア教育事業等を行っています。
 私たちは、キャリアを選択する力の育成を通じて、未来を生きる若者全てが安心・納得して働き、その意欲や能力を十分に発揮できる社会の実現を目指します。

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