教育・学びの未来を創造する教育長・校長プラットフォーム(第1回合宿)イベントレポート(前半)
≪第一部≫
~全国から集った教育長・校長及びその右腕の皆様による「火種」の見える化・共有・相互刺激~
● 日時:2018年9月15日(土)13:00~18:15、16日(日)10:30~14:00
● 場所:デジタルハリウッド大学
● 主催:教育・学びの未来を創造する教育長・校長プラットフォーム事務局(NPO法人ETIC.・文部科学省若手職員有志)
● 参加人数:約30人
(概要)
● 冒頭、事務局からのプラットフォームに関する趣旨説明や、アイスブレイクをおこなった後、以下のプログラムを実施した。
● ワークショップ①(テーマ別)は、参加者への事前アンケート等を踏まえ設定したテーマごとにワークショップを実施した。テーブルごとの議論の概要は次のとおり。
A★学校マネジメント・働き方改革★
ある小学校で取り組んでいる学校運営や働き方改革に関する職員同士でのワークショップの事例が紹介されたことをきっかけに、若手教師の育成や発言しやすい関係づくりの方策を中心に議論が進んだ。具体的には、議論する際は人の発言に対して、「笑わない、否定しない、議論をその後に持ち越さない」ということを守ることや、校長・副校長等の管理職ではなく、主幹教諭やミドルリーダーが議論で主体性を育むこと、普段から仕事以外の話題も含め気軽に話せる雰囲気づくりなどがあげられた。一方で、若手が意見を言いやすい環境づくりも、一歩間違えば問題提起だけになり、解決策はベテランの先生や管理職に頼り過ぎてしまうため若手の問題解決能力が育たないという課題が提起された。また、働き方改革を進める土台は、先生方の間にESDの考え方が共有されていることではないかということが指摘され、働き方や学校マネジメントの改革をする際には、まず教職員の意識を変えていくことが重要であることが確認された。
B-1★学校・家庭・地域の連携(コミュニティ・スクール含む)①★
学校と地域の連携やコミュニティ・スクールを進めていく上での課題等として、①地域(まち)と学校を繋ぐ人材不足、②運営計画のつくり方、③「システム」として根付くための方策等が挙げられた。①人材不足については、社会教育主事の活用や学校支援本部員・学校・地域コーディネーターとの連携、また、チーム学校を支える様々なメンバーにしっかりと顔が浮かぶことが重要であることが指摘された。②運営計画については、「学校づくりはまちづくり」の観点から、まずは学校の中長期の未来像を描くことの重要性が確認された。そして③コミュニティ・スクールを「システム」として根付かせるためには、コミュニティ・スクールにアウトソーシングすることによるメリットを可視化させていくことや、教師に多様性・異質性をマネジメントする力が必要であること等が解決策としてあがった。
B-2★学校・家庭・地域の連携(コミュニティ・スクール含む)②★
地域と連携した学校教育の取組、教職員を取り巻く現状、地域特有の課題などについて議論が行われた。特に、地方では、学校統廃合による地域のつながりの衰退が課題であり、地域における子どもの居場所づくり、産官学の連携について話し合った。こうした中、人口流出防止や学力向上について成果を挙げているという、故郷に根差した人材育成の取組について紹介があったが、それに対して、キャリア教育は中高の連携が課題という声もあり、議論は深まった。また、都市部の子どもの体験活動の機会を確保するために、校庭づくりを工夫している等、それぞれ地域の状況には違いがあり、地域の特性を活かした取組をシェアすることで白熱した議論が展開された。
B-3★学校・家庭・地域の連携(コミュニティ・スクール含む)③★
教師・生徒の意識、地域と学校をつなぐ人材の不在等、主に各学校単位での課題が挙げられた一方、「地域単位の課題と学校単位の課題が混同しているのではないか。」との助言があった。併せて、「問題は目的・手段関係をどう位置づけるかに帰着し、行政の役割は各々の地域に地域連携の最適解を出してもらったうえで、それを全力でサポートしていくことではないか。」と総括がなされ、地域における専門的人材の在り方については、「専門的人材の募集には(特に地方では)人が集まらないため、長い目で育てていくことが大切ではないか。」との指摘があった。
C-1★新学習指導要領に向けて等①★
「新学習指導要領は実は自由度がかなりあるということの周知が不十分。改革を阻害するものであるという勘違いをしている改革派も未だにいるし、現状維持派からは改革をしない良い言い訳に使われてしまっている。」という意見が出た。またカリキュラムマネジメントに関しては「カリキュラムマネジメントが年間計画を作ることが目的となってしまい、教職員が計画づくりに時間を浪費してしまっている。」とのコメントがあった。最後には「優秀な教師を増やすことが急務。研修に力を入れるよりも、最初から優秀な人材を採用する方が効果が高い。」という指摘もあり、大学での教員養成過程と初任者研修の接続の重要性などにも話が広がった。
C-2★新学習指導要領に向けて等②★
新学習指導要領についての課題を書き出しながら、その課題の深堀を行った。特に焦点化したのは、教師の多忙化。教師の時間的余裕が今以上になくなれば、十分な準備をできないまま授業に臨むことになり、授業の質の担保ができなくなるのではないかと課題が明確化された。この点、ICTの活用や業務効率化、産学官の連携などで、できる工夫はあるのではないかとの意見があった他、もっと抜本的な制度や仕組みの改革が必要ではないかなど議論が行われた。
C-3★新学習指導要領に向けて等③★
新学習指導要領が目指す深い学びは、追究すればするほど教科を超えてゆくが、現行制度が教科別であったり入試等で評価される学力が昔から変わっていなかったり目指す学びと現実とに矛盾があることが共通認識として挙げられた。その上で、学校教育において理想的な学びの場を実現するために、学校が「そもそもの学びとは何か」を考えるきっかけを作る場であること、「多様化する世の中と均質的なシステムである学校とのギャップ」を埋めて子どもたちの気づきや内発的な考えを生み出すこと、学校外のリソースを積極的に活用すること、小・中・高と「楽しみながら学び続ける」力が評価される仕組みを構築することなどの積極的な意見が出された。
● ワークショップ②(中長期的ビジョン)は、未来の社会や学校についてビジョンを共有するとともに、その実現に向けていま何をすべきか等を議論した。テーブルごとの議論の概要は次のとおり。
➢グループⅠ:未来の教育の議論においては、学校教育を変えていかなければならないという流れが強すぎて、変えてはいけない「不易」の部分をきちんと考えられていないのではないか、「こういう社会が来るから、こういう力が必要」という議論をし過ぎずに、時代が変わっても本質的に学校で何を教えるべきかという議論をすることが必要ではないか、という共通の認識に至った。そこで、今も昔も変わらずに必要とされ、学校が教えるべきこととして、想像力と創造力、主体性、思考力、コミュニケーション能力等があげられた。最後に、教師の質向上はこれから欠かせないため、社会における教師のステータスを上げることが必要ということが指摘された。
➢ グループⅡ: 2030年予測不可能な未来において、学校が無くなっているということはあるのだろうかという問いから議論がスタートした。AIが取って代わることのできない教師の役割について議論がなされるうちに、「やり取り」というキーワードが出て、学校教育の役割とは子どもたちの「やり取り」を支え、その力を育むことではないか、という気づきがもたらされた。「やり取り」という役割がある限り、学校は無くならない一方で、学んだパーツが一つの体系として見直され再編成される場としての役割がこれからの学校教育に求められるだろうという結論に至った。また、今後はとりわけ18歳時の教養が重要であり、大学に入った後の学びに耐えうるだけの基礎的・総合的な素養を蓄えるために、総合的に物事を学ぶことが必要であるという観点から、高校の総合学科の必要性と潜在的可能性についても議論がなされた。
➢ グループⅢ:少子高齢化や過疎化によって学校の統廃合が進むことが予想されるが、学校は地域における核であり、廃校によって地域の活力も失われる。そこで、未来の学校には社会教育施設等の機能を兼ね備えるよう複合化していくことが求められるのではないか、という議論がなされた。また、教師のなり手もさらなる減少が予想されるため、学校の働き方改革を進め、魅力ある学校づくりが大切であるとの議論もあった。
➢ グループⅣ:教科学習の是非、教科横断的な学びの重要性、現状の教科書の問題点、Edtechや学校建築などの具体的な議論から始まった。次第に、市教委・県教委による二重行政の弊害や文科省が「がんばる」(ex.全国一律の制度を作る)ことの是非といった教育行政のガバナンスに対する問題提起、そして「日本全国どこでも一律」という日本型教育を転換する時期が来るのではないかといった総論的な議論に広がっていった。
➢ グループⅤ:教師の質・役割の視点に立った議論に意見が集中した。「教師という職業への門戸を広げるべき。小学校段階であれば教員免許は必ずしも必要ではないのでは、という極端な意見も視野に入れた抜本的な検討を行う段階に来ているのではないか。今の教員採用試験の倍率をみていると、今後に不安を感じる。」との意見が出た。また、「一見特段問題のないように見えるものの、情緒面に課題のある児童生徒が増加しているのではないか。」との問題提起があり、その対応に向けた体制整備が必要との指摘がなされた。
➢ グループⅥ:2030年の社会に対して様々な予測が出されたが、結局のところ「分からない」というのがグループの総意であった。その上で「予測できない時代において、新しい職を作り出せる能力を育成することが重要。」との指摘があった。2030年の教育に関しては、AIによる学習指導や、学習ログの蓄積を活かした個別学習などが普及するとの意見があった。またデジタル化が進む一方で、直接体験への揺り戻しが起こる可能性もあるのではないかと指摘があった。
➢ グループⅦ:異常気象の中、学校としてどう子どもたちの命を守っていくかという話題から議論が始まった。議論が進むうちに、「スクラップ&ビルドの必要性は理解できるが、とにかく「やめる」決断ができない現状がある。それを打開するためにも、職員室で「なぜやっているのか」「どうしてやるのか」が議論されるコミュニケーションが交わされるようにするべきではないか。」という意見が出た。職員室で自由闊達な議論がなされれば、教室にも波及することから、管理職として仕組むことが大事であり、またアシスタントやサポーター等を増員して教師をサポートさせることも選択肢としてよいのではないかといった議論がなされた。
● その後、感想をシェアし、1日目を終了。2日目は、どのようなアクションについて検討するかをプレゼンし、それを踏まえて、刺激を受けた教育長・校長とのフリーセッションを行った。最後に、グループごとにアクションプランとどのような人と繋がりたいかを表明していただき、第一部を終了。
※第二部の様子は近日公開予定。