見出し画像

教育長・校長オンラインプラットフォーム2020イベントレポート

本レポートのポイント

3月8日に教育長・校長プラットフォームとしては初となるオンライン開催を実施。テーマは「新型コロナウイルス対応や一斉臨時休業措置に伴う諸般の対応について」。
 
14名の教育長・校長をはじめ、総勢80名が参加。参加者の6割がオンライン会議は「初めて」「初めてではないが一桁回数程度」という中、オンラインは地域や国といった物理的な距離を克服するのみならず、様々な場面で効果的に活用できる可能性を実感できたとの声があった。

議論では、一斉臨時休業となってから約一週間を終えた当事者のリアルな対話がなされた。今回の対応を巡っての現場の率直な困りごと、教育の質と公平性の確保の両立の困難さ等の地に足のついた議論に加えて、「教育の新たな展開を考えざるを得ない状況に追い込まれた。これがイノベーションに繋がる。」との前向きな声も学校現場の方からあった。


 去る3月8日(日)、教育・学びの未来を創造する教育長・校長プラットフォーム(以下、プラットフォーム)としては初のオンライン開催となる「教育長・校長オンラインプラットフォーム2020」を開催いたしました。

※オンライン開催に至る経緯からお読みになりたい方は「(6)オンライン開催に至った経緯」から。

 教育長・校長14人をはじめとした、総勢80人による、とてもオンラインとは思えない、熱気と思いが画面からあふれ出てくるような、活発で真剣な対話が行われました。

(参加人数の内訳)
教育長・校長:14人
教頭・副校長:4人
教職員等:10人
公務員:5人
民間・NPO等:20人
事務局:27人

 オンライン開催という初の試みを通じて、今後のプラットフォームの新たな可能性を感じられた一方、改善すべき点など多くの教訓も得られたところです。

 本レポートは、当日の様子を広く共有するために、アンケート回答をもとに作成したものですが、それに加えて、ご指摘いただいた課題等についてもご紹介させていただき、今後のより良い運営のための大切な「記録・記憶」としたいと考えています。


(1)教育長・校長オンラインプラットフォームのプログラムについて

 当日は、「新型コロナウィルス対応や一斉臨時休業措置に伴う諸般の対応について」というテーマについて、
・同じ属性(例えば学校現場同士など)の皆様による議論と、
・全ての参加者によるランダムグループによる議論を
行いました。

画像3

 実際の議論には、「zoom」を使い、各参加者は画面上で全員顔を出した上で、4〜5名の少人数グループでの対話を行っています。
 ここからは当日の様子を写真や参加者から寄せられた声を含めてご紹介いたします。


(2)オンライン開催における議論の様子

 論より証拠、オンライン開催における議論の様子については、その実際の写真と参加者の声をご紹介いたします。

画像4

※開始1時間前に実施した「zoom初心者講習」の様子。zoomへの不安をなくしました。拍手やいいね!を通じて、話している内容への共感を伝えます。

画像5

 参加者のうち、オンライン会議が「初めて」の人が全体の2割弱、「初めてではないが一桁回数程度」の人も合せると約6割がオンラインという手法に慣れていない中ではありましたが、アンケートでは、

・やってみたら、便利
・同じ場所にいなくとも、大勢の方と議論等ができることを初めて体験した
・発言する方の顔も見られて、身近に感じることができた
・全国の方と瞬時に繋がることができた

など、オンライン会議の経験が少ない方達も前向きに捉えてくださっている様子がうかがえました。

 また、

・お手軽でいい。旅費や移動時間を考えたらこれが良い!
・教育長も校長も地元を離れが難いこともあるのでオンラインが良い
・地域によるハンディを感じていたため、今回のようなオンラインプラットフォームはありがたい試み
・参加コストが下がるので、参加しやすい
・越境できる優れた手法
・時間と距離を超える有効なツール
・遠隔地の先生方とスムーズにやりとりができ、ものすごい可能性を感じた
・今後、さらに活用の幅が広がっていくと思った
・とても良いオンラインの場だったので、例えば保護者との対話にも応用が効くと思った
・地域差を意識することなく対話できる
・国内だけでなく海外にいらっしゃる日本人も参加していただくことでよりグローバルな視点で教育のあり方を議論できるのではないか

という意見があったように、オンラインという手法が地域や国といった物理的な距離を克服するのみならず、様々な場面で効果的に活用できる可能性を実感することができました。

 事務局としては今回、オンラインという手法を対面と比較してどうか、と考えてしまっていましたが、アンケートでは、

・対面と比較するのではなく、対面は設定できないけれどオンラインならできる、というメリットに注目すべき
・多様な意見収集や現状把握には非常に有効

というように、対面参加と一概に比較するのではなく、それぞれの利点を活かした議論の在り方、テーマ設定、ファシリテートの在り方等についても、検討していくことが必要との示唆をいただきました。

 一方、

・ふせん等が使えない中、意見を集約しまとめていくのが難しい
・悩みを打ち明け合うだけで終わってしまった気がする
・終わった後に、少し話したいとかネットワーキングが難しい

など、議論の深みを出していくことへの難しさの指摘や、本番前後の当事者同士のコミュニケーションの時間がないといったデメリットの指摘もありました。

 また、大変印象的だったのが、

・情報交換や討議はオンラインで十分な気がします。対面では…何をしましょう。対面だからこそよいものを取り入れていかないと研修等の意味がないように思います

との意見です。オンラインを経験したことで、あらためて対面の価値を問い直すという思考をおそらく多くの方がされたのではないか、と感じています。


(3)新型コロナウィルス対応や一斉臨時休業措置に伴う諸般の対応について

 当日のテーマ「新型コロナウィルス対応や一斉臨時休業措置に伴う諸般の対応について」では、一斉臨時休業となってから約一週間を過ごした当事者の皆様のリアルな対話がなされました。

 対話の内容は千差万別ですが、一人ひとりの実践者の皆様が思い悩みながら子供たちのために何ができるのかを真剣に考え実行されている姿を拝見させていただき、事務局やスタッフも胸にこみ上げてくるものがありました。

 「答えは現場にある」がこのプラットフォーム創立以来の最も重要な根本理念ですが、あらためてそのことを学び、その重要性への確信をあらためて持つことができました。

 ピンチはチャンスとばかりに

・この機会に前向きにやれることがあるのではないか
・教育の新たな展開を考えざるを得ない状況に追い込まれた。これがイノベーションに繋がる。

という積極的な声が多く聞かれたことも非常に印象的でした。
 
 その中で、

・ICTを積極的に活用して、この難局に活路を見出すべき。できるところから進める。

という意見の一方で、

・家庭のICT環境の格差や公平性の確保とのバランス
・(学校開放を行っている学校で生じているという)子どもの質問に答えたくなってしまうが、それに当たり、家庭にいる子どもと学校開放に来ている子どもとの間の公平性の確保のバランスをどう確保していくか

といった切実な問いかけもあり、教育の質と公平性の確保の両立がいかに難しいかといった根源的な対話もなされました。

また、

・学校と家庭での遠隔授業、教材提供など、これまでの積み重ね不足でスムーズにできない現実がある
・今後の未履修問題をどう考えていくか
・オンライン学習等のテクノロジーの光と影
・児童生徒の日々の小さな変化が 把握できないことは大きな不安

といった今回の対応を巡っての現場の率直な困りごとも、ここには書き切れないほどたくさん共有されました。

 一斉臨時休業措置に関して、学校現場でリーダーシップをとってきたご参加者の皆様は、この数週間、なかなか個人的な感情や想いを語る機会はなかったのではないかと思います。
 そのような中、このプラットフォームの場で、肩書をはずして、各自が安心安全な環境の中で、それぞれの「イマを共有する」「イマを尊重する」、そしてそれぞれが「イマできることを考える」というコンセプトで対話できたことは、いろいろな想いを抱えながらも、なんとかこの機を前向きに捉えていく、という発想の転換のきっかけとなったというメッセージもいただきました。

画像8

また、

・今回の議論において、コロナウイルスというピンチをチャンスに変えるという意識の持ち方を共有することで、心持ちを少しでもプラスの方向に持って行けたのではないかという意味で、これほどに素晴らしい会議があるのだなと感銘を受けた
・こういう時だからこそ、学校とは何かという問いに向き合えた

という意見には、事務局としても、開催の妥当性について一抹の不安を抱えながら当日を迎えただけに、大変励まされました。


(4)オンライン開催の課題について

 オンライン開催に当たっては事務局の方にも不慣れな点等があり、種々課題が散見されることとなってしまいました。はじめに、ご不便等をお感じになった全ての皆様に事務局としてお詫びを申し上げます。
 一方、課題としてご指摘いただいた点は今後の改善のヒントです。事務局自らが感じた課題も加え、課題及びその改善方策の案について、検討段階のたたき台のようなものではありますが、共有させていただきます。

図


(5)その他、オンライン開催の可能性やプラットフォームの今後について

 当日のテーマ以外にも、今回のオンライン開催を受けての感想や可能性の提言、さらには本プラットフォームの今後の発展に向けたオンラインの活用方策といった意見もあり、事務局としても重要な学びの機会をいただきました。この場を借りて御礼申し上げます。

・地域等を超えて議論を活性化していく、プラットフォームの可能性を感じた
・リアルな対面にも意義があるが、時間的・金銭的なことを考えるとプラットフォームを広げていくために有効である

という意見には、今後、オンラインという手法も積極的に活用していけるのではないか、それによって火種がさらに共有され、拡がっていくのではないかという思いをあらたにしました。

また、

・体験して初めて、GIGAスクールが現実として想像できました。やってみると便利なんですね。

という率直な感想もいただき、この日の経験が多少なりとも実際の学校運営への一助となれるかもしれないとの喜びを感じました。

画像6

画像7

※オンラインでの集合写真!移動コストゼロで地域等を超えた対話が実現できました。


(6)オンライン開催に至った経緯

 最後になりますが、この度のオンライン開催に至った経緯について、改めてここでご説明させていただきます。

〇当初私たちが思い描いていた2020年総会について

 当初、2020年総会としては、各分野で優れた教育実践を行なっている教育長・校長から話題提供をいただいた上で(6テーマで7名の教育長・校長を予定:話題提供予定者)、参加者全員が主体的に議論に参画し、より良い教育実践の実現を探求することができるよう、質・量ともに充実した議論を行う「場」を設ける予定でした。
※なお、今回のアンケートにおいて「落ち着いたタイミングでもともとのテーマでの開催もご検討いただけるとありがたいです」とのお声を頂戴しましたので、事務局の方で検討させていただきます。


〇第1の転機:オンライン開催への挑戦(参加予定者への2月22日(土)のご連絡時点)

 しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、開催の在り方について検討したところ、
・想定を上回る大変多くの方からの参加希望をいただいたこと、
・多様で充実した話題提供を踏まえた議論が行われ、参加する全ての方がより良い教育実践を模索する数少ない機会であること、
等に鑑み、事務局としては開催への思いを捨てることはできなかったもののの、

 一方で、

・学校現場における教育実践に責任を負っている皆様
・各界・各地域でそれぞれの職責を果たされている皆様
等が、全国から多く参加予定であることを踏まえると、仮に対策を十分に取ったとしても、感染拡大に対する安全性を確実に保証することはできないことから、大変残念ではあったのですが予定していた対面での形の開催は見送らざるを得ないとの結論に至りました。

 しかし、事務局としては、上記の思いや多くの参加予定者が予定を押さえてくださっている現状等を受け、「オンラインでの開催」へと移行することとし、その設計等について、検討を深めることにいたしました。これは、オンライン開催が、地域等を超えてプラットフォームでの議論を実現するという将来的な可能性がある手法であることを見据え、この機会にチャレンジしたいと考えた末の結論でした。


〇第2の転機:全国一斉臨時休業を踏まえたテーマの設定「新型コロナウィルス対応や一斉臨時休業措置に伴う諸般に対応について」(参加予定者への3月1日(日)のご連絡時点)

 オンライン開催への移行を決定した上記第1の転機時点では、当初の話題提供者の中から数テーマについてオンラインで話題提供をいただき、それも踏まえ各参加者が深掘りをしたいテーマについて関心が近い者同士で少人数グループでの議論を行っていただく形を模索していました。

 しかし、先般の学校一斉臨時休業要請等により、話題提供をお願いしていた教育長・校長ご自身をはじめ参加者の中核である学校現場における皆様が、諸般の対応にまさに直面されている現状を踏まえ、事務局にて改めて議論をした結果、当初想定していた話題提供を踏まえた議論という形を実施すべきではないとの結論に至りました。

 また、開催自体を巡っても、そもそもこのタイミングが適切なのかという議論もありましたが、熟議の末、まさにこの事態に直面している学校現場の方々に少しでもお役に立つ可能性があるのであれば、そのような場を提供させていただきたいと考えるに至りました。

 地域や属性、所属等を超えて、学校現場の皆様の実践を共有し合うことこそ、「答えは現場にある」というプラットフォームの原点ではないかと考え、テーマ設定を「新型コロナウィルス対応や一斉臨時休業措置に伴う諸般の対応について」として、開催することとし、3月8日を迎えました。

 この日に至るまで、事務局の中でも様々な意見をぶつけ合い、開催の妥当性について一抹の不安を抱えながら当日を迎えた、というのが正直なところです。

 参加者アンケートでは回答いただいた全ての方から「経緯やテーマ設定について妥当であった」と仰っていただけたことは大変ありがたく思っておりますが、今後のより良い運営に向け、ご意見やご指摘等ございましたら、事務局までお寄せいただければ幸いに存じます。


(7)結び

 今回の「教育長・校長オンラインプラットフォーム2020」は、事務局としても初めての挑戦であり、ご参加の皆様のご協力があって初めて創り上げることができたものです。温かく見守っていただいた皆様には、感謝でいっぱいです。

 「教育・学びの未来を創造する教育長・校長プラットフォーム」はこの春、3年目を迎えました。今回の「挑戦」を活かして、教育長・校長プラットフォームとしても次なる一歩を踏み出していきたいと考えています。今後とも、ご指導のほどよろしくお願いいたします!


編集後記
 アンケートでは、事務局への温かな応援と期待を数多くいただくとともに…同じくらいたくさんの皆様から、激務や睡眠・栄養不足をご心配いただきました(オンライン上で伝わるくらい、私たち事務局の顔色が悪かったのでしょうか?笑)。心身の健康に気を付けながら、引き続き皆様とともに、教育・学びの未来のために頑張ってまいりたいと思います。どうぞこれからも、教育長・校長プラットフォームをよろしくお願いいたします!

いいなと思ったら応援しよう!