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011写真屋さん高すぎる 本当に?
学校写真のエキスパート 田賀谷浩です。
いつもご愛読くださりありがとうございます。
前回に引き続き 学校写真の販売価格についての一考察です。
ひょっとして安すぎる?
学校写真の単価はいくらくらいでしょうか?多少の差はおありでしょうが、スナップの場合 L判でなら粗方100円台の前半から半ば、2L判では200〜300円台あたりではないかと思います。
一昨年ですが東京マラソンを走りました(半分歩いたけど)。記念に購入した写真は2L判でしたが1枚2,200円。さらに大きなサイズも販売していて物によっては万単位の商品もありました。販売しているサイトは、実は弊社で学校写真販売に利用している会社の運営です。システムが一緒ですから販売原価も一緒、で価格が10倍(!)。35,000人の参加者全員が買うわけではありませんが、3%しか買わなかったとしても対象者は1,000人以上。1イベントの販売で千万単位は売り上げるかと。はっきり言って「儲けすぎっ(笑)」。
冗談はともかく学校写真の利益不足の補完をイベント系の販売でしているのかな とさえ思えます。
昔と今では?
弊社では昭和時代のスナップを90円で販売していたと前回申しましたが、現在は140円です。40年間での上昇率は55%。他の物価の変化と比較してみていただいても決して高い数字ではないと思います。
経営ベースで考えるならどうでしょうか。
40年の間に児童の在籍数は全国ベースで1,100万から650万に減っています。一人当たりの購買数が同じだとして単純計算すると
140×650/90×1,100=0.91(倍)
顧客数の減少にともなって売上総額は1割弱減っています。
40年前と同額の売上を上げるなら
90×1,100/650=152(円)
と、単価のアップは充分に足りていると言えない事になります。
学校写真は最初から安め?
同業者で顔を合わせると、昭和な頃から「学校は儲からなくてねぇ」と口を揃えて言っていました。他の商品より安価な価格設定ですから。
ちょっと専門に偏った、ほとんどが想像の話であることをお断りして。
草創期の写真は1枚ずつしか撮れず、しかも高価で気楽に撮れるものではなかったので全員で写ってが一般的でした。しかも拡大プリントをする技術も乏しかったので、必要な写真の大きさの感材(フィルムや乾板)を使ってプリントは印画紙を現像済みの感材に押しつけて焼き付けをする版画のような作り方でした(業界用語では密着焼きといいます)。
だんだんと特別な時にはみんなで写真を撮ることが一般的になると、学校の行事でも写真が欲しいという需要が生まれました。
家族や友人と撮る写真は1枚の感材からせいぜい数枚しかプリントを受注出来なかったのに対し、学校行事は写っている生徒の数だけ何十枚とプリント出来る。写真屋さんからみると非常に効率的な仕事なので割安な価格設定をしたのでしょう。
悪いのは写真屋さん自身?
その後「義務教育は無償」の概念の浸透も手伝ってか、教育に関わるものは教材でも給食でも市価より割安であるべきと思われるようになったのに乗じて、写真も安いのが当たり前という概念が定着したように思われます。業者側も値上げを口にすると取引を断られるんじゃないかと恐れた事もあり(実際に学校側が強気だった時代がしばらく続きました)、デフレ基調に少子化も相まって売上も利益もすっかり上がらなくなってしまいました。
自戒の念も込めてですが、相手にどう受け止められても適正な価格を主張するべき時にはきちんと主張してこなかったツケでしょうね・・・。
今年になってからとみに 入学式の撮影者100人募集とか 運動会の報酬についてとか 果ては修学旅行先での窃盗とか 学校写真に絡んだネガティブな話題が世間を賑わせていますが、貧すれば鈍す。儲けが薄い業界は勢い関わる人間の質の低下を加速します。突き詰めていくとすべての遠因が学校写真業界の利益率の低さにあるように思われてなりません。
その件に踏み込むのは次回以降にさせていただき、今回はこの辺りで。
最後までお読みいただきありがとうございました。