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034今日は七五三

卒業アルバムと学校写真のエキスパート 田賀谷浩です。
今回もお目通しいただきありがとうございます。
タイトル通り 11月15日は七五三の日になります。昨今はこの日に拘らずお祝いをなさる方が多くなりましたが、ちなんだ事柄を綴ります。

そも なぜするの?

今では考えられない事ですが、昔は子供の死亡率が非常に高かったのです。たった100年くらい前でも5歳を迎えられない子が3割を超えていたとも言われており、前日に元気よく走り回っていた子が翌日ぽっくり亡くなってしまうことも。そのため幼子は「神様からの預かりもの」と考えられていました。なので、ある一定の年齢になるとその年に合わせた形で「この年齢まで生きながらえて良かったね」と祝っていたのが起源です。

・3歳:髪置(かみおき)
鎌倉時代から江戸時代まで行なわれていた、子供が髪を伸ばし始めるための行事です。毛が太くなるようにと子供の髪をカミソリで剃り坊主頭で育て、公家では2歳、武家では3歳から髪置をきっかけに伸ばし始めていました。
現代では、主に3歳の女の子の成長を祝う儀式となりましたが、地方によっては男女ともにお祝い着を着せる習慣があります。

・5歳:袴着(はかまぎ)
平安時代にはすでに行なわれていた初めて袴をはく儀式で、皇室では、現代においても男女ともに袴着(ちゃっこ)の儀が行なわれています。
この年になればもう軽々に亡くなることはないだろうという意味合いも込めて男女ともに実施されていた儀式でしたが、江戸時代以降には5歳の男の子の成長を祝う儀式へと変わっていきました。

・7歳:帯解(おびとき)
大人と同じ着付けにするために、子供の着物の付け紐を外し、初めて帯を締めてあげる儀式です。今では結び帯が一般的になりましたが、昭和の終わり頃辺りまでは予め結びの形が出来た付け帯で祝うのが一般的でした。かつては男女ともに9歳で行なわれていましたが、江戸時代後期になると7歳の女の子の成長を祝う儀式へと移り変わっています。

どの年のお祝い着も元服を迎えるまで(概ね15歳くらい)は子供としての扱いなので、裄(ゆき)丈を腕の長さに合わせる肩揚げと、着丈を身長に合わせて腰揚げを必ず施して着用するのが決まり事です。

そも なぜ今日?

徳川綱吉の息子・徳松が非常に身体が弱い子供だったので、健康祈願をしたところ、5歳まで無事に育つようになったそうです。その日が11月15日だったので子供の健康を祝う七五三の日になったという説が一般的

さらに旧暦の11月が陰陽道の「一陽来復」という縁起の良い月だった

11月15日が鬼が出歩かない「二十七宿の鬼宿日」なので、婚礼以外のお祝いをするには吉日だった

11月はその年に得られた実りを神様に感謝する新嘗祭が執り行われる月で、満月である11月15日に収穫と子供の成長の両方を感謝し、神様の加護を祈るようになっていた

いくつかの事由が重なり合ってこの日がお祝いの日になったようです。
今では誕生日に合わせたりと11月15日に拘らない場合が増えて来てはいますが、お祝いする時期がずれても由来くらいは次世代以降にも語り継いで欲しいものです。

実年齢?数え年?

うちの実例で申し上げれば95%以上が実年齢でお祝いされています。7歳のお祝いは学校に上がると水泳指導などを理由に髪を切る事もあるので就学前に という方もおられますが、大半は就学後に一年生で7歳、年中組で5歳、3歳になる(なった)年に3歳のお祝いをされる方が一般的です。
その次に多いのが、満7歳の姉と満4歳の弟や満3歳の妹に満4歳の兄など、きょうだいどちらかに合わせてもう一人が数え年で というパターンです。

現在の太陽暦が施行される前は新月から次の新月までがひと月だった事もあり、一ヶ月が28〜29日でした。何年かすると季節がずれてしまうので、閏月を途中に挟んで一年を13ヶ月にしていた年もあり、今日が産まれた日と特定することが叶わないので元日で一歳年を取る事にしていました。それが数え年という概念です。しかも産まれた年が既に1歳でしたから数え年で3歳というのは満年齢で言うと未だ1歳か2歳。子供というより赤ちゃんに近い年でした。

写真を撮る立場からのアドバイスとしては、やはりひとつでも年齢を重ねていた方がより豊かに表情を出してくれるので、特に幼少の年齢のお祝いについては実年齢の方をお奨めはしています。

しつらえにはどんな意味が?

これは何?という独特のしつらえがそれぞれの年齢の衣装にありますが、全部意味がある物です。呼び方ともどもいくつご存知でしたか?

肩揚げ・腰揚げ(かたあげ・こしあげ 全年代共通)
先ほど触れた「まだ子供」という印なので必ず施します。昔は両方とも縫い上げでしたが現在では腰揚げは着付けの際に紐で取る場合が多いです。

被布(ひふ 3歳)
ベストのような袖無しの服で純粋に寒さ避けの防寒着ですですからかわいいからと無理して着続けさせず暑がったら脱がせてあげてください。ちゃんと三尺(さんじゃく・帯代わりに腰を締めている長布)を締めていますから、まだ暖かい時期にお祝いされるのであれば着せる必要もないものです。

羽織(はおり 5歳)
これも元々は防寒着ですが、男性の場合は常に着ているのがマナーなので基本は脱がさずに過ごしてください。

懐剣(かいけん 5歳)
袴と共柄の布が巻かれている袴に挟まれているものです。守り刀です。

扇子(せんす 5歳・7歳)
5歳は白木の白扇で袴に、7歳は色塗り房付きで帯留めに差してあります。ちゃんと開くしつらえなので暑い時は扇ぐことが出来ます。写真を撮ったりするときに持たせたくなったら必ず右手で持つのが決まり事です。

筥迫(はこせこ 7歳)
胸元に挿してある長方形の箱形の小物。外に刺さっている金属のものは髪に差すかんざしを模したもので、お洒落に目覚める年頃を表すしつらえで今風に言えば化粧ポーチです。落としやすいものなので帯揚げに巾着状の飾りを挟んであげると胸元から落ちても地面に落ちにくくなります。

ぽっくり(7歳)
舞妓さんが履くような背の高い履き物。歩くと独特の音を醸す。背も伸びて大人びるも歩きにくいのが難点。

ひとつ残念なのが・・・

和服を召される機会がほぼ無い現代なので致し方ないと言えばそれまでですが、日本独自の装いである和服の用語がどんどん死語になりつつある事です。うちのお店にお越しのお客様でもこのように言い間違いなさる方がちらほら・・・。

着物が「洋服」???
子供に洋服汚れちゃうでしょ」のような言われ方の親御さんがちらほらと。着物と言いつけていなくても せめて「服」とおっしゃっては?
袴が「ズボン」???
うーん 確かにボトムスではあるけれど・・・。
草履が「靴」???「サンダル」???

ぞうりが通じない場合があるので大概は「はきもの」と申し上げています。
足袋が「靴下」???
うーん まぁそうですけど・・・。

私自身 高校生の頃に恩師から「海外で日本の文化をちゃんと話せる大人になりなさい」とたしなめられました。せっかくお召しになる機会ですから生まれ育った国の文化である和服の用語をひとつでも覚えていただく良い機会にしてはいかがでしょうか?


ということでだいぶ蘊蓄を述べさせていただきました。ご参考まで。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。


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