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076卒業アルバムの危機を救いたい

卒業アルバムと学校写真のエキスパート 一級写真技能士の田賀谷浩です。今回もお目通しいただきありがとうございます。

永きに渡って構図のはなしを続けて来ましたが、そもこのnoteを書き始めたきっかけが、とある卒業アルバムを目の当たりにした事でした。制作者が得意先の契約をいっぺんに解除されてしまったのでクリニックして欲しいとの事で拝見したのですが、その運動会のページが徒競走のゴールシーンを一人抜きして何十人も載せている、専門業者が拵えたにしてはあまりに即物的なと言えば聞こえのいい、ぶっちゃけ単なる個別写真の羅列に終始していたものでした。
要は一つの行事ページに全卒業生を載せて欲しいという申し出に応えた結果なのだそうですが、写真同士の空き(専門用語ではセパレーションといいます)に統一感も無いプロらしからぬレイアウト、しかも地方都市なのに東京より高い単価。この構成では契約を切られても仕方ない、と申し上げざるを得ませんでした。

ここ数年の推移を見るに、卒業アルバムは岐路に立たされているように感じます。ウェブ上には様々なテンプレートを展開する格安制作サイトがある御時世で、撮影にしてもピントも露出も合った、さらにはベストなタイミングですら保護者が出来る時代となり、ややもすると「もうアルバムは業者に頼む必要がない」「保護者が格安に作ればいい」となりかねない事態ですらあるように思います。前述の方もそんな理由で契約解除に至ったのかもしれません。
そんな時勢に永年携わって来たアルバム制作者が、いったいどのように対処したら良いのか と考えた答えのひとつが専門家然とした姿勢での制作ではないか という事でした。

冒頭の方と対局とも言えるようなアプローチで卒業アルバムを制作しているのが、栃木県宇都宮市の伊東一平さんです。最初からプロならではの視点での撮影をするべく全員もれなく撮影が出来ない、そのため全生徒の掲載は出来ない前提で請け負い、専門家でないと撮れない・撮らない写真で構成された卒業アルバムを制作されています。百聞は一見に如かずなので画像を一点借りてきました。

(C)伊東一平

綱引きの場面に一人の顔も写さず しかも手前の子たちは足元しか写っていない でも力の限り綱を引いていた様子がヒシヒシと伝わる、歯を食いしばっているであろう顔が想像される 素晴らしいカットだと思いませんか?

私自身 全員もれなく撮る事で得てきた評価をかなぐり捨てる勇気が無いので(笑)、正直申し上げて彼をそっくり真似る事が出来ません。とは言いながら絵づくりのエッセンスは充分に採り入れる事が出来ますし、その絵をさらに効果的に見せる事は出来ます。そのひとつがページレイアウトに構図の要素を盛り込むことではないかと。前回まで綴ってきた単写真における構図の数々を、それぞれのページに採り入れてみたらどうなるか、試してみることにしましょう。

なるほどと思われたり参考になったと感じられたりした際には是非「スキ」をいただけると励みになります。お読みいただきありがとうございました。

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