アラン校長とマダミスのお話
マダミス制作もいつの間にやら四作目。ここらあたりで、そこそこ明確に分かってきた自分の制作の流れや癖を文字起こししておこうかと。
◆1 やりたいことが降ってくる
詳細はない。ふわっとしたイメージ。これがやりたい!というだけのアイデアが不意に降ってくる。それは導入の一部だったり、中盤の展開だったり、エンディングだったり、毎回異なる。「コレ」が手の届く範囲に降りてきたところで完成には程遠いわけだが、「コレ」がなくては何も始まらないのも事実。両手で大事に受け止めて、文字として書き留める。文字にすることで脳の端の方に自然とストックされ、シナリオ構成機関が動き始める。
◆2 シーンやセリフが浮かんでくる
例えば
――そう、あの日も雨が降っていた
前触れなく目の前に透明度50%くらいのレイヤーが現れ、雨が降り始める。シーンを描写する文章が強く脳内に浮かぶ。その主張があまりに強いときはつい口に出していることもある。私の場合、こういった現象は自転車に乗っているときやお風呂に入っているときに起こりやすい。忘れないよう何度も反芻して、スマートフォン内にメモしておく。
◆3 前後の展開を文字に起こす
浮かぶは日中、沈むは夜中。夜、部屋の電気を消して、布団に潜り込み、スマートフォンのメモを開く。経験上、その状態が最も「沈み」やすい。「沈む」というのは感覚の話で、平たく言うと文章を書くためのスイッチを入れる感じだ。日中に見たシーンを体験しているキャラクターの視点と同化して、その世界に入り込む。何が起きて、何が見えて、何を思ったか。それらを文として書き出すために深く深く沈もうとする。でも、思った通りにコントロールするのは難しい。粘っても結局書けなかったり、沈む位置がずれてそのまま眠ってしまったりする。
◆4 書いた展開と繋がるような情報の配置を考える
2や3は非常に感覚的な作業だが、感覚だけでマダミスを作れば恐らく破綻する。どのキャラに何を振るか、どこまで明かすかといったバランスは「考えて」組み立てる。フローチャート化したり、表に嵌め込んだりして齟齬のないよう組んでいく。これはこれで楽しい。
◆5 全体を書いてみる
決めた内容に沿うように最初から最後まで書いてみる。書くのは相変わらず夜だが、沈み具合は半分といったところ。表現する必要がある内容を把握しつつ、キャラクターの見ている景色と同化しつつ、文法や言葉の細かなニュアンスを意識しつつ。絶妙なバランスで浮遊できる日はなかなかないので、このフェーズで何日も止まっていることも多い。逆に、今日だ!という日に遭遇したら、数時間で全てのハンドアウトが完成することもある。言うなれば運任せ。
◆6 必要なイラストリストを作って描き始める
文章全体ができあがると、ここにこんなイラストが必要だとか、イラストで示した方が雰囲気が出るだとかを考え始める。キャラクターのイラストはこのタイミングで描いたり、もっと前に描き終わっていたり色々だけれど。タイトル画像も「見えた」ときに描くのでタイミングを問わない。文章と同じくイラストもなぜか夜の方が描きやすい。スマートフォンを手に、布団の中でごろごろ体勢を変えながら複数枚を一気に描いていく。たいていその日は朝まで溶ける。ピチチチチ……。はい、おはようございます。
イラストレーターさんに頼む選択肢もあるのだけれど、ちょっと頑張ればできることは全て自分でやるのがポリシーなので。
◆7 全てをホームページに投げ込む
ホームページの編集画面を起動して、下準備したものを適材適所に配置していく。それぞれのページが繋がるように、操作しやすいようにボタンや説明も設置していく。web謎制作も合わせるとホームページをがちゃがちゃするのは2021.5時点で五回目くらい。だいぶ編集システムともお友達になれて、イメージした通りのレイアウトができるようになってきた。大事にしているのは没入感とワクワク感、GMレスでも進行しやすいようなページ作り。時間と手間はかかるが、かわいく仕上がると私も幸せになれるのでプラマイゼロ。できあがったその日の夜はプレイヤー視点でサイト内を飛び回りがちだ。
◆8 これらは本当に自分が作ったのだろうか
制作としてできることが全て終わると急にそんな感覚へ変わる。同じことをもう一度、この作品をもう一度最初から作れと言われたら絶対に無理だと、毎回そう思っている。完成するまでは盲目的に走り続けているが、終わってしまうと何をどうやってそこまで来たのか分からなくなる。
案外、博打的に、綱渡り的に作っているのだと、そんな言葉でこの書き散らしを締めておこうと思う。
おわり
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