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ものづくり企業としてのサステナビリティ戦略を探る 第3回 - すべての製品にデータシート!市場が求めるのは透明性?
こんにちは!引き続きインダストリアルオートメーション事業部で修行中の水野です。
「ものづくり企業としてのサステナビリティ戦略」をレポートするこの記事も、第3回となる今回が最終回となりました。(第1回、第2回の記事はこちら)
これまでの流れと今回のテーマ:環境に配慮した製品の透明性
第1回では、「シュナイダーにとってのサステナビリティとは?」というテーマで、シュナイダーが企業として目指す姿やビジョンの観点からその独自性を紹介し、第2回では具体的に製品開発でその考え方がどう生かされているかを深堀しました。また、環境に配慮した製品設計では、有害物質規制への対応や専門機関による検証を行い、提供の際には環境への負荷に関する情報を開示することで透明性の確保にも努めています。
そして、この度シュナイダーではすべての製品に環境に関する情報を記載したデータシートを公開する新たなプログラムが始まりました。
企業にはサステナビリティに加えて、それを証明する情報の公開として透明性が求められる時代にシフトしています。それに伴い始まったこのプログラムですが、実際にお客様はシュナイダーのこのような取り組みをどう捉えているのでしょうか?今回の記事では、これをテーマに、お客様のニーズを一番近くで聞いている営業のメンバーにインタビューしました!
今回取材した先輩:
インダストリアルオートメーション事業部 東日本産業機械営業部
井上部長・佐藤さん・矢崎さん
東日本産業機械営業部は東日本に所在する、半導体製造装置をはじめとした日本を代表する装置メーカーを担当している部門です。半導体の業界は他の業界と比較しても環境系の規格や情報開示の水準が高いため、そのお客様をメインで担当する先輩に話を伺いました。
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本題の前にシュナイダーの環境に配慮した製品提供と情報開示の歴史のご紹介
実はシュナイダーでは、2003年にEUで有害物質を規制する指令が発行されたことをきっかけに、約15年前からできるだけ環境への負荷を抑えた製品の開発と、それを証明する情報の公開を実施しています。シュナイダーではこの取り組みに「Green Premium」(以下「グリーンプレミアム」)という独自の環境ラベルを作成し、2023年まで改良を続けてきました。
しかし、社会全体でサステナブルな製品を好むお客様が増えたことで企業によるグリーンウォッシュ*が問題となり、規制も厳格化しています。そこで、シュナイダーはお客様がより多くの情報をもとに確実にサステナブルな製品を選べるように、かつ規制の基準を超え続けるために、製品の透明性をさらに強化した「Environmental Data Program」(以下エンバイロメンタルデータ)を始めることになりました。
*グリーンウォッシュ:根拠のない表現や誇張表現によって、企業・商品・サービスなどが実態以上に環境に配慮したものであるように取り繕うこと
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エンバイロメンタルデータとは?
このプログラムでは、シュナイダーのすべての製品に環境に関する情報を記載したデータシートを公開します。これにより、お客様は当社製品の環境属性や環境フットプリントを項目ごとに正確に計測し、社内で共有することができます。そして、最終的にはお客様の製品や事業活動が環境に及ぼす影響や利点を外部に公開するお手伝いができるのです。このデータシートのすごいところは、製品ライフサイクルのすべての段階(素材から製造、使用、廃棄、リサイクルまで)で発生する環境への影響や利点をすべて反映しているところです。また、データシートは当社の製品ページやmySchneiderアプリで簡単に確認できます。
このプログラムの目的は、製品の環境に関する情報をお客様が正確に評価できるフレームワークを作ることで、脱炭素化をはじめとしたお客様のサステナビリティ実現を加速することです。さらに、グリーンウォッシュが危惧される中でも透明性を強化することで信頼性の高い企業となり、業界内の水準を引き上げることを目指しています。
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企業イメージや投資家の目を意識するような大企業にとって、環境関連を含む非財務情報はとても重要ですよね。サステナビリティへの貢献度や正確な情報の公開が企業の信頼性に直結するため、世界的な大企業ではサプライヤーによる情報開示の有無が商品選定の基準に入っているとも聞きました。
お客様は環境に配慮した製品や情報の開示をどう思うのか?
それでは、ここからが本題です。シュナイダーのこの取り組みを、日本のお客様はどう評価するのでしょうか?お客様や市場のサステナビリティの意識も含めて営業の先輩たち3人に聞いてみました。
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水野:環境に配慮した製品や、環境に関する情報の開示に市場ニーズはあると感じますか?半導体業界ではどうですか?お客様が意識するポイントは?
井上:半導体製造装置と工作機械の業界ではニーズはあると感じます。日本の半導体装置メーカーや工作機械メーカーは世界でも高いシェアを誇るため、マーケットリーダーとして、環境に対する動きは年々加速しています。半導体を作る過程では大量の電気を消費することに加え、半導体製造装置は海外に輸出する割合が高いので他業界と比較すると需要は特に高いです。以前から意識の高い業界でしたが、一部では「環境情報の開示に対応できない製品・メーカーは採用しない」など、最近は特に厳しくなっているように感じます。
佐藤:中でもお客様が意識するポイントは、禁止物質の含有です。海外向けの規制は増加しており、また順守についても厳格化されてきていると感じます。
水野:環境に関するルールや有害物質の規制は欧州や北米が特に厳しい印象です。こういう海外の動向をお客様はどう捉えていますか?
矢崎:条約・規格・禁止物質などは年々増えていて、半年に一回くらい新しいルールができたり厳しく改定されています。お客様からは、「対応できない取引先が多くなり、選べる製品が少なくなっている」と聞きました。しかし、選べないことはお客様としても不本意であることから、お客様自身のリソースを使ってでも対応してもらうために働きかけているそうです。
井上:あと、アジアですがシンガポールも厳しい印象です。この動向は今や欧州や北米にはとどまらず、その動きは地球全体で加速していると感じます。
水野:日本のお客様が求めていることは何でしょうか?
佐藤:お客様は厳格化する規格や条約にも素早く、フレキシブルに対応できるメーカーを求めています。実は、マーケットリーダーとして先陣を切る気概があるお客様ほど手探りだったりもするので、そういうお客様にとって相談できるパートナーになれたらと思いますね。また、これは業界問わずですが、サステナビリティに先進的な企業からは、情報開示について日本のマーケットで一般化された形での提出を依頼されることが多いです。これまでは依頼を断っても大きな支障はなく、ほとんどのメーカーが提出を断っていたそうですが、お客様も真剣に世界の動向を意識することが増え、対応できるメーカーが選ばれるようになってきたなと感じます。
水野:シュナイダーのこの取り組みはお客様にどう評価されると思いますか?お客様のニーズに応えていると思いますか?
矢崎:実は、現時点ですごくポジティブに評価されているというわけではありません。ほとんどのお客様は現場の人で「環境への配慮も大切なのはわかるけどそこまで…」という雰囲気です。環境に関する情報の専門部隊が誕生するなど、経営層は動向を意識していますが、それを実現するやり方はまだ模索している最中で、現場まで浸透していない印象です。
井上:とはいいながら、日本を代表する半導体装置メーカーや工作機械メーカーでは現場でも重きを置き始めているのも事実です。将来的には他の業界でも意識が高まったり、いろんな業界のお客様から価値を理解してもらったり、より多くの人に評価してもらえるようになると思います。
水野:日本の他のメーカーがやっている取り組みなどご存じでしたら教えてください
矢崎:含有物質や各国の規格に対応しているメーカーは多い印象ですが、日本のマーケットで求められる情報開示の一般的な形に対応しているメーカーは半分くらいと聞いています。このような市場動向に応えるために、シュナイダーでも環境に配慮した製品提供や情報の開示は積極的に行っているので、お客様が模索中であり、かつシュナイダーがその視点では一歩先を行く企業であるからこそ、営業としてもお客様の課題解決をサポートしていきたいです。
水野: 今後シュナイダーが取り組むべき課題は何だと思いますか?
佐藤:日本のローカルな基準で要求される情報量・形式に対応することが今後の大きな課題だと思います。シュナイダーは大きなリソースを持つグローバルな組織で、サステナビリティに関しても業界をリードする存在ですが、今回始まるエンバイロメンタルデータの取り組みにおいても、ローカルのレベルで要求される情報をお客様に提供するにはまだ支障があるのが実情です。日本のお客様の要求にも応えられるような情報を早く効率よく提供できる環境が整うことを目指したいです。
水野:ありがとうございました!
シュナイダーとしては業界をリードすべくこの取り組みを進めていますが、私がお客様にお会いした経験としても日本ではギャップがあると感じます。しかし、日本からの日本のお客様の状況や考え方の違いなどをインプットする機会も生まれています。現場を知る営業さんからは、サステナビリティを加速させるリーディングカンパニーとしての方向性は良いとのご意見ももらえたので、今後のシュナイダーの取り組みにも期待です。製造現場の環境負荷低減を考える日本のお客様から、もっとたくさんの声が届くようになればいいなと思いました!(水野)