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ポポーという果物は、幻ではなく実在した!

ポポーという果物についての雑記 および 個人的な思い出について書いた記事です。

ポポー という語感からして日本語離れしているというか、植物なのか動物なのか、それとも人の名前なのか地名なのかもわからないし、口に出しても文字で書いても、なんだか間が抜けていると思いませんか。 

そんな不思議な語感だから、私は何十年も前に目にしたこの単語を、ずっと忘れられずにいたんだと思います。

私が、初めてポポーという名前を目にしたのは小学生のときで、飛騨高山の朝市でのことでした。時季はおそらく11月。イチョウの木が、輝くようなレモンイエローに染まっていましたから。朝市には、果物や野菜や漬物なんかが並んでいたのは覚えています。「だいこん」とか「柿」とか見慣れた名前にまじって「ポポー」という手書きの文字は、そこだけうきあがるくらい不思議なものに見えました。

興味津々で、これは何かと尋ねたところ「ああ、これはアケビみたいなもので」と言われたものの、その頃の私はアケビを食べたことがなく、名前は知っていても手に取ったことはなかったし、どんな味がするのか想像もできず、アケビと聞いてもわからないまま、とにかく果物らしいということだけわかって買って帰ったのでした。

ところが、家に帰って食べたはずの、そのポポーがどんな味だったのか、私はまったく覚えていないのです。味どころか、色も形も、香りさえも。本当に食べたのかしら、と疑うくらい覚えていないのに、ポポーという名前だけは憶えていて、そういう果物があった、私は食べた、ということだけは忘れなかったのです。

それきり、ポポーという名前を目にすることもなく何年もが過ぎ、ふと思い出して聞いてみても、不思議なことに一緒に食べたはずの家族も、そんな果物知らないと言うのです。だんだん自分の記憶が信じられなくなってきました。朝市で「ポポー」という名前を見たのも、買って帰って食べたのも、幻で、そんなものはなかったんじゃないか。

そんな「幻の果物」に出会ったのは、つい先日、道の駅でのこと。

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なんと、まさに「幻の果物」ポポーでした!

ほんとうに「幻の果物」だったんですね。収穫するとすぐ傷んでしまうので流通にはむかないそう。たしかに、形はアケビみたいで、パッションフルーツのようなリンゴのような、とても甘い香りがしていました。3日以内に食べないといけないそうで、翌日の朝食にいただきました。

外側の皮は黒くなっていても中はきれいなクリーム色。ねっとりとした実をスプーンですくっていただきます。まるでトロピカルフルーツみたいな香りと食感です。

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人によって感じ方が違うみたいで、マンゴーみたいとかバナナに似てるとか、桃のようと表現する人も。すごくおいしい!という人もいれば、ちょっと無理、と思う人もいるという、なんとも表現しがたい味。YouTubeの食レポで、奈良漬のようなとか腋臭とか表現してる人もいましたが、私はそんな要素はまったく感じられず。マルメロやカリンに通じるような、甘く華やかで複雑な香りがマンゴーなどのトロピカルフルーツを思わせ、ねっとりとした食感がバナナに似ている、とは言えます。

虫もつかず寒さにも弱くはないため、育てるのは比較的容易だそうです。北米原産で、日本には明治期に入ってきました。栄養価が高く、国策として栽培を奨励されたこともある果樹だとか。貧乏人のバナナ、なんて呼び方も。アメリカでは、カスタードアップルとも呼ばれるそう。どちらも納得の名称です。

庭に植えることも多かったようで、夫がいうには、以前住んでいた家のお隣の庭にあったのがこの木ではないかと。私はあまり記憶にないのですが、庭にときどきはみ出していた枝があって、こんな実が生っていた、と。熟れるのが早く日持ちもしないので、栽培は下火になっていったようですが、庭などには残っていたのかもしれませんね。幻じゃなかった、ということです!

【追記】ジャム屋の性で、ポポーの実をジャムにしてみようとしましたが、それは幻におわりました。まさにカスタードクリームそのものといった感じの色ととろみでおいしそう?!と思いきや、生のときは甘く華やかな香りが、加熱するとネガティブな要素が際立って感じられ、ただ煮るだけでは、うまく制することができませんでした。ネットで検索すると、ポポージャムというものは売っていますし、レシピもいくつか公開されているので、おいしく作る方法はあると思われます。

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