月光

ガラス壜の中で鳴いていた
鶫の標本
電気の羽根を搏て

花を掬いとるため
水の腕がさざめきわたる時、
われわれはいかなる風の音を梢に聴くべきであろうか
緑の百合が噴き零れる花瓶や
書見台の上の一筆
それらは止まりながら晩に閉される市門の内に在って静かな瞼を降ろす
鴉どもの丘では不透明な精霊が崇められ
機械の聖母時計が胚胎のありかを示す
指はもはや柔かな植物に、枝葉に変わり
狩猟者達の永遠の収獲を、
長い眠りを騒がせるのだ
泉の畔には白いミルテがささやかな楽園をあおむかせている
この夢は長い長い夜の間歇泉であって
捧げられるべき花綱も
英傑の偶像も
今を沸騰する静寂(しじま)に月光をほころばせているのだ

恰も
時間の様に

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