失血した花

かなしみは血の緋をさげて来たるらし今宵父となりしわかものよ臍を断て 

歯冠の外何をか悼む矯正医黄昏ゆゑ林檎の実とりたがへられたりかつて

耳朶海峡を凝らしつつ聴くはらからの蔭に陽にはるかなれ沈船

機械派ならずわれもまた群盲奴婢のひとりなる韻律をかけたがへたり息絶ゆるまで

ひといきれ話の花を滔滔と聴きたし客死の一人残らず 白髑髏 

梗概も感慨もなき余生とはいくばかりありや――葡萄酢酸

慣例の検死はらわた血髄にこごりぬるみて施物乞ふるきりすと

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