燃水――晩年

ごめん、ぼくにはもう何もない
あたえられる自由が
たとえ すべてを奪っても
あなたに 見た
湖でできたあなたのひとみが
結ばれなかった
幾つもの
過去――そう、それから
空に、
<空はうずくまったまま破り捨てられている>
夢みられた人々の希望が
降り頻る
郵便
手紙の花に潤む様に

ショーウィンドウの街が
粉々に踏みにじられた日にも
街宣車から
問いかけられ
応えられた
暴動への鎮圧
――酷薄な正義に由って――が執りおこなわれた日にも
そしてこれからの旧い冬にも
街の明け暮れにも
僕の引裂かれた心臓にも
小さな灯火が揺れているから
<それは街並を焼きはらった砲火と同じもの、>

命は罪だから、
皆罪だった
生きることは罪を
麺麭の様に膨らませてゆく こと

それでも灯火をあつめたのなら
一つの道を仄か明るむ
昼の様な
夢を
夢と夢、そしてその夢の――短い一日を
覚めていることができるかも知れない

自由はそこかしこにあって
それは傷付けあっている
けれども自由は
奪い合ったものたちを
つなぐためのことづてを績むこともできるはずだから、

現実 という
醒めた夢をこえて
灯火にも
巡る
人が
たどりつく様に

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