水葬人夫

薔薇の刺靑のある右腕が
錨の縄を投げる

少年は
喉元まで癩病に愛されていた

水底に沈む嬰児の様な石達――或はサイレンのこだまたちは
排水路へと續く濁流の中
銅錆色の、
緑靑の涙をしたたらせていた

呼ぶ声――水門へと身を乗り出して狂った女が叫ぶ

――マリオ、マリオ!あなたはどこ、マリオ!!

濁流の底は、
その目を渦巻かせて
叫びさえをもかき消してしまうだろう

――復、復だ、今日も復一人、消えたって――、

朽ちた部屋へ遺された
自動仕掛けの時計人形より、
次の聖水曜日には
埃の羽根でも生え來ることであろう

錨には少年の――嬰児の亡骸が縺れ絡まり、

失踪届が提出をされる
 

あたらしい宵だ――、而して呼ばうふるいものどもは、

何処へ、

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