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代替機

先日、常日頃愛用しているLeica M2を点検に出しました。特に調子悪い箇所はなかったのですが、このM2を入れたカメラバッグを肩からかけたまま一度転んでいるため、その時の衝撃の影響が心配だったので、思い切って出すことにしました。今までLeicaの修理と言えば、WetzlarのLeica Camera AGに直接送っていたのですが(何と言っても、ここが一番近いLeica修理店なので)、一昨年ここに夫がM7の修理依頼をした時、完了まで実に8ヶ月だか9ヶ月だかかかっています。さすがにそれは長過ぎます。そこで今回はいつもRolleiflexを完璧に修理・調整してくれるNRW州にある修理店にお願いすることにしました。
昨日、修理の見積りが届きました。シャッター機構の修理とフィルムトランスポートの調整が必要のこと。昨年春鼻血もでなくなるほど資金を注ぎ込んで買ったSummicron 35mmも一緒に点検に出したのですが、こちらは「修理を必要とする箇所はない」とのお返事でした。このレンズを買ったのは長年色々とお世話になっているウィーンのカメラ店です。やはり高価なレンズは信頼できる店まで出向いた上で、スタッフと話をしながら現物を見て買い物すべきだと思いました。

M2の修理には4〜6週間ほどかかるそうです。それを聞いて、Wetzlar回避は正解だったと思いました。半年以上手元にないのはやはり寂しいですから。それにしても、私がかなり前にこのM2の修理をWetzlarに依頼した時は、確か2ヶ月程度で戻ってきたような記憶があるのですが。う〜ん…。

さて、前置きが長くなってしまいましたが、M2が留守のあいだ主に代替機として使っているのがPentax SVです。昔はNikon Fを使用していたのですが、この素晴らしいカメラは35mm判のくせに中判のRolleiflexと同じくらい大きく重いので納得がいかず、当時夫が使っていたこのPentax SVと交換してもらったのです。譲り受けた時は55mmのレンズがついていましたが、この画角では私には狭すぎるので、Summicron 35mmを買ったのと同じカメラ店から画角35mmのレンズを購入しました(この時は当該カメラ店のオンラインショップを利用しました)。

このカメラを気に入っている点は、Nikon Fより小さく軽い点、ポール・マッカートニーがかつて使っていたカメラと同型な点(もっとも彼のPentax SVはクロームではなく黒ですが)、それから手元にある2本のレンズを含め、まるで新品のように綺麗な点です。しかし、(このPentaxに限らずNikon Fにも言えることですが)Leicaに比べると目が悪い私には素早いピント合わせが難しいことが難点となって、今までほとんど使っていませんでした。それではさすがにもったいないので、M2が留守の間は集中的に使ってみることにしました。以下は昨日近所を撮影した写真です。

カメラはPentax SV、レンズはSuper-Takumar 35mm F3.5、フィルムはIlford HP5 Plusを使用して撮影しました。

Summicron 35mmと異なり、Super-Takumar 35mmは何の伝説もないレンズです。まるで新品のような状態であったにもかかわず、ビックリするほど手頃な値段で手にすることができたことを考えると、需要もなく実際に使っている人も少ないのではないかと推察します。しかし、昨日撮った写真を見て「あら、このレンズ、けっこう良いじゃないの」と私は思いました。ピント合わせが難しいと感じていましたが、1本撮って意図した場所にピントがきていなかった写真がほとんどなかったのも、我ながら意外でした。どうやら明るい屋外で使うぶんには問題なさそうです。最後の写真に写っている木は中判でもよく撮影しているのですが、その写真に見劣りしないような気さえします。

…そんなこんなで、M2が留守の間、当面このカメラとレンズに頑張ってもらおうと改めて思いました。代替機扱いしては、失礼ですよねえ。半世紀以上前のmade in Japanにバンザイ!

追記

この記事を投稿してすぐに、Amazonに注文していた一冊の本が届きました。

ポール・マッカートニーの写真集です。写真は、おそらくPentax SVで撮影したもの。ビートルズを狙いカメラを構えた人々、ビートルズの「出待ち」をしていた人々、彼らが乗った車を追いかけてくる人々を撮った写真がたくさん載っています。Rolleiflexを首から下げた人も。それにしても、あんな重いカメラを首から下げて、首、おかしくならないかな。Nikon FやContarexも写っています。笑顔もたくさん。なんとも楽しい写真集です。

そして、色違いとはいえ、ポール・マッカートニーと同じ型のカメラを使っていると思うと、学生の頃散々ビートルズを聴いたわたしからすれば、これはなかなか嬉しいことなのでありました。なお、この本、私が購入したのはドイツ語版ですが、オリジナルは英語で出版されたようです。

英語版
Paul McCartney, Eyes of the Storm, W.W. Norton, 2023
ドイツ語版
Paul McCartney / 1964: Augen des Strums, C.H. Beck, 2023
ISBN  978 3 406 80300 0