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ガイドブック

私が住んでいる地域はドイツで最も温暖だと言われています。近年の温暖化と相まって12月に気温が氷点下まで下がることは殆どないはずでした。ところが、今年は11月から寒いのなんのって。最高気温一桁どころか真冬日一直線。先週日曜日の最高気温は1℃でした。私は夏より冬のほうが圧倒的に好き、特にドイツの12月は1年で最も好きな月で毎年心待ちにしているのですが、こうなってくるとちょっと全く違うことを考えてみたくなります。…というわけで、「来年8月はどこへ行こうかな」と考え始めました。

去年、今年とイギリスが続いたので、今度は違う国へ行きたい。でも、我々夫婦は揃って暑い場所が苦手なので、夏にドイツより南へ向かうのは論外です。そこで、スカンディナビアの国々とかバルト3国など色々と迷ったあげく、デンマークに旗を立てました。10年以上前にコペンハーゲンに行ったきりのこの国。次はコペンハーゲンでないデンマークの何処かへ行きたいと思い、とりあえず何処に何があるのか知るためにガイドブックを買ってみることにしました。

私にとってガイドブックと言えば、東京から欧州に旅していた頃から変わらずLonely Planet。Amazonで注文したもののBlack Fridayによる郵便混雑と重なってしまいなかなか届かずヤキモキしました。それが昨日やっと届き、ワクワクしながらページを開いたところ、あれ?なんだこれ…。

Lonely Planet Denmark, c2023

Lonely Planetと言えば、ほとんどのページが2段組で小さな文字がギッシリ。他のガイドブックからは入手できないようなニッチな情報で溢れたガイドブックのはずでした。かつて、それこそ毎年東京から欧州に旅していた私は、一つの旅から戻ってくるや否や次の旅先を物色し始め、目的国を定めるとLonely Planetを買い、時間をかけて隅から隅まで丁寧に読んだものです。この習慣はドイツに移住した後も変わりませんでした。かつて購入したLonely Planetは今でも全て書棚に並んでいます。例えば、以下は13年前のLonely Planet。ノルウェー篇です。

Lonely Planet Norway, c2011

2023年のデンマーク篇と2011年のノルウェー篇。ひと目見ただけでもその違いは歴然としています。なんだかカラフルになっちゃって。あのLonely Planetがフツウのガイドブックに成り下がってしまった(失礼)ような気がして、正直ガックリきました。古書店サイトで古い版を探して買うかなあ…。

ただし、こんな私のガックリは案外少数派なのかもしれないとも思うのです。ほぼ毎年仕事でドイツにやって来る古い友人が、何年か前にこんなことを言っていたのを思い出しました。
「こっちの有名ガイドブックってさ、文字ばっかりで写真が少ないから、パッと見てその場所がどんな場所なのか分からないんだよね」

この「こっちの有名ガイドブック」とは、100年近い歴史を誇るドイツの老舗ガイドブックBaedekerを指しているのですが、こちらもLonely Planetに負けず劣らず2段組の細かい文字が並ぶガイドブックでした。「でした」というのは見てのとおり過去形で、Lonely Planet購入に先立ちこのBaedekerのデンマーク篇、私は本屋で立ち読みしているんですよね。そしてこのBaedekerも友人が喜びそうな方向にカラフル、かつ、私にしてみればスカスカに変貌を遂げていました。

やはり、世の中の趨勢は友人の言う方向に向かっているようです。パッと見てわかる、かあ…。文章を読みながら、頭の中で色々と想像して楽しむのは、もう時代遅れなことなのでしょうか。何だか寂しいなあ。