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香り演出家の裏話〜蜷川実花ワールド・香りができるまで「映画ホリック xxxHOLiC 表裏世界没入展」

こんにちは。

香り空間プロデューサー、郡(こおり)香苗です。

noteでは、香りの演出ウラ話、香りを仕事にするためにやったこと・やらなかったこと、私が最近気になっていることなどをお伝えしたいと思います。大・大好きな「手帳術」のお話もできればいいなと思っています!(ほぼ日手帳とCITTA手帳の2冊使いです!)

私が代表を務める大阪・淀屋橋「シーナリーセント」では、イベントや展示会、店舗などで香りを演出する事業を行っています。

世の中に「ある」香りの再現も、「ない」香りのオーダーメイドもOK。

また、イベント会場などで香りを拡散する機器を開発。販売やレンタルも行っています。

◆イベント、ライブ、テーマパークで香り効果演出
◆商業施設でのクリスマス装飾香り演出
◆ホテルブライダルでの香り空間演出
◆ミュージカルなど舞台演出での特殊効果の香り演出
◆アニメやゲームなど推しキャラの香り

蜷川実花監督「映画ホリック xxxHOLiC」の展覧会で
香りの空間演出を担当

私が香り演出を仕事にして約10年たちます。今年に入り、生涯忘れられないであろうお仕事をさせていただきました。それは、写真家/映画監督の蜷川実花さんが監督を務めた映画「映画ホリック xxxHOLiC」の世界を体感できる展覧会に、香り演出家として参加させていただいたことです!

映画ホリック xxxHOLiC 表裏世界没入展 2022年4月29日〜5月15日
会場:WITH HARAJUKU HALL(東京・原宿)
https://xxxholic-movie-event.com/


私は以前から、蜷川実花さんの極彩色の世界観が大好き。
6年前の2013年夏、家族で福井県に旅行に出かけました。夫と子どもたちがプールに行っている間、私はあわら市・金津創作の森で開催されていた蜷川実花さんの個展に1人で訪れました。モデルさんやお花の鮮やかな写真にうっとりと見惚れながら歩を進めたことを昨日のように思い出します。

展示室はいくつかの部屋に分かれていました。2番目の部屋に入ると3面の壁に、赤や青、オレンジ、緑の金魚がゆらゆらと泳いでいる映像が映し出されていました。ああ、なんて素敵なんだろう……! 私はしばし、蜷川実花さんの幻想的で、妖しい世界に浸りました。

その頃の私は、香りを創作する仕事をしよう! と決意し、景色や音楽から香りを想像して作り出す訓練をしていました。

「将来、こんな素敵な映像作品に、オリジナルの香りを添えることができたらなあ」と、ほんのり考えました。当時の私にとって、蜷川実花さんは雲の上の遠い存在。そんな方の作品に関わることができる日が来るなんて。

採用されたのは
「甘く濃く、陰がある香り」


「映画のプロモーションで、香りを作ってもらえませんか」。

ある日、空間デザイン会社「トンネルデザイン」のデザイナー・河上真理さんからこんなメールが届きました。

いざ打ち合わせを始めると、まさか、あの蜷川実花監督の作品だったのです!

香り創作・演出のプロになりたい。

そう願い会社を立ち上げ、多くの企業やアーティストたちとコラボレーションしてきました。香りの演出を仕事にするという夢は叶いました。

しかし、あの、蜷川実花監督の作品に関わることができるなんて!

ドキドキしながら、打ち合わせを進めていきました。

私は香りのデザイン、空間演出を担当しました

展覧会「映画ホリック xxxHOLiC 表裏世界没入展」は、展示と謎解きゲームの2種類の体験ができる、参加・体感型のイベント。

展示エリアでは、映画のスチール写真や、実際に使われた衣装、小道具など“表”の部分と、絵コンテや台本、ウィッグなど“裏”の部分を見せ、映画の世界に“没入”できるという仕掛け。

もうひとつの体験、謎解きゲームでは、プレイヤー自身が映画の登場人物になりきり参加。映画のセットの中で謎解きに挑戦するというものでした。

映画「ホリック xxxHOLiC」は、創作集団・CLAMPによるコミック(累計1400万部!)を実写映画化された作品です。俳優の神木隆之介さん、柴咲コウさんのW主演、「SixTONES」の松村北斗さん、モデル/俳優の玉城ティナさんが出演。

人の心の闇に寄り憑く“アヤカシ”が視える高校生・四月一日(ワタヌキ)が、ある日一羽の蝶に導かれて不思議な「ミセ」にたどり着きます。「ミセ」の女主人・侑子(ユウコ)は、どんな願いも叶える代わりに、彼の一番大切なものを差し出すように囁きます……

蜷川実花監督からは「この香水を使いたい」というオーダーがありました。以前、ご自身がフレグランスブランドとコラボレーションしたという香水で、私のもとには監督の自宅にあったという使いかけの香水が届きました。

そもそも市販の香水は、会場演出で空中拡散するのには向きません。主成分がエタノールで、可燃性蒸気が発生する恐れがあるためです。「香水と同じ香りを」とリクエストがあった場合、私は同じ香りをエタノールなしで作り直すこともできます。

香りをきかせるのは、お客さまが会場に入るときのゲート。外の世界からゲートに入ると、いきなり映画の世界に“没入”できる演出効果として使われることになりました。

私は、3つの香りをサンプルとして作りました。

・香水の香りを再現したもの
・香水をベースにオリジナリティを足したもの
・香水をベースに、セクシーで妖艶なイメージを足したもの


最終的に選ばれたのは、3番目の<香水をベースに、セクシーで妖艶なイメージを足したもの>でした。

最初に香る「トップノート」には、ペッパーなどのスパイスに、ピーチの甘い香りを。そこにラムなどの濃い香りを重ね、残り香「ラストノート」にはバニラやブラックタバコを。柴咲コウさん演じる侑子は、花魁のような着物を見にまとい、ずっと煙管(キセル)を吸っている女性です。花魁がつけているであろうおしろいの香り、気だるくむわっとした濃さ、キセルから吹き出すタバコの煙。侑子の「ミセ」はきっとこんな香り。

会社では、スタッフ全員が「個性的すぎる。万人受けしないので、これは採用されないのでは」と評していました。しかし蜷川実花監督が求めていたのは、甘く濃く華やかながら陰もある、個性的な香りだったのです。


「香り効果で映画の世界に没入できた」「香りを販売してほしい」
来場者のコメントに感激

「映画ホリック xxxHOLiC 表裏世界没入展」の会場は、まさに蜷川実花ワールド! 紫の藤の花と赤い花がみっしりと吊り下げられ、美しい衣装や小道具の数々に、たくさんのお客さまが“没入”されたようです。お客さまにどう感じていただけたのかな? と、気になっていたのですが、Twitterでは「音楽と香りで、自分までミセにいる感覚を味わえる」「素敵な香り」「香り大好きだから売ってほしい」と嬉しいコメントが溢れていて感激……!!


どんなお仕事でも、香りの演出は私1人ではできません。アーティストやプロデューサー、スタッフのみなさんのスペシャリストぶりとチームワークの良さに毎回刺激を受けつつ、期待に添えるよう、いや期待以上の香りを作らねば! と頑張っています。

展覧会「映画ホリック xxxHOLiC 表裏世界没入展」でも、蜷川実花監督をはじめ、映画、展覧会空間、照明、音響などプロフェッショナルなスタッフさん揃いでした。(さすが!) 私も、香り演出家として参加できたことを嬉しく、そして誇りに感じています。


関係者のみなさま、本当に本当にありがとうございました。今でも展覧会の写真や来場者のみなさまの声を見返しては「次も頑張ろう」という励みにしています。

これからも、来場者のみなさまの“記憶に残る”香りを創り続けていきたいと思います! 

シーナリーセント https://sceneryscent.com/

郡(こおり)香苗
Instagram https://www.instagram.com/sceneryscent.kanae/
Twitter https://twitter.com/kanae_kori

\お世話になりました/
トンネルデザイン株式会社 https://www.tunneldesign.co.jp


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