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目に見えない関係性を映し出す。映像表現の技術
マンガ『子供はわかってあげない』が好きすぎて、映画版を観に行く勇気がなかったけれど、
映画を観てよかった
沖田監督と脚本のふじきみつ彦さんは、裏切らないですね。
そう思う理由は、山のようにあるのだけれど、ひとつあげると、
『魔法左官少女バッファローKOTEKO』です!
えっそこ?
と思うかもしれません。名前を書くシーンとか、色々いいシーンはあるしね。
でも、『魔法左官少女バッファローKOTEKO』が、サクと、サクに繋がる男たちの関係をものの見事に描いているんですもの。
そりゃ、アニメも主題歌もわざわざ作るよな、ってことです。
マンガでは『魔法左官少女バッファローKOTEKO』は、あくまでサクとモジくんをつなぐものです。さほど印象には、残りません。
でも、映画では違います。
サクとモジくん、
サクと育てのお父さん、
サクと実のお父さん、
の三者の絆を象徴する『シャレード』(間接表現)として、『魔法左官少女バッファローKOTEKO』がいます。
(出だしのアニメのネタバレ感にも、遊び心がありますね)
サクとモジくん
マンガでも映画でも、サクとモジくんの仲が良くなるきっかけは、『魔法左官少女バッファローKOTEKO』です。
マンガでは、サクとモジくんがさらに仲を深める出来事として、屋上を使っていたモジくんが、不良グループに絡まれるというシーンがあります。
映画では、そこはカット。
そうすると、二人が仲良くなるきっかけを他に作る必要がでてきます。そこで活躍するのが、『魔法左官少女バッファローKOTEKO』!
『魔法左官少女バッファローKOTEKO』の名シーン、名セリフを真似しながら階段を降りていく二人。
なんの違和感もなく、一気に二人が仲良くなったのがわかります。
サクと育てのお父さん
主題歌を一緒に歌って踊り出す、サクと育てのお父さん。親子の絆というか、仲の良さが伝わってきます。
マンガでは、このシーンはありません。ってか、マンガではなかなか描けないですよね。主題歌を一緒に歌って踊るというのは。
映画ならではの演出で、親子の仲を描いています。
サクと実のお父さん
マンガでは、実のお父さんにまつわるストーリーも面白いし、モジくんのお兄ちゃんの活躍とかもあるし、個人的には好きなエピソードではあるんですが、映画ではそこはカット。
映画は尺もあるので、サクとサクに繋がる男たちの物語になっています。
で、実のお父さんは、『魔法左官少女バッファローKOTEKO』のことを知りません。まぁそりゃそうだ。年代も違うし、テレビもない家だし。
でも、ここでも『魔法左官少女バッファローKOTEKO』が、サクの世界に触れようとする、実のお父さん心を表す小道具として使われます。
(ここはネタバレ?になるから、これ以上は書きません。が!ここでも、わざわざ主題歌を作った意味がわかりますね!)
マンガと映画の違い
マンガは、止め絵で物語を紡ぐ媒体です。
映画は、映像で物語を紡ぐ媒体です。
同じ物語でも、媒体の違いによって、どう観せるかは異なります。なので、マンガを忠実に再現したからって、いい映画ができるわけではありません。ねぇ……
映画は、映像で観せてナンボな訳です。そのために脚本家がいて、そのために映画監督がいるわけです。
映画『子供はわかってあげない』は、その塩梅が絶妙でした。それを象徴する一つが、ぼくは『魔法左官少女バッファローKOTEKO』なのかな、と思いました。
田島列島先生と沖田監督・ふじきみつ彦さんの間に信頼関係がないと、こんな『子供はわかってあげない』はできなかっただろうなぁ、と思いながら、少し賑やかさが戻ってきた新宿二丁目を歩いて帰るシナリオ・センターのあらいでした。
▼シュールすぎる沖田監督の
プロダクションノートもおすすめです!▼
▼やっぱりマンガも読んでほしい!▼
シナリオ・センターは、1970年に優秀なシナリオライター・脚本家、プロデューサー、ディレクターの養成を目的に、新井一が設立。
ジェームス三木さん、内館牧子さん、岡田惠和さんなど700名以上の脚本家、小説家を輩出する学校です。「日本中の人にシナリオを書いてもらいたい」と思って51年目。
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