登場人物を魅力的にするポイントが、『あこがれ性』と『共通性』だという理由
新井一さんが、『シナリオの基礎技術』のなかで、登場人物は魅力的でなければならない、と言っています。まぁそりゃそうですね。
その方法として、『あこがれ性』と『共通性』をつくるといいよ、とも言っています。
これ、最初に講座で聞いた方は、「へぇ〜なるほど!」と思うと同時に、
「ん?『あこがれ性』って、長所?『共通性』って、短所?」
とか、
「『あこがれ性』って、特技?『共通性』って、苦手なこと?」
とは違うのかな……と思ったと思います。今でも、思っている人もいるかも。そして、誤解したままの方もいるかも。
ここ、正しく理解できると、ものすごく創作しやすくなると思います。
ということで、
新井一さん、こういうつもりでかく語ったり?
という考察を、孫のあらいかずきがしたいと思います。あくまで個人的な考察ですが……
そもそも『あこがれ性』と『共通性』とは…
登場人物を魅力的にするためには、二面性を描くべし!と新井一さんはいっています。
そしてその二面性が、『あこがれ性』と『共通性』です。
『あこがれ性』とは
『共通性』とは
あれ?『共通性』って、弱点って言ってね?と思いますよね。これ、確かに言ってます。書いてあります。
でもね、あくまで『共通性』ということばにしているんです。そこには、絶対、意味がある!
なぜ、『あこがれ性』『共通性』なのか?
『シナリオの基礎技術』や『シナリオの技術』、『シナリオ作法論集』などを読んでいると、『あこがれ性』の話は、絶対に出てきます。
『あこがれ性』ということばの中には、長所的なニュアンス、特技的なニュアンスも含まれます。だから、何となく、「長所を考えれば、あこがれ性になるかな」とみなさん考えがちです。
『共通性』についても、同じことが言えます。弱点とか、短所、苦手なもの、抜けているところなどのニュアンスで語られています。
で、誤解が生まれます。
もしも、二面性が、長所と短所で説明できるのならば、そう説明したはずです。
もしも、二面性が、特技と弱点で説明できるのなら、そう説明したでしょう。
でも、してないのはなぜか?
それは、観客から見た視点で、人物造形をすべし!というメッセージがあるから!だと思います。ってか、新井一さんの書籍を何十回も読み返していくと、そう考えるのが自然です。
そして、長所と短所、特技と弱点ということばには、観客がどう思うかという視点が入りません。あくまで、作者視点で設定できます!
でも、『あこがれ性』と『共通性』は、観客から見た登場人物の面なのです。
主語を観客で作ってみましょう。
観客が、あこがれる面をつくる。
観客が(の)、共通する面をつくる。
観客が、長所の面をつくる。
観客が、短所の面をつくる。
観客が、特技の面をつくる。
観客が、弱点の面をつくる。
ね、主語を観客にしたときに、『あこがれ性』と『共通性』以外は、日本語として成立しないわけです。
創作するとき、作者視点で人物を作ってないか?
キャラクター表を作りましょう。
○○という作品は、ノート一冊分のキャラクター表がある。
とか言われます。キャラクターを考えることは大切です。
でも、大切なところを掴んでいないと、キャラクター表があることで支離滅裂になってしまいます。
大切なこととは、登場人物に、観客を感情移入させるってことです。
『あこがれ性』『共通性』ということばには、
観客にとって
という大変大きな意味が含まれています。
ここ、テストに出るところです。
そう考えると……実はね
『あこがれ性』『共通性』はすっごい自由だ!
『あこがれ性』ということばの中には、長所とか、特技とか、人間性とか、多様な意味が含まれています。とっても自由です。
『共通性』も同じです。
だからこそ、あまたの選択肢から、どう『あこがれ性』と『共通性』をつくるか、そして、観客が感情移入する登場人物にできるかは、作者にゆだねられているんです。
ここにも、『どう書くか』は教えられるけど、『何を書くか』は教えられないし、教えてはならないもの、という新井一さんのポリシーが詰まっているんです。
観客視点で、自由に登場人物を作ってよ
新井一さんは、今も天国から、めちゃめちゃシナリオ・センターを気にしていると思います。みなさんのシナリオにも、目を通しているはずです。
そして、こう言っているのではないでしょうか。
創作は、自由なんだよ。って
って感じで、今回のあらいかずきの『新井一さん、こういうつもりでかく語ったり?』はおしまい。
観客視点での、人物造形。一回、試してみてくださいませ。
実はこのことに気づいたのは、子ども向けのカリキュラムを考えていたときなのでした。
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