ドラマと人生は、似ているよね_#01
どうも、シナリオ・センターのあらいです。
今日は、「ドラマとぼくたちの人生ってめちゃめちゃ共通点があるよね」っていう話をします。
「え、そんなの当たり前じゃん」という方もいると思います。映画やテレビドラマ、小説などは、『人間を描くもの』なんだから、と。するどい!!
「え、そうなの?」という方もいると思います。エンタメ作品は娯楽。「ぼくたちの毎日とは違うんじゃないの?」と。これもまた、すばらしい!そうとも言えそうだしね。
そこら辺の疑問もふくめて、今日は『ドラマとぼくたちの人生の共通点』をテーマにお話をさせていただきます。
ということで、このnoteでは、大学のキャリア関連の授業のなかでお話しさせて頂いた内容を、書き起こしっぽい感じで進めようと思います。
あらいは、シナリオ・センターにて、映画やゲーム業界、一般企業から子ども向けまで、シナリオを広めるためなら、な~んでもしています。
大変なことばかり起きる
まず、シナリオ・センターご出身の脚本家で那須真知子さんという大御所の方がいらっしゃいます。その方が、公開講座でこんなことを話されています。
『映画というのは、すっごく簡単にいうと、主人公に何か問題が起きて、その問題を解決するまでを描くことです。解決できなくて破滅するというのもありだし、解決して和解するというストーリーもある』
2018.03.19 開催 THEミソ帳倶楽部「脚本家に大切なもの」ゲスト 那須真知子さん(脚本家)
あれ?こういわれると、すでに共通点を感じませんか?
そう!ぼくらの人生って、なんだかんだと問題が次から次へとやってきます。それに立ち向かったり、スルーしたり、逃げたり、逃げ切れずにどうにか対処したり……もう大変。
振り返ってみてください。
受験勉強、大変だったでしょ?それ以前に、中間試験や期末試験も大変。学生時代って大変なこと多いわけです。
その間に、恋なんかしっちゃって勉強に手がつかなかったりね。
就職活動。どう考えても大変そうです。
せっかく就職しても、仕事を覚えたり、新たな人間関係を築いていったり。
そのうちキャリアチェンジなんかもあったりします。はい、これも大変そう。
「自分が本当にやりたいことはなんだぁ」と自問自答したり。
必ず希望する仕事につけるかわからないしね。
30代、40代、偉くなったら偉くなったで大変。責任は増えて、会社のプロジェクトを任せられたり、売上を意識しなきゃいけなかったり。
越えなきゃいけない課題は満載です。
その間に、恋愛して、結婚したりしなかったり。結婚したらしたで大変だし、しなかったらしなかったで大変だし。
「あぁ~やっと子育てもひと段落」と思ったら、老後の資金だ、介護だなんだ、自分自身の健康の問題だとか、いろいろ大変です。
ぼくらの人生、大変なことばかり。いつも何かしら、課題を抱えて生きています。
というか、そんな大げさなことばかりじゃなく、「今日の晩ご飯何にしよう?決まらないなぁ~」だって、立派な問題です。休日の食事当番のぼくは、14時くらいからもう憂鬱です。奥様、毎日ありがとう!
映画やテレビドラマほどに劇的ではなくても、み~んな平等に、大変。それがぼくらの人生のようです。
そう考えると、ドラマと人生って、何かしらの問題を抱えながら進んでいくって点でめちゃめちゃ共通点があると思いませんか?
人間らしさが、問題を生み出していく
なんで、こんな共通点が生まれるのでしょうか?
それはもう、『ドラマとは人間を描くもの』だから「ドラマと人生は似てくるのだよ」と言われれば、わかったような気もします。
でも、もう少し掘り下げてみましょう。
そもそも、描かれる対象となる『人間』ってなんでしょうか?
なんか、すっごい哲学的。自分で問いかけて、恥ずかしい。でも、あまり難しく考えずにいきましょう。
シナリオ・センターの創設者の新井一は、こう言っています。ちなみに、ぼくのおじいちゃんです。
どうにもならない、そのつらい思いが人間なのです。ロボットではないところです。
人間を描くということは、人間の心の奥のそうした義理人情でも止められないところにあるのではないでしょうか。
新井一『シナリオの技術』p126
こういわれると、わかる気しませんか?
「わかっちゃいるけど、やめられない」とか、「頭ではわかっているんだけど……」とか、そういう想いってありますよね。
たとえば、試験のまえに、勉強しなきゃいけないのに、Lineし始めたり、youtube見たり。
そういうの大人でもあります。企画書書かなきゃいけないと頭ではわかっているのに、飲みに行っちゃったり。
不倫なんて、その最たるものかもしれませんよね。頭では「いけない!」ってわかっている。わかっているけど……ってなものです。
ぼくたち人間は、そんなに器用じゃございません。だから、悲しいかな周りから見ればバカなことも、大いにしちゃうわけです。理屈では動けない生き物なのでしょう。
だから、問題も抱えるし、それをなかなか片づけられない。
一方で、理屈じゃないからこそ、現実不可能と思われたこともできてしまう。月に行ったりね。
そんな姿は愛おしくて、ちょっぴりおもしろくもあり、ドラマのネタになっちゃうわけです。
ドラマって、まさにぼくらの人生を描いているのです。
人間らしい感情に共感する
「でも、ちょっと待ってくれ!そうはいってもやっぱりドラマみたいに劇的なことは起きないじゃないか。それでも同じといえるの?」
という方もいると思います。
たしかに、ちょっと前にヒットした『逃げるは恥だが役に立つ』みたいに契約結婚をして、そこから恋愛関係に発展するなんて、まぁありません。
『逃げるは恥だが役に立つ』は、主人公のみくりが就職が思うようにいかないことから、津崎の家事代行業をするうちに、「就職としての結婚」という契約結婚をしていくうちに、恋愛感情がお互いに芽生える物語
映画でも大ヒットを記録した漫画『鬼滅の刃』の主人公、炭治郎ような状況に陥ることは、まぁありません。あったら、いやです。正直。
『鬼滅の刃』は、家族を鬼に殺され妹の禰󠄀豆子を鬼にされてしまったこころやさしき炭治郎が、鬼殺隊となり、禰󠄀豆子を人間にもどすべく、なかまとともに鬼退治をしていく物語
たしかに、個別具体的なところを切り取ると、共通点は見つけにくい。でも、だったらなぜ、ぼくらは映画やテレビドラマ、アニメや漫画に感情移入ができるのでしょうか?
それは、特殊なストーリーにではなく、主人公の感情に共感し、感情移入するからです。
感情移入というと、小難しく感じますが、思わず感動したり、応援したり、この先どうなるのかと、はらはらどきどきしたりすることです。
なぜ感情移入ができるのかといえば、だれかを好きになる気持ちや、大切な響人を守りたいと思う気持ちは、古今東西を問わず、普遍的なものだからです。
ぼくらは、ドラマを通して人間らしい感情に触れる時、思わず涙したり、笑ったりするのです。
ほら、好きな人とか気になる人とか、いるでしょ?
なんだかんだ、家族は大切でしょ?
ドラマは、そんなぼくらの感情のつぼを、エンタテイメントという形でぐいぐい押してくるわけです。
ぼくなんか、いい大人なのに、家族に対してうまく感情表現ができなかったりするから、そういうドラマ(最近なら『俺の家の話』とか)を観ると、ひそかに「親にやさしくしよう」と思うもんね。なかなかできないけど。(笑)
ってことで、物語の設定は、ぼくらの人生と似ていなくとも、描かれている感情はぼくらと同じということです。
『いま』と『これから』を生きるヒントがドラマにあり
いったん、ここまでの話を整理してみますね。
・ドラマも人生も、大変なことばかり
・ドラマの人物もぼくらも、感情を持った生き物
・ドラマの人物もぼくらも、抱く感情は同じ
これが、ドラマとぼくらの人生との共通点です。
ここまで、いいですよね?
とすると次の段階に進める気がしませんか?
ドラマは『人生の見取り図』にできる。
ということです。
いまは世界規模の『問題』に直面している状況です。みんな、この先どうなるの?どうすればいいの?と思ってるでしょ。ぼくも、そう。
でも、ちょっと待って。カンのいい人なら気づいたよね?
先が見えない時代だからこそ、ぼくたちが生きるヒントが、ドラマの中にありそうだと思いませんか?
「問題に対して、こうすればいいのか!」とか、
「こういうの、やらない方がいいのか!」とか。
ドラマとぼくたちの人生が似てるなら、ドラマがぼくたちの人生を助けてくれるかもしれません。
そんな視点から、ぼくらがどう生きていけばいいかという糸口を、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。よろしくね。
ってな感じで、90分。この授業は、もう何回か続きます。
学生さんたちは、映画やテレビドラマ、漫画など、身近な話を織り交ぜるつつなので、キャリアという堅苦しそうな話にも楽しそうに聴いてくれた、はず!
▼シナリオ・センターについて▼
シナリオ・センターは、1970年に優秀なシナリオライター・脚本家、プロデューサー、ディレクターの養成を目的に、新井一が設立。
ジェームス三木さん、内館牧子さん、岡田惠和さんなど700名以上の脚本家、小説家を輩出する学校です。地味にすごい。今年、51年目。
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