「未来社会のデザインと社会的共通資本」藤倉 達郎教授 -20世紀後半のネパールから見える社会的共通資本-
気候変動や生態系の喪失、経済格差や分断の広がりなど、現代の社会が直面する様々な課題を解決するにあたり、「社会的共通資本」の考えは多くの手がかりを提供してくれます。そうした社会的共通資本のコンセプトを生かしつつ、私たちが実現していくべき未来社会のデザインあるいはビジョンを、大学の研究者と様々な社会的アクターが連携して考え構想していくことが「未来社会のデザインと社会的共通資本」の趣旨です。
今回は2023年11月に「未来社会のデザインと社会的共通資本」に登壇を頂いた、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科の藤倉 達郎教授の記事となります。
20世紀後半のネパールから見える社会的共通資本
経済学者・宇沢弘文氏(1928〜2014年)が提唱した概念「社会的共通資本」は、あらゆる人が経済生活を営み、優れた文化と魅力ある社会の安定的な維持を可能にするために整えた自然環境と社会的装置を、社会共通の財産とする考え方です。
京都大学における「社会的共通資本と未来寄附研究部門」では、未来を考える研究の推進と、拡張する社会的共通資本の社会発信を実施。アカデミアの分野を超えた、共通の価値創造を実践しています。
今回は、京都大学大学院アジアアフリカ地域研究研究科の藤倉達郎さんに、ネパールから考える社会的共通資本のお話をうかがいます。
藤倉先生の研究背景からお聞きしたいと思っています。ご経歴を拝見すると、法学から人類学に移られていますが、人類学に関心が移った背景と、ネパールに関心をもったきっかけについて教えてください。
当初、法学部に進んだ理由は、社会の仕組みについて考えたいと思ったからでした。人が人に罰を与えるとはどういうことなのか、犯罪がどのように規定され、どのような手続きで刑罰が科されるのか。とくに死刑制度に関心がありました。学部の時は刑事訴訟法のゼミにいたのですが、大学3年生の時に、ネパールのワークキャンプに行くことにしました。1986年です。
なぜネパールに?
法律の勉強とは全く別に、あまり東京に馴染めずにいました。慶應に通っていましたが、どこからも山が見えないことや、道路が全て舗装されていること、田んぼがないこと、そんな環境に非常に鬱屈としていました。
その時のワークキャンプは、ネパールの山の中の村で、飲料水用の水道をつくるというプロジェクトでした。飲み水のために何時間も歩いて水汲みに行かなくても済むように、タンクを作りパイプを通すというものです。ネパールのことはほとんど知りませんでしたが、東京から離れて、電気も電話もない村で1ヶ月半働くのも楽しそうだなと思った。それが初めてネパールに行ったきっかけでした。
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