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『ロシア・ノート』という絶望だらけの海外漫画:だがトルストイやドストエフスキーを読むことの意味を教えてくれたのが、私にとっては微かな希望の種だった

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先日、以下の記事で紹介した↓『ウクライナ・ノート』、

その作者、イゴルトさんが描いた姉妹編というべきグラフィックノベル(ぼぼ、日本でいう「漫画」のこと)が、『ロシア・ノート』です。今回はこの作品を紹介します。

2006年10月7日にモスクワの自宅アパートで、ジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤさんが殺害されました。

そのアンナ・ポリトコフスカヤさんの人生を追った作品にして、

強烈に鬱になる読後感の作品。

こんなに堂々とジャーナリストが暗殺されて、しかし誰もその黒幕を糾弾できないって。「黒幕がわかっているのなら殴りにいけばいい」というのは残念ながらアメコミの中の話らしい。そしてこの漫画の中にも描かれている通り、その後も、ポリトコフスカヤさんに協力していた運動家や、ポリトコフスカヤさんの同僚のジャーナリストは、続々と不審死している。

『ロシア・ノート』(イゴルト作/栗原俊秀訳/花伝社)より
『ロシア・ノート』(イゴルト作/栗原俊秀訳/花伝社)より

もちろん、こういうハナシについてのロシア当局の立場は、「たしかに、ロシアにてこのような不幸な事件が続き、有望なジャーナリストが亡くなっていくのはフシギで不運なことだ」がいつもながらの公式見解。お、、、おう、、、そうか、、、ふうん、、、そうですか、、、。。。

という感じで、

読み終えても希望はなにひとつ湧かない。肝心のロシア国内でこんなやりたい放題がまかり通っている状況て、こんなの無敵すぎる。ただしこの漫画を読めば、「なぜロシア国民はもっと自分の意見を主張し、戦わないのか?」などと外から無責任に言うことは、控える気持ちになれるかもしれない。外から言うほど簡単なハナシではないのだ。そういや、つい最近も、またこんな変な報道があったよね。たとえ殺されなくても、こういう、心が折れるような目には合わされる。

とはいえ、こんなことばかり食らっていても活動をやめないジャーナリストの方が、ロシアには、ちゃんと、いるわけだし、

それに、

もともとロシア文学好きだった私にとって、この漫画を読んでいちばん打たれたのは、アンナ・ポリトコフスカヤさんが、トルストイとドストエフスキーの愛読者だったということ。そうか、、、私もこの二人が好きだ、、、なんか嬉しかった。

『ロシア・ノート』(イゴルト作/栗原俊秀訳/花伝社)より

ということは、たとえ私が、ロシアやチェチェンやウクライナの問題について直接には何もできなくとも、

今、私がやっている、学校の読み聞かせボランティアや、ウチの娘たちへの読み聞かせで、ロシアの古典文学を教えてあげるという地味な活動、、、これにはもしかしたら何かの意味があるかもしれないと思い、、、つまり、これはぜひ、続けていくべきだと強く思った。noteでも報告している、「ロシア文学の自作漫画化」も、ますます私は、続けていく。

アンナ・ポリトコフスカヤさんも今のロシア政治に批判的であるものの、ロシア文学を深く愛していたようだし、、、そもそも彼女のジャーナリスト魂自体がロシア文学の最良の伝統をちゃんと引き継いでいるってことかもしれない。そんなら、私も、今後もしつこく「ロシア文学」の紹介やオススメは続けていくよ。とっても微力でとっても地味なことだが。

ともあれ、なによりもまずは、『ロシア・ノート』、ツラい漫画だけどぜひ多くの人に読んでほしい、と思うのでした↓


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