ソ連のSF映画『アエリータ』に衝撃を受けスケッチを取りながら鑑賞してしまったハナシ
「皆さん、こんにちは、noteでSFの紹介などをしておりますヤシロです。たまにこうやって夢日記から連れてきたキャラクターとの対話篇でお届けしています。今回もよろしくお願いします」
「よろしくお願いしますじゃねえよ、ヤシロ君、急に気が変わったのか!?」
「んー?なんのこと?」
「今回の記事のタイトルよ!あなた『実はロシアのSFに詳しい』ってことを、二年前から続く『あの国際問題』のせいで、『ロシアに対する気持ちが混乱した、noteであまりロシアの話はしたくなくなった』って言ってたじゃない!気が変わったの?」
「そのつもりでいたんだけど、、、結局、縁があって、実はこの夏に二年ぶりくらいにロシア語の通信教育を復活させてしまったんだ、、、語学の勉強が復活すると、、、映画の話もどうしても、ねえ。それによく考えたらさあ、僕ってもともと、『ドイツのナチス時代の映画でも、ソ連のスターリン時代の映画でも、優れた映画は政治史とは関係なくみんなに薦める』ってスタンスだったし、、、」
「なるほど、、、まあ確かに、『ナチス時代のドイツ映画はそれだけでNG、スターリン時代のロシア映画はそれだけでNG』なんて言ってたら、表現主義とかエイゼンシュタインとかをごっそり無視する羽目になるものね」
「それに、今日の私の記事のタイトルをよーくみてほしい」
「??」
「『ロシア映画』なんてヒトコトも書いてないよ。『ソ連映画』ですよ!もう失われたソ連という国のSF映画史を再整理しようという意図であって、プー○ンの肩入れをすることを書く気はまったくないよ。それに『ソ連時代の芸術』といえば、そもそも、ウクライナのクリエイターもごっそりと扱えるし」
「なるほど、、、そうきたか。現代の現実の政治に対してはノンポリのまま、あくまで、もう衰退して滅亡したソ連という謎の国のSFを開拓して、隠れた名作を探してくるってスタンスね」
「まあ、私の愛読書のひとつ、『いまさらですがソ連邦』みたいな、ね。このマンガ本、ソ連を面白おかしく描いてるが、スタンスとしてはやはり、『引いている』、この姿勢にならいたいね」
「速水螺旋人さんの『いまさらソ連邦』シリーズはけっこうソ連をバカにしてるクロいところあるけどね、、、」
「ちなみに私の本棚は、速水螺旋人さんの他にも、こんな感じ」
「昭和期の自民党の対ソ連対策研究の大家、中山正輝議員の本があるのは、知ってる人は苦笑するところだな、、、」
「まあ、ハナシの前提はわかったわ。で?あなたとしてはおよそ二年ぶりに語ることになるソ連映画のネタ、今日は何の話なの?」
「実は、YouTubeで、1921年に作られたソ連SF映画、『アエリータ』を観たんだ」
「1921何のソ連のSF映画!?またマニアックなものを!」
「これが凄く面白かったんだよ!なまじ、ソ連の芸術史に詳しいと、気づくことが多くてね!あまりのことに、いくつかのシーンを以下のように無地のノートにスケッチしてみたんだけど、この私のスケッチみて、気づくことがないかい?」
「気づくこと、、、?うーん、そうねえ。まずは、アジア人とか、アラブ人(ラクダのあるテント)とか、いろいろ出てきて、微妙に『世界のいろんな国』を合間に入れてきてるね」
「インターナショナルを打ち出してるよね」
「それから、、、ああ、女性労働者が進出してることをやけに強調してるわね。あとは、、、合間合間にいちいち、工場の制御盤とか、真空管とか、電線が複雑に絡み合った送電網とかのショットが入るのね、、、機械にまみれて仕事をすることはカッコいいぞー、、、とでも言いたげな」
「そう!そして、幾何学的なフレーミングにも注目だね。まるでポスターみたいに、人物の配置が左右対称にびしっびしっと決まってるよね」
「、、、やべえ、わかっちゃった!これは確かにすげえ、、、www」
「お気づきになりましたか?」
「これ、ひとつひとつのショットが、ソビエト・プロパガンダ・ポスターそっくりなデザインじゃん!!」
「そうなんですよ!物語は火星に旅に出る男ののんびりしたファンタジーなのに、すべてのショットが、まさに1920年代ソビエトのプロパガンダポスターデザインっぽくて、もうビックリしたんだなw」
「無意味なまでに、キャラクターの背景には、計器とか真空管とか電線とかが細々と強調されてるあたりとか、もう、、、ザ・ソビエトだw」
「ほんっとに凄いんですよ、この映画!詳しい事をいうと、ロシア構成主義っていう当時流行のデザイン方法を総投入してるってことになるんだけど、、、これまぎれもなく『戦艦ポチョムキン』前夜って感じがしない?」
「でもねえ、、、ヤシロ君、、、普通の日本人のSF好きは、こんな時代のソ連モノなんか、怖がるか、退屈がるかよ。あんたみたいにめっちゃ笑いながら、しかし熱心にスケッチまでとって鑑賞する人はやはり変わってると思うよ」
「でも、こういう事例をひとつ見つけたら、ひさびさに『戦艦ポチョムキン』とか『カメラを持った男』とか観たくなったし、ソ連のSFとなれば、日本ではまだまだ認知の少ない、ベリャーエフとかストルガツキとかを語りたい」
「そうとうマニアックな話題になるけどね、、、ということは今後のnoteでソ連SFのネタも取り上げていくの?」
「そうはいうても、ご時世が悪いので。タルコフスキーの『惑星ソラリス』とか、ダネリヤ&ガブリアゼの『キンザザ』とか、比較的、穏やかなものを中心に話をしつつ、フォロワーさんの反応も見ながらやっていくつもり」
「ま、、、この二、三年で、ロシアという国名の嫌われぶりは絶望的なので、嫌がる人も出るかもしれないもんね。小出しにしつつ、様子を見ながらだね」
「でもさあ、、、僕もそうなんだけど、若い頃にドストエフスキーとかトルストイとかに憧れてロシア語に手を出した人ほど、今のロシアにはイラついていいと思うんだよね、、、」
「その話をするとヤシロ君もアツくなっちゃうから、あえてSFに限定するわけね」
「というわけで、ソ連SFな話は、今後、フォロワーさんの様子を見つつやっていく。またいっさい、ソ連の話が出てこなくなり、アメリカやイギリスやフランスのSF話だけにまた戻ったら、、、それはまあ、そういうことと、ご理解くださいませ、、、」
「それにしても、あくまで『若い頃にロシア語をやってた』『そのおかげでロシア芸術に詳しい』ってだけなのに、この二年くらい実に世間様に申し訳ないような惨めな気持ちで生きているのは何なのだろうなあ、、、」
「プーのせい?」
「しー!!なまじ知ってるからこういうことを言うんだけど、日本語であっても、そういうことをネットにカキコするのは気をつけて、、、!」
「やだねえ、ほんとにもう、、、」