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【海外マンガ事情】世界で2000万部売れた『科学漫画サバイバル』!そのヒット要因の仮説を立ててみた!
先日の記事で紹介した韓国の学習マンガについて、都内の某大型書店にリサーチに行ってきました。そこで見たこと考えたことを記事にします!
書店で見かけた光景!確かに売れてる様子です!
出かけてみれば、なるほど、ありました!
特設棚の平積みで、バンバン仕掛けられていました。
「へえ、これが世界で2000万部売れたと騒いでいる韓国漫画か!」と、写真を撮ろうとしたら、目の前に男の子の兄弟二人組が割り込んできて、
「お前は寄生虫のやつを買えよ、オレがロボットのやつを買うから!」みたいな会話が。
テキパキと仲良く一冊ずつを持って、後ろで待っていたお母さんに連れられてレジへ行く。なんと、私のみている前で2冊、売れた!!
まあ、たまたまタイミングがあっただけの話といえばそれまでですが、「売れてる売れてる」と言われている本が実際に目の前ですいっと売れたのは、インパクト大ですねー。
「日本国内でも800万部を超えた」と帯に書いてありますね。いまどき800万部はすごいな、書店にとっては救世主のような存在に見えているのではないでしょうか?
この漫画がヒットした理由を考察してみると、いろいろ気づくこと
さてこの作品、中身を読んでみてまず言えることは、「内容的にはそんなに目立った差別化はなさそうだ」ということ。絵が親しみやすいとか、わかりやすいとかは制作側の工夫のポイントではありますが、漫画としての作りはとてもスタンダードです。
中身はそんなに差別化しているように見えないとなれば、ヒット要因は外的なところに求めるしかないですね。
私なりに思いついたことは 「買いやすさかな?」ということ。
すなわち、
・まさに「表紙も体裁もいかにもノーマルな学習漫画」な見た目ゆえ、大人が安心して買ってあげられる
・シリーズものになっているから続編が出たらまた買いたくなる(先の男の子兄弟のように、分担でコレクションなんてこともできる)
・たぶん、叔父さんや叔母さん、おじいちゃんおばあちゃんが子供のいる家にお土産を持って行くときにめちゃくちゃ便利な商品と思われる。これ大きいのでは?!
さきほど私が指摘した「内容的には特に変わったところはない」という点についても、この商品についてはまさに「尖った特徴がない漫画であること」がむしろ成功の秘密ということなのかもしれません
唯一弱点になりそうなのは日韓関係悪化の影響、だが子供の世界には関係ないかも!
この商品には日本市場において、マーケティング的弱点になり得る点がひとつあります。
「韓国の出版社が出していて、朝日新聞社が翻訳している」という背景です。
私個人はこの背景についてどうこういうつもりはありませんが、現実問題として拒絶反応を起こす人が一定数いるはずだということは、日本市場を見たとき考慮に入れなくちゃならない。
ところが本件に関しては、「そんなこと関係なく子供たちに受け入れられている」というのが正解そうですね。むしろ韓国の出版社のものを朝日新聞社が輸入しているといういかにもイチャモンをつけられそうな背景があるにもかかわらず(笑)ちゃんと売れているというところに、純粋に驚くべき事例かもしれません。
子供の世界というのは清々しくていいですね。「面白いと思えるものは、面白い」。シンプルに、それだけ。
今回は韓国発だが、これから類似の作品がアジア各国から追撃してくるのでは?
それにこの作品、読めば読むほど、手法は日本漫画の表現方法そのものなのですよね。人物の動き方、背景の入れ方、効果音の入れ方、すべてが日本漫画のコードそのままです。
日本漫画の表現パターンが長い時間をかけて世界の市場に受け入れられたから、そのスタイルに現代韓国の作家たちも合流してきたという図ということでしょうか。
そうだとすると、おそらくこれからタイやら中国やらベトナムやらといったアジア諸各国からも、「日本の漫画の技術を取り入れた世界的ヒット」作が順番に出てくるのではないか、などと予想しております。
もちろんそれはとてもよいことですが、やはり日本人に生まれた以上は、日本の漫画からもちゃんと世界的ヒットが続いてほしいぞ、と思うところ。
学習漫画なんてまさに日本の得意分野のようにも思うのですが、いかがでしょうか?
アジア各国が「オーソドックスな学習漫画」をとってくるなら、本家日本のほうはここでむしろ、「尖った表現の学習漫画」でアグレッシブにいく、とか、どうでしょう?!これはただの思いつきですが(!)。
ともかく「科学漫画サバイバル」は、「世界に出る日本漫画」というテーマの参考対象として、とても興味深い事例なのでした。
この話題、しばらくまた寝かせておきます。何か思いついたことや発見があれば、後日また、別の記事で取り上げるかもしれません。