スターウォーズ第9作を見てアメリカ映画のことが心配になってきたこと

劇場で見てきたのですが、これほど感想の難しい映画も近年なかなかないです。話題の『パラサイト』とかじゃありません。『スターウォーズ スカイウォーカーの夜明け』です。映画館から出てきて、いろいろ考え込んでしまいました。

つまらない映画では、なかったです。

アクションは派手だし、キャラクターも多彩だし、最後まで楽しめる映画でした。

でも見終わった後に、見事に何も心に残らなかったんですね。

ううむ、これはどうしたことか。昔の『スターウォーズ』って、「最後には父と子が和解できてよかったな」とか、「最後には正義が勝つのだな」とかいった、単純な感想ながらも、カタルシスがありませんでしたか?

たかが娯楽映画とはいえ、「家族の絆というのは強いのだな」とか「まじめに努力したものが最後には勝つのだな」とか、そんな単純なものでいいから、テーマ性が欲しいですよね。

失礼ながら、今回の『スターウォーズ』、7、8、9は、もはや「制作すること」自体が自己目的化していたような気がしてしまいます。「とにかく、三年に一度くらいは新作を劇場公開してコンテンツを継続させよう」というノルマがあるから作った、みたいに見えちゃうのです。

その証拠に、マーケティング的には、今回のスターウォーズも徹底的に計算されてはいたのです。「開始〇〇分くらいで主人公にこういう葛藤を味わせよう」とか「開始〇〇分くらいでアクションを入れよう」とかいったリズムの点では完璧に近い。でも、「よくもまあ、できるだけ多数の観客を適度に楽しませ、怒らせたり飽きさせたりさせることなく、最後まで見させる研究をしているものだ」と感心するのって、映画の感想としてはどうなのでしょうか?

スターウォーズに限らず、最近のハリウッド娯楽映画にありがちな、「とがっているところが何もない」感じ。善玉も悪玉もドストレートすぎて、キャラに深みがないので、ハッピーエンドを見ても、「悪を倒したんだ、ふうん、よかったね、ま、僕らには関係ない話だけどね」と思ってしまうw

第八作で東洋系の女の子をヒロインに抜擢したのは冒険だったと期待したのですが、今回は別のヒロイン(黒人さん)があてられていましたね。これも東洋系に対する悪意ではなく、前作のマーケティング調査で「東洋系のヒロインというのは、いまいちウケてなかった」というデータでも出たから、引っ込めたのでしょう。

映画って、もっとこう、「たとえ娯楽映画でも、『スターウォーズ』からはこういうカタルシスが得られ、『インディ・ジョーンズ』からはこういうカタルシスが得られる」という、カラーがあったはずではないでしょうか。少なくとも「シリーズを途切れさせるのはもったいないから、そろそろ続編を作らなきゃ」というお仕事感ばかりでシリーズが続いているのは、なんだか心配になってしまいますね。

ただひとつだけ、今回のスターウォーズの完結を見て、「よかった」と感想を持てたことがあります。

監督の降板劇が起こったり、シナリオのまるまる書き直しが発生したり、ディズニー社の戦略がブレブレだったせいで、今回のスターウォーズの現場の製作者たちはえらくたいへんな仕事環境だったと思います。

本当に、お疲れ様!映画ニュースサイトを見る限り、本作の制作にはそうとうガタガタがあったようですが、ともかく映画が完成して、本当によかった!興行収入のノルマ達成できたかな?

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