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巨大生物恐怖症の人は見ちゃいけない映画『SF巨大生物の島』—100年を経て実現したジュール・ヴェルヌとハリーハウゼンの幸福な邂逅
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好きなSF小説家といえば、いろいろいますが、一人を挙げるとすれば、19世紀フランスのジュール・ヴェルヌです。
そして20世紀の映画作家の中で熱烈に敬愛しているのが、特撮監督のレイ・ハリーハウゼンです。
そんなジュール・ヴェルヌが1870年代に書いた原作小説を、1960年代にハリーハウゼンの特撮で映像化したのが、『SF巨大生物の島』。
まさに私にとっては夢のようなコラボレーションです。あ、ややこしい話なのですが、1970年代に『巨大生物の島』っていう映画がありますが、こっちはH.G.ウェルズの原作をバート・ゴードンか監督したまったくのベツモノです。
それにしても、この二作品についても言えることなのですが、
ジュール・ヴェルヌの原作が映画になると、楽天的で子供の遠足のように楽しい冒険物語に仕上がり、H.G.ウェルズの原作が映画になるとペシミスティックなホラー・スリラー系に仕上がるというのは、それはそれでこの二人のSF古典小説家の特徴を示していて面白い。
さて「SF巨大生物の島」は、ハリーハウゼン氏のキャリアの中では、かの超有名作、シンドバッドシリーズや『アルゴ探検隊の大冒険』のハザマに位置するために、いまいち目立ってないのが残念。
それに、出てくる「ハリーハウゼン巨匠の手になるモンスター」も、
巨大カニ、巨大鳥、巨大ハチ、巨大オウムガイの四匹のみと、いささか、シンドバッドシリーズやアルゴ探検隊に比べると出し惜しみ気味でもある。
けど、私は本作の、巨大カニのユーモラスな動きが、どうにも、たまらなく、好きだ。このカニと戦った主人公たちが、なんとかカニを撃退したあと、、、予想通りと言いますか、焼いてみんなで「うまいうまい!」言いながら食べてしまう流れまで含めて、このユーモラスさが好きでありんす。
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それに、本作に登場するネモ船長は、『海底2万マイル』から八年後という設定もあってか、
潜水艦で列強の軍艦を攻撃するテロリストまがいな反戦思想をどうやら捨てていて、人類を食糧危機ひいては経済競争から救うためのバイオテクノロジー研究を推し進めるという反戦思想にチェンジしているのが、実によい。私はしばしば「願わくばネモ船長になりたい」と冗談めかして言いますが、そういうときのネモ船長のイメージは『海底2万マイル』時代のネモ船長よりも、『神秘の島』(この『SF巨大生物の島』原作)時代のネモ船長です。
だが、残念ながら、世の中ではそもそも『海底2万マイル』には続編があること自体、あまり認知されていないみたい。
それはもったいない!ぜひ『SF巨大生物の島』というユーモラスな特撮映画をきっかけに、『神秘の島』という原作小説にも触れてほしいと思い、本日はこの映画を紹介させていただきました。
ただし、巨大生物恐怖症な方には、本作はとうてい、オススメできませぬw。人間よりでっかいカニ🦀やハチ🐝なんて想像するだにイヤだという方、とくに、甲殻類や昆虫の「知性のない無機質な目」がイヤだという人には、この映画の、私にはユーモラスに見えるカニやハチの姿、悪夢そのものに見えるかもしれませんからね、、、。