ブックサンタに向けて-0歳から3歳編(幼年前期)-
はじめに
私の選んだ本が、友人の読み聞かせボランティア先(小学校)で好評らしい。
別にボランティア用に選んだわけではない。
ただ友人に娘が生まれてから8年間、ほぼ毎年、クリスマスになると本を送りつけるということを繰り返していて、友人がそれをボランティアにも活用したというだけの話だ。
が、諸事情により公共図書館の第一線から退かざるを得なかった私にとって、これはあまりにも光栄で、そして幸せな出来事だった。
飛び跳ねるくらい嬉しくなってしまったので、調子に乗ろうと思った。
友人に送りつけた本たちを、ブックサンタの時期に向けて公開しよう。
誰かの参考になるかも知れないから。
そんな訳で、年齢別に分けて、選んだ理由なんかも入れつつ、友人宅に送りつけた本たちを紹介していこうと思う。
ブックサンタとは?
複雑な事情を抱えた家庭の子どもたちに本を届けるチャリティ活動。
書店で代金を支払って本を送ってもらったり、年間通して募金して応援もできる。そんな活動。
詳細はリンク先で。
選定基準
0歳から3歳というと読書にはちょっと早いかも?という年齢だ。
少々古いかもしれないが、基準にしたのは司書資格取得過程で読んだ『児童サービス論』(2012年2月10日発行/辰巳義幸/東京書籍株式会社)である。
そこに自身の体験や経験をプラスして本を選んだ。
0~2歳
0歳と言うのはさすがに読書の時期ではない。
が、子どもの成長とは早いものだし、そもそも贈り物というのは到着までにタイミングがずれるものである。
なので少々、年齢に幅を持たせて選んだ記憶がある。
今は0歳児だけど1歳児なんてすぐだから、まあちょっと年上向けでも構わないだろう……そんなノリである。
また友人は長女を生んだ翌年に次女を生んだので、以降、この年齢に幅を持たせて本を送るという方針は続いていくことになる。
さて、『児童サービス論』によれば1~1歳半の時期は「本は,子どもに言葉を語りかける道具として使えばよい」(p.49)としている。
俗にいう「赤ちゃん絵本」の年頃である。
ストーリー性は薄く、擬音などが多いもの、家族とちょっとした触れ合いやコミュニケーションに繋がるような内容のものを心がけた。
「2~2歳半頃からは,自分より大きな人間のまねをするという学習が始まる。また,外部の刺激に応じて反応し,行動していくことができるようになる」(p.49)ため、「具体的な事物を絵本の中にとらえる,再認作用を促す絵本が必要になる」(p.49)そうだ。
なので「赤ちゃん絵本」の中でも、出来るだけ「日常的な行動」を中心としたものを選んだ。「歩く」「食べる」などである。
3歳
『児童サービス論』によると「話を聞く能力も言葉の急速な獲得でついてくる。話の中に出てくるものに自分を同調させ,主人公になって楽しむことができるようになる」(p.49)のがこの年齢である。
つまり、ストーリー絵本解禁である。
読書好きからすると、ぼちぼち読ませがいのある本が出てくる頃合いだが、かと言って読書好きの感覚で走ると、対象とする子どもからはレベルが高すぎて、退屈な読書体験を作ってしまいかねない。
ちょっと注意の必要な頃合いでもある。
なので自分が思うより簡単な内容で、日常的なもの。
あとは友人にヒアリングを行い、友人の娘たちの興味関心がある要素が入ったものなどを選ぶようにした。
また言葉を獲得していく頃合いでもあるので、物の名前を覚えるような内容のものをチョイスした。
選んだ絵本
2016年(0~2歳)編
『くっついた』三浦太郎/こぐま社
親子のコミュニケーションを重視した一冊。
公共図書館のお話し会でもよく活用していた本で、「〇〇と〇〇がーくっついたー!」と本に合わせて、お母さんと子どもが顔や体をくっつけ合う、という使い方をしていた。
『だるまさんが』/かがくいひろし/ブロンズ新社
私の趣味である。
わかりやすく説明すると「いない いない ばあ」形式で、だるまさんのいろんなリアクションを楽しむ絵本である。
笑ったり、怒ったり、だるまさんの絵がコミカルで可愛らしい。
予想外の展開に、大人でもちょっとくすっとなれるのがいいところ。
『くつくつあるけ』林明子/福音館書店
天下の林明子氏である。
子ども絵本の大家である。
私も幼い頃、だいぶお世話になった本だ。
先述した選定基準で言うならば”「日常的な行動」を中心とした”絵本に入る。
幼い子どもの靴が、ただ歩いて、出かけて、転んで、泣きそうになったりして、最後には寝る。ただそれだけのシンプルな行動を描いた本で、”歩く”ということに焦点が当てられている。
内容はとにかくシンプルなのだが、私がまだ大人と一緒にささやかな日常生活をこなすだけの、小さな世界に生きていた時分には、やたらと靴に対する共感があった気がする。
ただ歩いて出かけるというだけでワクワクと胸が躍って、転んで怪我をしたら痛くて悲しくて、それだけで大事件だったあの頃。
あの小さな世界が、単調だが心地よいリズムの文章の中に息づいて、形をとっている。
描かれる靴も、顔なんてついていないのに表情が豊かで、そこがまた幼い共感を誘う。
『おててがでたよ』林明子/福音社書店
またしても林明子氏と言わないで欲しい。あと2冊続くから。
いや、大体セットで売られてるんです、これ。
『くつくつあるけ』が「歩く」ことに焦点を当てた絵本ならば、こちらは「着替える」ことに焦点を当てた絵本である。
赤ちゃんが一生懸命お洋服を着る。
それだけの話なのだが、やはりこれも一人で着替えるのも一苦労だった幼少期にはやたらと共感の持てる絵本だった覚えがある。
小さくて不器用な体では、頭を出すのだって一苦労。
手を出すのはどの穴だったっけ。
よくあの布の海の中で迷子になって、時には変な所で腕が引っかかって頭にきたりしてたっけ。
優しく話しかけるような文体も、胸の内をくすぐるような甘やかさがある。
にっこにこの赤ちゃんの顔やふくふくした手足は、大人も思わずほっこり微笑んでしまう可愛らしさである。
『きゅっきゅっきゅっ』林明子/福音館書店
こちらは「食事」に焦点が置かれた本。
赤ちゃんがぬいぐるみとご飯をたべるだけの絵本である。
ご飯を食べるだけなのだが、ぬいぐるみたちはあっちゃこっちゃにご飯をこぼす。そのたびに赤ちゃんはぬいぐるみたちのお世話を焼いてあげるのだ。
きゅっきゅっきゅっと、汚れた場所を布で拭いて。
ぬいぐるみが友だちだった幼い私には、結構お気に入りの一冊だった記憶がある。
「お世話をする」ということを何かに対してやってあげたい時期。
そんな時、ぬいぐるみたちはみんないい友達であり、兄弟であり、子分や手下であったなあなどと思う。
『おつきさまこんばんは』林明子/福音館書店
夜空に浮かんだお月さまと、ちょっとお話するような絵本。
「歩く」、「着替える」、「食べる」と、人が生きていくうえで必須とされる行動絵本が続く中、これだけはちょっと世界が異なる感じがする。
それは恐らく、家の上に浮かんだお月さまを眺めるという構図・状態と、お月さまと会話するという状況のせいだろう。
主観的で閉じた世界が続く中で、この一冊だけは他者とのやりとりで成り立っているのだ。
そういう意味では四冊セットの中で、最も広い世界の絵本と言える。
お月様が浮かんだのに、雲が隠してしまってちょっと悲しくなったり、雲が去って「あー、よかった」なんて微笑んだり。
月も雲も、身の回りのものは生き物でも無機物でも、なんでも友だちだった時代を思い出させてくれる。
友人長女はどうもこの絵本が気に入っていたようで、遊びに行ったときは読み聞かせをお願いされた覚えがある。
「おやすみなさい」で終わるので、寝かしつけの最後の一冊にも最適である。
『ぴょーん』まつおかたかひで/ポプラ社
これは話題に出している友人とは、また違う友人に出産祝いで贈った本。
これもまた公共図書館に勤めていた頃、お話し会でよく使った本で、私のお気に入りである。
「〇〇さんが」と生き物の名前で始まって、次のページでその生き物が「ぴょーん」と飛び上がる。
そんな単調な繰り返しだが、児童文学の分野でも語られるように、それが子どもには面白かったりする。
また「ぴょーん」に合わせて親御さんが子どもを持ち上げてあげたり、そういったコミュニケーションにも使える一冊である。
お話に合わせてぴょーんと持ち上げられる子どもたちは、いつだって楽しそうに笑っていた。
『がたん ごとん がたん ごとん』安西 水丸/福音館書店
『ぴょーん』を送りつけた友人に送りつけたもう一冊の出産祝い。
こちらは男の子だったので乗り物チョイス。
公共図書館でも人気で、よく貸出がされる絵本だった。
友人いわく「絵が大きくてハッキリしていて赤ちゃんでも見やすそう!」だそうで、大変に喜んでくれた。
私自身、きちんと目を通していないのが申し訳ないところではあるのだが、内容としては汽車がいろんなものを乗せていく話で、基本的には「がたん ごとん」と「のせてくださーい」のやり取りの繰り返しであるらしい。
が、幼児期はこういう擬音や同じ言葉の繰り返しが最も楽しい時期である。
それにお店屋さんで「〇〇ください」って言ってみたりだとか、大きくなってしまえばありふれた、何気ない決まった言葉のやりとりが妙に楽しかったりする。
その辺の心が、上手いことくすぐられる絵本なのかもしれない。
2018年 3歳編
購入の履歴を見てみると、2017年のクリスマスはどうやらもふもふの羊さん頭巾を送ったらしい。
幼児期には幼児期にしか楽しめないアイテムがある。
そんな理由だったと思うが、まあとにかくもそんなわけで本の贈り物はいきなり一年空いた。
『いきもの6 きょうりゅう』ヒサクニヒコ/JTBパブリッシング
書店で実物を見て決めた、幼児向けの恐竜図鑑である。
決め手は作者、ヒサクニヒコ氏であった。
恐竜好きには昔から知られているイラストレーターで、幼少期から恐竜狂いを起こしている私の姉の推しである。
私の姉は幼い頃からリアル路線。生き物としての生態や体つきの正確性にはうるさい人であった。
そんな人が幼少期から崇め、近隣に講演に来た際にはサインを求めたような存在――それがヒサクニヒコ氏である。
これはもう図鑑として間違いはないだろうと思ってチョイスした。
実際調べてみると、ヒサクニヒコ氏は恐竜研究者でもあるらしい。
これは余計に間違いない。
小さく、子ども用リュックに収まってしまいそうなサイズ感も個人的には良かった。
『いきもの4 すいぞくかん』内山 晟/JTBパブリッシング
こちらも書店で実物を見て決めた。
幼児向けなので内容はとても簡潔なのだが、写真が大きく、生き物の名前が覚えやすそうという理由で選んだ。
そしてやはり、『いきもの6 きょうりゅう』と同じく持ち歩きやすそうなサイズ感も気に入った。
友人宅はよく娘たちを水族館に連れて行く家だったので、子どもたちの気分によっては持って出かけられるかもしれない。それは良いな、と思ったのである。
大人としても、これぐらいならばあまり嵩張らないので、困ることはないだろう。
『きょうりゅうオーディション』たしろ ちさと/小学館
恐竜劇団ベナートルが、新しいお芝居を上演するためにオーディションを開催するというお話。
ストーリーが簡潔で、本文もひらがなとカタカナの構成。
文章量も多くはなく、絵も大きくて見やすい。
舞台に恐竜たちが上がって特技を披露していく展開は、それぞれの個性を印象付けて、恐竜の名前も覚えやすいに違いない。
そんな要素が気に入って選んだ絵本である。
友人は最近、この絵本をボランティア先の小学校で読み聞かせたそうなのだが、「舞台」で「オーディション」という展開はきらびやかで、意外と女の子にもウケが良かったらしい。
私は完全に友人娘の趣味に合わせて選んでいたので、正直、一般ウケするというのは予想外で興味深い出来事だった。
なるほど、そういう視点もあったのかと思わされた一冊である。
『わたしのワンピース』にしまき かやこ/こぐま社
私の幼少期には既に人気だった定番絵本である。
うさぎが真っ白い布でワンピースを作って着て出かける。
すると、行く先々の風景がワンピースに写り込んで……というお話。
友人が裁縫趣味であり、ミシンもよく使う人だったのでこれを選んだ。
きっと友人や、その娘たちにとってはミシンや裁縫と言うのは身近でなじみ深いものだろうから。
私自身も、幼い頃にはとても気に入っていた一冊である。
シンプルながらも可愛い絵柄で、景色に染まるワンピースはものすごくお洒落で、わくわくしたのだ。
草の実模様に染まったワンピースに鳥が集まってきて鳥模様のワンピースになり、鳥たちが羽ばたいたために空を飛ぶ――そんな連想ゲームのようで、ファンタジックな展開も魅力的だった。
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