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【雑記】ウィルスによる人口減少は有効か
テレビでやってた映画「インフェルノ」を観たら面白かった。
「インフェルノ」で中心になっているのは、殺人ウィルスで人口を減少させ人類を滅びないようにしようという計画だ。ただ「ウィルスによる大量死」が人類の危機に対して有効かというと、ちょっと微妙だと思う。というのも、まったく無差別に死なせていくと、文明を維持するのに必要な人員も失われる可能性があるからだ。
たとえば食料。いまや農業は機械や農薬、化学肥料がなければ安定的に生産できない。もしウィルス感染によってどこか一部の人員が極端に減ると、農業のシステムが破壊され食料危機が起こることはありうる。これは医療やエネルギー、通信など他の分野でも同じだ。現在の我々の文明は細分化された分野が互いを支え合うような構造物であるといえる。
作中では「淘汰」と呼ばれていたが、「インフェルノ」のような急激かつ無差別な人口減少を計画すると、「ウォーキング・デッド」のような無政府状態が引き起こされ、かえって人類の衰退を招く可能性がある。
人口抑制としてのウィルスを描いた作品
人口増加への回答にウィルスを用いた作品は他にもある。
吉田秋生「YASHA-夜叉-」もウィルスを描いている。
「夜叉」で描かれるウィルスは、特定の人種や一定以上の年齢の人が発症し、高い確率で死亡する。「淘汰」ではなく「選別」を行うのだ。
これなら文明を維持する人員は温存しつつ、人口を減らすことができる。「インフェルノ」の無差別な人口減少よりも合理的だし、生物兵器としても有用性がある。
「ユートピア」というイギリスドラマでは不妊ウィルスによる人口抑制が計画される。
世界中に不妊を促進するウィルスを撒くことで、人口を緩やかに減少させていこうというものだ。この場合、多くの国で少子高齢化が問題になるのだろうが、それは別の方法で解決されるのだろうか。
このふたつの作品と比べると「インフェルノ」のウィルスは少々踏み込みが甘い気がする。人類の将来を見据える天才の言とはいえ、無差別な「淘汰」を行おうとすることに支持が集まるとは考えにくい。やはり「選別」を描くことには、いろいろ配慮されたのだろうかと勘繰ってしまう(不妊化についてはちょっと出た)。
いろいろ書いたが「インフェルノ」面白かったのでおすすめです。原作にも手をつけてみようかな。