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【漫画】今年面白かったマンガ

 劇画狼さんのブログに触発されたので、今年読んで面白かったマンガの感想を書く。40本はさすがにないけど。

木城ゆきと「銃夢火星戦記」(既刊6巻)

 「銃夢LO」の続編であり「銃夢」の前日譚でもある本作。火星での覇権を巡る争いと陽子の幼少時代が描かれているが、特に6巻が良かった。ムスターの復讐の完成、陽子の出生の秘密、火星権力の崩壊と第一部完結といってもいい完成度だった。やはり「銃夢」は面白いと再認識した。


山田しいた「乙女文藝ハッカソン」(既刊1巻)

 地方大学を舞台にチームで小説を創り競う「文藝ハッカソン」へ挑む女の子たちの物語。アイデア出し、ストーリー構成など創作の部分だけでなく、作品を選考する評論もロジカルで面白い。チームでの作業風景はミーティングのやり方としても参考になるのでは。
 すでに作家としてデビューしている新入生、野原焚が登場する4話以降で一気に面白くなるが、第一部の見せ場である創作対決の決着が次巻にもちこされている点はおすすめするときにはちょっと残念(web連載では読める)。故あってお風呂シーン多し。


松田舞「錦糸町ナイトサバイブ」(既刊1巻)

 テレビドラマに影響されて夜の世界で働こうと上京した結果、借金を背負って歯科助手になってしまうコメディマンガ
 ガイドブックに載らない街、錦糸町を舞台に夜の仕事で働く人たちと小学生にしか見えない主人公の小夏(20歳)との交流が楽しく描かれている。ほのぼのとしたコメディ部分と夜の職業人たちのシリアスな人間模様のバランスがほどよい。医療物では珍しい歯科医マンガでもある。


千代「ホームルーム」(既刊2巻)

 生徒に慕われる熱血教師・愛田の裏の顔は、女子生徒の桜井に異様な執着を見せるストーカーだったというサスペンス。
 周到な計画性と異常な変態性をいかんなく発揮する愛田と、それに巻き込まれる周囲との騒動が物語の中心となるが、2巻以降では桜井の異常性も垣間見えてきて今後の展開が気になるところ。独特な絵柄も魅力がある。


ハロルド作石「7人のシェイクスピア」(全6巻&既刊7巻)

 劇作家ウィリアム・シェイクスピアはいかにして名作を生みだしていたのか。その生い立ちと創作の秘密を描く歴史マンガ。
 階級制の壁がたちはだかる社会で脚本家として成り上がっていくシェクスピアの姿と、異なる才能を持ちよって複数人で創作する共同執筆の面白さが楽しい。プロデューサーとして立ち回るワース・ヒューズの存在が「乙女文藝ハッカソン」との大きな違いか。
 正直、立ち上がりはそうとうゆっくりだと思うが、そこはベテランの貫禄といったところか。話数が進むごとにどんどん面白くなり、シーズン2ともいうべき「7人のシェイクスピア NON SANZ DROICT」で完全にハマった


南勝久「ザ・ファブル」(既刊16巻)

 伝説的な殺し屋「ファブル」が1年間平凡に暮らすために大阪での生活を始めるのだが、騒動は向こうからやってくる。果たして「殺しはなし」でやっていけるのか。
 魅力的なキャラクターである「ファブル」こと佐藤の生活がコメディとシリアスを独特のテンポで交えながら描かれていて、笑ったりハラハラしたりしているうちに巻が進んでいく。はやく続きが読みたいマンガ。


呪みちる「口裂け女あらわる! 昭和怪奇伝説」(全1巻)

 都市伝説をモチーフにしたホラー短編集。呪みちる先生のホラーマンガは本当に最高なのでホラーが好きな人は読んで欲しい。特に表題作の「口裂け女あらわる!」は構成が完璧な傑作


川路智代「ほとんど路上生活」(全1巻)

 一家で昼逃げ”し、実家の宴会場で暮らすことになった半生を笑いを交えて描くエッセイコミック。以前書いたレビューはこちら


東風孝広「カバチタレ!」(全20巻)

 大野法律事務所に持ち込まれる依頼を法律を武器に、時には体当たりで解決していく姿を描く法律マンガ。
 最近読み出したが、個人や企業の悲喜こもごもの人間模様が面白い。空も飛ばずビーム出さないが人々を助けるヒーローのマンガでもあるし、同時に主人公・田村の法律家としての成長が描かれる職業マンガでもある
 続編の「特上カバチ!!」では女性行政書士・住吉が加わりセクハラなど女性ならではの問題や、時事的な社会問題など取り扱う内容に広がりでる。


岡村星「ラブラブエイリアン」(全4巻)

 突然部屋に飛び込んで来たエイリアンと女の子たちの会話劇からなるコメディ。
 女の子たちの会話がとにかくゲスい。主にひとつの部屋のなかでお話が完結するオムニバスで、バナナマンとおぎやはぎのコントドラマ「epoch TV square」の女性版といった感じ。下品だが、テンポがよくセンス抜群のセリフ回しがいい。
 全体としてゲスいが恋愛、結婚、出産なども女性の悩みも取り扱っている点もうまい。


松本次郎「いちげき」(既刊4巻)

 薩摩藩士を襲撃するために百姓だけで結成された部隊「いちげき隊」の暗闘を描いた時代劇マンガ。
 松本次郎+時代劇が面白くないわけがない。滅びゆくもの、消えゆくものたちがさだめのなかで放つ一瞬の輝きが泥臭くも美しい。


むこうやまあつし「正しい妖怪の食べ方」(既刊なし)

 webバンチで不定期連載中の妖怪を調理して食べる異色の料理マンガ。妖怪のフォルムや解釈が独特なのも面白い。来年1巻が出るらしい。


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