カードゲームファンタジー世界・試し書き


世界は一枚のカードから始まった。
世界の名はカルディア。
この世界ではあらゆる魔法はカードに封じられ、カードを使うことで発動する。
攻撃も、防御も、精霊と呼ばれる使い魔の召喚もーー全てはカードによってもたらされる。
この世界は、そんなカードと、それを使う魔術師達を中心に回っていたーー


(前回までのあらすじ。持ち主に悪しき力を与える〝闇のカード〟の回収のため旅をする魔術師、ユーキ・クロスロード。とある村を訪れた彼は、そこで闇のカードを使い村を支配する少女マナと出会う。闇のカードを回収するため、ユーキはマナに決闘儀式(デュエル)を申し込むのだった。
夕焼けに照らされた村の広場に立つ二人。ユーキvsマナの決闘儀式が、開始されるーー)

〇〇〇

「私のターン!ドロー!」

金髪ポニーテールの少女マナが、手首にセットされたデッキからカードをドローする。

「私は〝名無しの天使〟を召喚!」

少女が手札から選び、掲げたカードが光を放ち、ベールを纏った一対の翼を持つ天使が現れる。

《名無しの天使 パワー1500》

「さらに私は道具カード〝汚れ無き聖剣〟を発動!〝名無しの天使〟に装備する!これで〝名無しの天使〟のパワーは500上がりパワー2000よ!」

追加でマナが道具カードを発動する。カードから出現した曇り無き聖剣を、天使が掴む。

《名無しの天使+汚れ無き聖剣 パワー2000》

「私はこれでターンエンド!さぁ貴方に彼を倒すことが出来るかしら?」

少女が不敵に笑う。
その笑顔を迎え撃つように、少年ーーユーキもまた笑った。

「ああ、やってやるさ! ーー俺のターン!ドロー!」

デッキから引いたカードを見たユーキが、にやりと笑みを浮かべる。

「俺は〝マグネットマジシャン〟を召喚!」

ユーキの手札から、赤と青のツートンカラーの魔術師の精霊ーーマグネットマジシャンが出現する。

「マグネットマジシャンの効果発動!場の道具カード1枚を引き寄せ、自身に装備する!〝マグネットスティール〟!」

マグネットマジシャンが名無しの天使に向けて両手を広げる。赤と青の磁力オーラが両手から発射され、天使の持つ〝汚れ無き聖剣〟を包み込み、マグネットマジシャン自身の元へと運んでいく。

「そんな…!?」
「〝汚れ無き聖剣〟は戴いたぜ! これで俺のマグネットマジシャンはパワー1700だ!」

《名無しの天使 パワー1500》
《マグネットマジシャン+汚れ無き聖剣 パワー1700 》

「いけ、マグネットマジシャン! 〝マグネットマジック・スラッシュ〟!!」

剣を失いおろおろする天使めがけて、赤青の魔術師ーーマグネットマジシャンが奪った聖剣を構えて突撃する。
赤と青のオーラを纏った剣戟は、天使の身体を見事真っ二つに引き裂いた。

『おおおおぉぉぉぉーーーーっ!』

左右に両断された天使が、断末魔の叫びを上げながら光となって消えていった。

「なかなかやるわね」
《マナ LP2500》

自身の精霊(スピリット)を破壊された魔術師は、破壊された精霊のパワー分のダメージをLP(ライフポイント)に受ける。こうしてお互いのLPを削り合い、先に相手のLPをゼロにしたモノが勝者となるーーそれが決闘儀式のルールである。

「でも勝負はこれからよ。私のターン!ドロー! ーー来た来た来たぁーー!!」

ドローしたカードを見たマナが堪えきれないと言う様子で高笑いを始める。

「私は〝混沌の堕天使〟を召喚する!」

少女の言葉と共に、カードから黒い翼に浅黒い肌の精霊ーー〝混沌の堕天使〟が姿を現し、不敵に笑う。

「混沌の堕天使のパワーは、今まで倒した精霊の数の500倍!堕天使はこれまで6体の精霊を倒している!つまりーー」

《混沌の堕天使 パワー3000》

「こういうことよ! はぁーっはっはっはっ!!」

まるで狂気に陥ったかのように狂い笑うマナを前に、ユーキはごくりとつばを飲む。
ユーキの場にはパワー1700のマグネットマジシャンだけだ。彼だけでは、混沌の堕天使を倒すことは出来ない。

「さぁーー旅の魔術師さん? 貴方に私の〝混沌の堕天使〟をーー倒すことが出来るかしら?」

甚振るように、サディスティックな笑みを浮かべるマナ。その顔を、ユーキは睨むことしか出来なかったーー

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