よりよく生きる その15
会社組織でのマネジャー時代、一番頑張ったことがあります。
それは、部下との会話量を増やすこと。
未だにそうですが、基本的に私は口数は少ない方です。
特に一対一での会話は超苦手。
そんな私には、気軽に話せる部下とそうでない部下が明確にいて、結果的に部下によって会話量が圧倒的に違っていました。
ここも何となくわかってはいて、漠然と「何とかしなきゃなあ」と思っていたところでした。
コーチングを実践していく過程で、とにかくコミュニケーションの量を増やすことが大事だということに気づいた私は一念発起して部下との会話量を増やすことに取り組むことにしました。
具体的には、部下一人ひとりと会話したか否かで星取り表を作ることにしたのです。
ノートに一覧表を作り、縦の欄に日付を、横の欄に部下の名前を入れて一言でも会話したら〇を入れていくようにしたのです。
最初のうちは、客観的に自分の状況を捉えるために一週間ほどただ星取り表に記入することをやっていきました。
すると、わかっていたことではありますが、会話量の多い部下とそうでない部下とで如実に差が出ていたのです。
わかっていたとは言え、客観的にデータという事実で突きつけられるとさすがに「これはヤバい!」となりました。
そこから、私の苦行(?)が始まります。
普段から会話量の多い部下に対しては大して緊張もしないし、何を話しかけてよいやら…という感覚もありません。
しかしながら、普段会話量の少ない部下に対しては本当に何を話してよいかわからなかったのです。
それでも、「何とかしなきゃ!」の思いが募っていた私は頑張りました。
最初のうちは、とてもとてもぎこちなかったと思いますが、「最近どう?」とか、「何か困ったことない?」とか、短い言葉でただ声を掛けるということをやっていきました。
相手にしても、それまでほとんど話しかけていなかったのに「最近どう?」と言われても戸惑ったと思います。
「最近どう?」に対しても「えっ?いや…特に…」というような反応でした。
そんな会話であっても〇は〇。
私は嬉々として(?)ノートに〇をつけていきました。
後から振り返ると、そうやってハードルを思い切り下げていたのが良かったのだと思います。
会話の中身まで求めてしまっていたら、きっと続かなかったと思うので。
いずれにしても日々そうやって頑張ってみても、全員に〇がつく日は限られていました。
結局ある程度連続して毎日全員に〇がつくようになるまでは1ヶ月以上を要しました。
それでも、続けていった効果はやはり明確で、少なくともこちらから話しかけることへのハードルはやり続けるほどにどんどん下がっていったし、会話の量(双方向のやり取り)もそれに比例して少しずつ増えていきました。
そして3ヶ月ほど続けた頃から思いがけない効果を実感することになります。
その当時定期的な面談をずっと続けていたのですが、部下から異口同音にこんなことを言われるようになったのです。
「いつも声を掛けてもらい(気遣ってもらい)ありがとうございます」
そして同時期に起こり始めたことは、それまで面談においては仕事の話し一辺倒だったものが部下自らプライベートな話題も話してくれるようになったことです。
その中には家庭における悩みなどの話しもありました。
そういう状況になり、そういうことを話してもらえる信頼を得ることができたんだなあと思い、とても安堵し、嬉しかったのを覚えています。
もちろん、こうなったのは単なる声かけだけの効果ではなく、相手の意見を否定せず尊重していくあり方を身につけていった成果でもあるとは思いますが、いずれにしてもコミュニケーションの改善というのは、小さなことを長く積み重ねていくことが本当に大事なのだということに気づいたエピソードでもありました。