よりよく生きる その14
コーチングの学びを続けることで一番変わったのは、人それぞれの個性、多様性を受け入れられるようになったことです。
そのきっかけを与えてくれたのも、部下との面談での会話でした。
その当時私は、コーチングの直接の実践の場として、定期的な部下との面談の場を設けていました。
一人の次期リーダーとして期待している部下がいました。
その人に対し、正直言うとリーダーの役割を担うにあたっては物足りなさを感じていました。
なので、その面談においては、その人の将来のキャリアについて話し合うつもりでいました。
私としては、相手も今後リーダーとして人を率いる立場になっていくことを希望していることをまったく疑っていなかったので、そういう文脈で話しを進めていました。
ところが、その人の口から出てきた言葉は次のようなものでした。
「私は、リーダーになるとか、昇格するとかに興味がないので、このまま専門職としてやらせて欲しいです」
それを聞いた瞬間、私の頭の中は大げさでなくパニックになりました。
そういう価値感の人もいるというのは、もちろん知っていました。
それでも、目に前にいる自分の部下がそういう価値感の人だったとは思いもよらずで、とても、とても困惑しました。
そこで気づいたのが、人って自分の価値感を無意識で他人にも押しつけてしまうものなんだなぁということ。
いや、もちろんその当時だって人それぞれに価値感は異なるし、いろんな考え方をする人がいるんだということくらい知っていました。
それでも、人は、本当に無意識レベルで自分の価値感を他人にも投影してしまう存在なのです。
この一件をきっかけにして、私は本当の意味で部下一人ひとりの声に耳を傾けられるようになったと思います。
きっとそれ以前は、自分の世界を投影した形で相手の話しを聞いていたので、本当に一人ひとりの考え方は引き出せていなかったのだと思います。
それ以降は、彼は、彼女は、どんなことを考え、感じているのだろうと、自分の価値感や考え方を脇に置き、自分とは必ず異なる考え方、感じ方を尊重し、ニュートラルな立場で話しを聴くことを心がけるようになりました。
余談になりますが、コーチングを学び始める前の自分が今回のような場面に遭遇していたらどうなっていたかと言えば、恐らく相手を説教していたかもしれません。
「そんなことじゃ困るんだよ!」的に。
つくづくコーチンを学び始めて良かったなあと思える出来事でもありました。