よりよく生きる その13
今振り返ると、コーチングを現在進行形で学んでいた頃が一番いろんなことを実践していたと思います。
最初に取り組んだのが“聴く”でした。
何でもやってみて初めて気づくことってあると思いますが、私にとっては”聴く”というのもまさにそうでした。
そうそう簡単には聴けるようになりませんでした。
やっぱり自分の中の”正解”が邪魔をしてしまうのです。
特に仕事上で部下の話しを聴こうとするときに顕著でした。
どうしても、仕事においては自分が一番わかっているとの思い込みが邪魔をするのです。
相手の話しを聞いていて、どうしても「違う!」と思ってしまい、その瞬間に聴けなくなってしまうのです。
その当時とても折り合いの悪い部下が一人いました。
いつも仕事のことで議論となるも、お互いに譲ることなく平行線をたどっていました。
「なんでわからないんだよ!」
いつもそう思っていました。
それでも、こちらが自分の正しさを主張すればするほど、相手もムキになって自分の正しさを主張してくるので着地点が見えないまま延々とやり合うことになっていました。
この関係性に変化の兆しが表れたのは、“黙って聞く”をひたすらやり続けて“黙っている”ことに慣れてきた頃でした。
こちらも相手の言うことを否定しないし、ひたすら聞いているので、相手もムキになって反論する必要がありません。
相変わらず頭の中では「違うんだけどなぁ」と思いつつも、それを口に出すことなく相手の話が一区切りつくまで聞くことを心がけていました。
するとそのうち、こんなことが頭の中で浮かぶようになりました。
「なるほど、そういう考え方もあるんだな」
今でこそ当たり前にやっているコーチングでの“共感”ですが、その当時はよくわからないままひたすら聞くということをトレーニングとして続けていくうちに自然とできるようになっていました。
すなわち、相手の言うことに対して同意や賛同は必ずしもしないけれども、相手はそう考えている、そう思っている、そう感じているということに共感していくということ。
「あなたはそう考えているんですね」
「あなたはそう思うんですね」
「あなたはそう感じるんですね」
相手の自分とは異なる意見、思考、感情を否定することなくただ「そうなんだぁ」と聴いていく。
この感覚が得られてから本当の意味で傾聴ができるようになっていたと思います。
そしてこの部下との仕事の上での話し合いも、より建設的なものへと変わっていきました。
ストレングスファインダーの資質で「調和性」を上位に持つ私は、元々異なる意見を取りまとめて合意に導くことは得意です。
ただ自分の正しさを振りかざし、相手をねじ伏せるのではなく、相手の意見も尊重しながら合意点を見出していく。
これも、ベースに“聴く”があったからこそだと思います。
後に私は畑違いの部門へと異動することになりますが、最後に上で書いた部下と会話した際、こんなことを言ってもらいました。
「知識さん、だいぶ変わりましたよね。自分のことを信頼してくれてありがとうございます」
頑張って取り組んできた甲斐があったなぁと思えた瞬間でした。