よりよく生きる その16
自分がマネジャー駆け出しの頃、一番ダメだったなあと思うのが、部下に任せきるということができなかったことです。
今振り返ると、自分がなぜそうだったのかはストレングスファインダーの資質から説明することができます。
「最上志向」「責任感」「自我」、主にはこの3つの資質がそうさせていたのだと思います。
「最上志向」x「責任感」で、質の高い成果を出すことに“自分で”責任を持ちたいとの思いが強く、その裏返しで任せきれない。
これって、部下に任せると質が担保できないと言っているようなものなので、今考えると失礼極まりない話しでもあると思います。
さらに私の場合は、「自我」という資質を持っていることで、“自分が”成果を出すということが大事であるという感覚に拍車をかけていました。
「自我」という資質は、自分を重要な存在として周囲に認めさせたいとの欲求に基づくものだからです。
そしてその裏返しで、部下に任せることでうまくいかなかった場合、その上位である自分もダメ出しをされるとの感覚もあったのだと思います。
はっきり言うと、自分が関りながら、自分が適切に指示しつつ、部下に成果を出させることで“自分が”認められることを求めていたのだと思います。
その当時は、自分にそういうところがあることを自分で認めきれずにいたと思うし(薄々感じつつも)、もちろん表立ってそんな態度を取っていた訳でもありません。
と言いつつ、周囲の人には見透かされていたかもしれませんね。
では、そんな私がどうその思考を変えていったかというと、ある意味自分にとって悪さをしていた思考を逆手にとって使い方を変えることにしたのです。
もちろん、突然すんなり変えられたわけではなく、それまでにコーチングの学びを実践することで、部下の能力を引き出すということに意識が向くようになっていたからこそだと思います。
では、どんなふうに考え方を変えたかというと、自分のマネジャーとしての役割の定義を変えたのです。
前述した「責任感」という資質により、私は自分に与えられた役割を全うしたいとの強い思いが働きます。
それまでの私は、“自分が正しい指示をして部下を動かすことで成果を出す”というように自分の役割を(無意識に)設定していました。
それがコーチングを実践していくうちに“部下の自発性を引き出し、部下が自律的に動き成果を出すサポートをする”というように徐々に書き換わっていきました。
そしてある日ふと思ったのです。
「マネジャーの役割としては、人を育てるということもある。人を育てるには“任せる”ことが必要である」
ごく当たり前のことなのですが、以前の私はナチュラルにはそう思えていませんでした。
かなり時間はかかりましたが、コーチングを実践していくうちに、純粋にそう思えるようになっていきました。
こうなると「責任感」の“役割を全うする”ことへの高いコミット力が良い方向に使えるようにもなります。
とは言え、もう一つの「自我」を放っておくわけにもいきません。
「自我」という資質を持っている以上“自分が認められる”という欲求に抗うことはできないのです。
そこで、こう考えることにしました。
「他の誰よりも部下の自発性を引き出し、人を育てるのが上手なマネジャーになろう」
こう考えることで、部下を信頼して任せられている自分に価値を見出すことができたのです。
とは言え、最初のうちは部下を“信頼して”任せていたかというとそんなことはなかったと思います。
やっぱり相変わらず「自分がやった方が早いし、確実だ」と思ってしまうし、部下が“間違った”やり方をしようとしているのを見てモヤモヤすることも多々ありました。
それでも任せ続けることで気づいたのは、自分が感じていたのはすべて思い込みに過ぎなかったということです。
自分がすべてにおいて正しいなんてあり得ないということにようやく気付いたのです。
そこから先はむしろ、部下を信じて任せるということに喜びすら感じられるようになっていきました。
よそから見てどうだったかは知りませんが、私からみたら自分のチームのメンバーが一番光って見えていました。