よりよく生きる その17
コーチングには、自己基盤(パーソナルファウンデーション)という概念があります。
文字通り、自分自身の基盤となるあり方のことを指します。
基盤とは、土台となる部分を意味するので、それが不安定だと生き方そのものが揺らいでしまうということ。
揺らぐというのは、感情が振れやすく揺らぐということでもあるし、迷いが多くて決断が揺らぐということでもあると思います。
まあ、自己基盤という概念は簡単には語り尽くせないのですが、それが安定して整っている状態の一つに自分で自分の人生を選択できているというのがあると思います。
人生というと大きく捉えすぎなのかもしれませんが、人は日々様々な場面で選択をしているはずですが、そのすべてで「自分で選んだ」という感覚を持てているかは別の話しです。
何かを選び取っているはずなのに、実はただ一つの選択肢しか持てていなかったりします。
例えば私の場合だとストレングス・ファインダーの資質で「責任感」を持っているので、誰かと約束したことは“絶対にやり切る”の一択です。
多くの方が、「そんなの当たり前じゃん!」と思われると思いますが、私の場合は“いかなる理由があろうとも”を伴うくらい強烈だったのです。
具体的に言うと、自分が「やります」と引き受けたことが約束した期日までに果たせないと、強烈な罪悪感を感じるほどです。
ここまで来るとさすがに極端ですよね。
着実に、確実に、約束を果たすという強みでありつつも、「どういう事情、理由があろうとも…」となると自分がしんどくなります。
そして、自分がしんどくなるだけでなく、そうやって自分に厳しく接していると、それがそのまま他人にも投影され、他人にも厳しくなってしまいます。
自分から見て、自分の基準でジャッジをして、相手の不誠実な対応を責める気持ちが湧いてきます。
すなわち、日々誰かの言動に対して怒り、ネガティブな感情で満たされるようになります。まさに私自身がこの見本のような存在でした。
つまりは、自己基盤を整えるというのは、無意識の思い込みにより選択肢が狭まっているのを、選択肢を増やし広げていくことでもあります。
そこで私が取り組んできたのは、自分のタブーを打ち破るということでした。
上で書いたことで言えば、自分の思い込みによるタブーとは、端的に言えば人との約束を破るということです。
もちろん、タブーに挑戦と言っても無理やり約束を破るということではありません。
例えば、約束を守るためには自分が相当無理をしないといけないことがわかったとき、そのまま無理し続けるのか、それとも期限延長を打診してみるのかということです。
すなわち、“何が何でも約束を守る”以外に別の選択肢を置いてみるということ。
すると何が起こるかと言えば、多くの場合で自分の妥協やそれに伴う要求が受け入れられるという事実に気づくということです。
約束は何が何でも守るのが当たり前の段階では、妥協すると相手の信頼を失うとかの悪いことが必ず起こるとの強い思い込みがあるのです。
でも、実際に妥協してみると、すなわち完全に約束を果たすことを諦めてみると、多くの場合で心配していたことは何も起こらないと気づけるのです。
ここに至って初めて頑なに約束を守る以外の選択肢が生まれます。
選択肢が広がれば、場面場面で自己責任により自分で選択していくとの感覚が生まれます。
そしてこの状態が、自己基盤が整っている一つのあり方なのです。